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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第十六話 軍事ネットワークで恥を晒した男

 サジさんが笑いを噛み殺している。

 屈辱だ。

 入口のゲートでは救出される前に散々写真を撮られ、陸軍系SNSで拡散されたようだった。

 紳士だからなのかラインハルトことフジヤマさんは真顔のままだ。

「また何かあったんですか? 陸軍系ネットワークは悪ふざけが過ぎますよ。」

 単純に海軍系には回ってきていないだけのようだ。

「もっとも大佐の結婚の時は全軍に衝撃が走りましたけどね」

 今度はサジさんが渋い顔になる。

「結局両方とも成人済みだって事で別にお咎めは無かったですが、『稀代のロリコン』だの『犯罪者スレスレ』だの『異世界から少女を誘拐した恐怖の大魔王』だのって散々話題になりましたもんね」

 首都警の隊長は顔を両手で覆ってため息をついている。

「違法行為は一切無いとはいえ、スキャンダル性は高いですから、隊長のために外部へのリーク抑えるの大変だったんですから」

 サジさんはゆらゆらと首を横に振った。

「俺のためって言うより軍の体面のためだろ。まあ、良くやってくれたがな」

 フジヤマさんはニヤリと笑う。

「軍よりも大佐よりも奥さんのためですよ」

 サジさんはまたため息をつく。

「お前は立派だよ。完璧超人だ」

 たしかに(旧姓)吉村さんは毒舌で強気なところはあるけど、基本的にヲタクで陰キャだから妊娠発覚直後に「結婚式なんて、あんな大勢の前で晒し者になるのは耐えられない。もう異世界に逃げる!」なんて大騒ぎしていた。

 やはりフジヤマさんは紳士で立派でカッコイイ。

 しばらくは昼飯をご実家のタコス屋からのデリバリーにしよう。

 動物どもの為に刺激物や玉ねぎを抜いて薄味のやつも追加で。

「まあ、なんつーかここの軍隊も男臭くて汗臭い世界だが、目下の者の失敗を笑うことは良しとされないし、部外者に対しては相応の敬意を払うからな。つまり矢巻、お前も身内だしそれなりに一角の人物と認められてるって事だ」

 ATVのシートに挟まれて半ケツを出した写真を拡散されても、そこまで言われるとさすがに悪い気はしない。

 いや、むしろなんか感動してきた。

 一人ぼっちではなかったとはいえ、家族や友人から離れ見ず知らずの異世界に飛ばされて、散々恥ずかしい思いも痛い思いもして何とかやってきたのだ。

 でも今は沢山の人に認められて仲間も沢山出来た。

「で、ルルイエの墜落駆逐艦の事だろ」

 詳細を話していないのにいきなり核心に触れてきた。

 もしかしたら電話だけじゃなくて通常会話も盗聴されている?

「疑心暗鬼になる前に言っておくが、通信の盗聴なんかされてんのはそれなりにヤバそうな奴だけだぞ。俺も二〇年くらい前まではされていたしな。それと、尾行やら体面での会話まで盗聴やらしてたらコストが掛かり過ぎる。お前はそこまで危ない奴とは思われてないからな」

 さらっと酷い事を言う。

 じゃあどうしてそこまで知っているんだ?

「カワウソんところのPMCの仕事受けてるだろ? 一応国内外での武力行動は届け出制だからな。本当に非合法な活動以外はこっちまでデータが降りてくる」

 『本当に非合法な活動』とやらが引っ掛かったが、話の腰を折らないよう頷くだけにした。

「最近、軍の拠点建設でJV(ジョイントベンチャー)の下請としてルルイエで色々やってるのは知ってるんだ。元々軍部から民間への発注だから情報も入りやすい」

 たしかにそんな話を聞いた気がする。JVを構成する企業間の力関係をワット工務店有利にするために雇われているとか。

「あのカワウソは中々の遣り手でな、一つの仕事だけ受けてるように見せて顧客の経費使って色々と別の仕事にも手を出すんだ」

 たしかに白神の体の一部を取り戻すために邪神を狩って、その死骸を水産会社に卸していたな。

「今度の仕事の場所からちょいと進めば航空宇宙軍が喉から手が出るほど欲しがってるデストロイヤーの座礁地点だ。そんな美味い話を放っておくはずがない。そこでお前に話しをしたとすれば、間違い無く船の回収と宇宙軍への売り込みだな」

 全てお見通しというわけだ。

「死ぬなよ。出来れば引き止めたいところだが、こっから先はお前の自由意志だ。俺の口出しする事じゃない」

 この人はいい人なのかそうじゃないのか、どうもわからない。そういう枠組みで捉える方が間違っているのだろう。

「あのカワウソはとんでもない食わせ者だからな。お前に事実を全て告げるとは限らない。もしかしたら捨て石にされるかもしれんぞ」

 心当たりは色々とあるし、白神の件ももしかしたら僕を巻き込むための計略かもしれない。

「今、航空宇宙軍から出向して来ている奴を呼んだ。詳細はそいつから聞け」

 隊長室のドアがノックされ、軍服をきっちり着込んだ女性が入ってきた。

「航空宇宙軍から来ているリー少尉だ。こっちは『壊し屋』の矢巻」

 その人を見て僕の鼓動は一気に跳ね上がった。

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