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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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特別編 ライラのぼうけん

 カブールが陥落しましたね。

 最近登場が少ないライラの出身国アフガニスタンの首都です。

 もっともライラの故郷は辺境ヌーリスターン州の更にど田舎でイスラム教化もされなかったくらいの隠れ里のような僻地ですが。

 ふと思い出して昔のフォルダを漁ったら、2chのVIP板で小説を晒して批評し合うスレッドに投下するために書いた掌編が出てきました。

 これに出てくる『少女』がライラです。

 別の長編につなげる目的もあった上に同じお題で投下した事もあり、投稿しないままになっていたような気もしますが、十年以上の事なので記憶が曖昧です。

本編とは若干シチュエーションが異なる部分がありますが、そのまま投稿します。

 少女は手にしたカラシニコフもどきのグリップを強く握り締め、そして川の流れに向かって放り投げた。どうせペシャワールあたりの駆け出し職人が作った粗悪品だ。既に銃身命数は尽きている。

 ここから先頼れるのは己の肉体のみ。

 新緑の美しい丘の向こうから数人の兵士が姿を現した。幸い彼女の姿にはまだ気付いていないようだ。

 少女は慎重に岩陰に身を隠した。勝負は一瞬でつくだろう。事が終わって生きていれば、国境線まで一直線に駆け抜けるだけだ。

 彼女はゆっくりと服を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ生まれたままの姿になる。兵士たちはもう、彼女の隠れている大きな岩から十数メートルの所まで迫っていた。少女は優雅な動きで岩陰から姿を現した。

 彼女の健康的な褐色の裸体に、兵士たちの動きが一瞬止まる。そして、彼らは下卑た笑みを浮かべ、ゆっくりと少女ににじり寄ってきた。

 十メートル……、五メートル……、彼我の距離が三メートルを切った瞬間、少女は跳躍した。正面の兵士の顔面に掌底を叩き込む。鼻骨が陥没する感触が手に伝わった瞬間、彼女は掌を捻り込むように斜め上に突き上げた。

 兵士の体からぐにゃりと力が抜ける。折れた鼻骨が脳を突き破ったのだ。彼女は死んだ兵士の銃を掴み、それを支点にして真横の兵士の下腹部に回し蹴りを見舞った。

 残る三人の兵士たちが、やっと少女に銃口を向けた時には、彼女は既に奪った銃を横倒しに構え、引き金を絞っていた。フルオートの反動を利用し、扇形に弾丸をばら撒く、“馬賊撃ち”と呼ばれる射撃法だった。兵士たちは腹部から鮮血を迸らせて昏倒する。

 死体から戦利品を奪った彼女は、脱いだ服を再び纏い、口笛を吹きながら歩き出した。

 口笛は、反政府ゲリラの疑いを掛けられ処刑された彼女の初恋の人が、いつも口ずさんでいた曲だった。異教の聖母が“あるがままに生きなさい”と語り掛けるその曲の意味も知らぬまま、少女は自由の天地に向け歩き出す。

「レット・イット・ビー」に関しては、複数ある解釈のうちの一つを採用していますが、それが正しいというつもりはありません。

彼女にとってそうだったというだけです。

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