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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第十七話 歌う船

 サラサラの長い黒髪、少し切れ長の目、雪のように白い肌に紅い唇。

 細身だが鍛え上げられているらしい肢体に形の良いであろう胸。

 少尉という事は僕よりは歳上なのだろう。

 もっともこの世界では飛び級は当たり前だし、形式的ではあるもののあちこちに貴族制度も残っているようだから同じくらいの歳かもしれない。

「『探偵の』矢巻です」

 直立不動の姿勢で握手を求める。

 しっとりとして柔らかく、小さくて少しひんやりとした手だ。

 ずっと握っていたいがそうもいかない。

 ひとまず今日は手を洗わない事にしよう。

 相変わらず自分の思考回路がキモくて仕方ないが止められない。

「航空宇宙軍から出向しておりますリーです。宇宙船については私から説明致します」

 いい声だ。

 壁の大型スクリーンに3D描画されたルルイエのマップが表示される。

「墜落地点はここです」

 綺麗だし声も可愛い。ずっとこの説明を聞いていたくなった。

 マップの一点が拡大され、氷山の間に挟まるように前にポルさんに見せられた宇宙船が横たわっていた。

「主兵装は数門の実体弾発射砲、副兵装としては高速ミサイルと電子戦装備が搭載されていると思われます」

 更に拡大された船の兵装部分が強調表示される。

 かなりゴツい大砲らしき物が見えた。宇宙で殴り合いをするのだからそれなりに威力が必要なのだろう。

 僕はフジヤマさんとサジさんをちらりと窺った。

 二人ともなんだか楽しそうだ。

 ちくしょう、どちらもライバルになり得るわけだ。

 フジヤマさんはともかくサジさんは妻帯者で、もうすぐ子供も生まれる。

 もし不届きな事を考えているようだったら、(旧姓)吉村さんに言い付けてやる!

 咳払いが聞こえた。

 可愛い。

「え~、宇宙戦闘艦の実体弾としては遠距離用のブドウ弾と接近戦用のAPDSが確認されていますが、大気中ではこの関係が逆になります。おわかりになりますか?」

 よくわからないけれど、バカだと思われるのが嫌なので頷いておいた。

「お互いに高速移動してて空気抵抗の無い宇宙では大量に弾をばら撒く散弾の方が遠距離じゃ有利で、狙って撃たなきゃ当たらない単発の徹甲弾はよっぽど接近しなきゃ使えないって事だな」

 僕の心を読んだかのようにサジさんがフォローしてくれる。このオヤジ、ツンデレキャラか?

「はい。敵味方入り乱れての接近戦では人工的なデブリとも言える散弾は厄介ですから」

 薄らぼんやりとだが理解できた。

 細かい弾を大量に打ち出せばどれかが敵の船を傷付けて戦闘力を低下させられるが、接近戦では目の前の脅威を確実にぶち抜いて沈めたい。

 そういう考え方なのだろう。

「この規模の艦ですとAPDSの弾数は限られるか、搭載していない可能性もあります。ですから、実体弾についてはそれ程心配しなくて良いでしょう。当たらなければどうという事はないですし、生身の人間が艦砲なんて喰らったら痛みを感じる間もなく消失しますから」

 さらっと怖い事を言う。

 とはいえ、魔導防壁で弾道を逸してやれば大丈夫そうだ。

「ミサイルについても同じで、当たれば一瞬で終わりです」

 軍人だからなのか、もしかして何か感情が欠落しているのか、死ぬ事についてやけにあっさりと話す。

「怖いのは電子戦装備です。本来はレーダー用途がメインと思われますが、高出力で照射されると、かなり遠くからドローンなんか撃ち落とされてしまいますし、戦闘車両のコンピュータやセンサー類はほとんど潰されてしまいます」

 リーさんはそこで一旦言葉を切った。

 唇の端がゆがむ。

 何かを言うか言わないか迷っているようだ。

「実は……本当に怖いのは、生身の体に最大出力で照射された場合なのです。体中の水分が沸騰して蒸し焼きになって……最後は……」

 リー少尉は掌を上にして顔の前に上げた右手で握りこぶしを作り、パッと開きながら次の言葉を続けた。

「ボン! です」

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