第十四話 星の墓標
目覚めると事務所だった。
バイクはフランソワさんがウサコさんと一緒に持ってきてくれたらしい。
200ccのオフロードバイクは車体が小さいので、フランソワさんが運転したとしたら完全にクマのサーカス状態だと思うと笑みが溢れる。
ウサコさんが乗ってきたのだと思うとシートを舐め回したい。
とりあえずバイクのシートを舐め回しておいても損は無いという気付きがあり、QOLが上昇した。
これぞ意識高い人のセレブ生活だ。
いや、確率二分の一だがブタのケツを舐めるとか自虐が過ぎるので確認が取れるまでやめておこう。
現実に戻ろう。
白神が選んだサイボーグボディは軍のコンペに出す試作品で、あまりに高価過ぎてボツを食らった代物。
つまり超お高い。ドワーフの持っていた電卓の数字は僕の貯蓄額を遥かに超えていた。
勇者の村を制圧し、ドラグーン運輸所有の廃ビルを解体し、魔王の秘宝を発見して、ネクロマンサーの陰謀も阻止した。
それだけの働きで稼いだお金でも全然足りない。
もう嫌だ。
「ポンコ、結婚してくれないか?」
現実逃避したくなった僕は、事務所でうろうろしているタヌキ娘に声をかける。
「いいよ。でも籍入れるまで肉体関係はナシね。死ぬまで不倫浮気は許さない。それが私の種族の掟だから」
うわ厳しい。
でも別にいいか。
タヌキは一夫一婦制で、まさに「死が二人を分かつまで」という話はどこかで聞いた事がある。
生涯一人の人とだけってのも悪くないかもしれない。
どうせ僕なんかカネ目当ての女しか寄って来ないんだ。いっそ風俗でも行って捨ててくるか……。
ああ、もう! 考えがまとまらない。
「もうちょっと考えさせて。標準人類はわりとその辺複雑なんで」
なるべく傷付けないように言ったつもりだけれど、ポンコはなんだか悲しそうな顔をしてぷいっと出ていってしまった。
僕は最低かもしれない。
「ヤマキのシャチョサン、おるか?」
この声はカワウソの人だ。嫌なタイミングで来るもんだな。
「デカい買い物したらしな。ええこっちゃええこっちゃ」
たしかにデカい。
探偵社の通常業務の稼ぎでは百年掛けても利息しか払えない。
今度ポルさんと一緒にやる予定の仕事をちゃんとこなしてもまだまだ足りないだろう。
「でな、いい話がありまっせ。ワット工務店はんには内緒にしといてな」
僕は3つ並べたパイプ椅子から身を起こした。
お金大好き!
「まず、今回のマジノ線みたいなの作る話は理解できとると思ってええな?」
僕は頷く。
「ルルイエは邪神どもが溢れとるんで、ヤマキはんにババーンと一層してもらいたいちゅう話や」
撃ちっぱなしをやって攻撃魔法の制御を習得するという意味でも悪い話ではない。そこまではわかっている。
「んで、ここからが本題や」
ポルさんがぐっと顔を寄せてくる。同じイタチ科でもマサムネは可愛いがカワウソはちょっと迫力がある。しかもなんだか口臭が生臭い。
ちまっとした指でタブレットを操作し、ホログラムを投射した。南極のマップが表示される。
「ここが掃討対象の地域でな、その奥に航空宇宙軍はんが欲しがっとるどえらいモンがあるんや」
カワウソはマップをツンツンして現地の写真を拡大表示した。何だかわからないが、飛行機のような船のような変な人工物が映っている。
「何ですか、これ?」
人工物だという事ははっきりしているし、近くに写っている邪神のサイズから見て全長が百メートル以上ありそうな事もわかるが、何度見ても解像度が低く粒子が荒い映像で詳細がわからない。
「スター・デストロイヤー。つまり宇宙の駆逐艦や」
またもや昼休み上げです。




