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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第十三話 審判の日(ドゥームズデイ)

「すげぇ……」

 自分の語彙力の貧困さ加減が嫌になるが、凄いとしか言い様がなかった。

 雑然とした開発室にはショールームにあった汎用機体とは全く様相の異なる戦闘用サイボーグボディが十数体並んでいた。

「陸軍のコンペで出品した試作品ですの。制式採用に至らなかった機体もありますが、どれも優秀な機体ですわ」

 見るからに強そうで、一見しただけでも様々なギミックが組み込まれている事がわかった。

 幽霊の白神はぼんやりと漂って行き、じっくりとターミネーターみたいな鉄人たちを検分している。

 ゆらゆらと漂って行ったり来たりを繰り返す。

 ガジェットオタクを家電量販店のカメラコーナーに連れて行ったような状態だ。

 本体と説明用のパネルを見比べ、何やらブツブツ呟いたりしている。

 数十回それを繰り返しただろうか。開発室の片隅にカバーが掛けられたままの機体を発見し、覆いを外すようにジェスチャーで伝えてきた。

 普通に喋ればいいようなものだが、合成音声は台車の上の魂固定デバイスから出るので違和感があるのだろう。

 作業服姿の無口なドワーフの男が音も無く駆け寄りカバーを外す。

 そこには異形の機体があった。

 僕もすぐに駆け寄ってしげしげと眺める。

 人間用なのはわかるが、他の機体が金属製で銀色に輝いているのに対し、その機体は真っ黒だった。

 いわゆるカーボンブラックというやつだろうか。カーボンファイバーというのは軽量で強度に優れるというのは僕でも聞いた事がある。

 更に、全装備を展開状態なのか、その背中には翼が生えており、足首にはロケットブースターのような物が装着されている。

 機体のスペックが記されたパネルを見ると馬鹿げた数値が並んでいる。

 走行速度二五〇キロ、飛行速度二八五〇キロ、固定武装として機関砲、更に対空、対艦、対地ミサイル装備可能……。

「これがいい」

 白神の声が遠くで響いた。魂固定デバイスを近くに運んでやれば良かったかもしれない。

「いや、凄く高そうだし、扱い切れるか? こんなの。そもそも誰と戦争するんだ?」

 僕の言葉に白神は首を横に振る。

「イヤだ。これに決めた。これがいい!!」

 イヤイヤ期ですか、あんたは。

「さすがお目が高いですわ。こちら陸軍の制式採用の座を賭けて出品したのですけれど、あまりに高性能過ぎて残念ながら選ばれなかった機体ですの」

 僕の胃がキリキリと痛み始める。高性能過ぎて選ばれないって事はつまり、高価過ぎて選定されなかったという事だ。

「一生モノですからね。気に入らないボディでずっと過ごすよりも今気に入った物を手に入れるべきですわ。それに、男の人ってロマンが大切でしょ?」

 スポーツカーより速く、体一つで音速を超えて飛べる、戦車とだってやり合えるし、何より一品物(ワンオフ)のプロトタイプ。

 もちろん白神は千切れんばかりに首を上下に振っている。

 このエルフ、とてつもなく男の扱いが上手い。

 結婚したらきっと旦那を思い通りに操縦するいい奥さんになるだろう。

「結婚してください」

 僕の言葉は完全スルーされ、エルフのお姉さん以外の四人の冷たい視線が注がれることになった。

「あのですね。もしかしてこれ、固定資産税対策で売りに出すんじゃ……うぐっ」

 フランソワさんの顔面にエルフの細腕のフェイスロックがガッチリ極まっている。

「税金の話は気になさらなくて結構ですわ。サイボーグの場合には肉体と結合した瞬間から税の免除を受けられますの。お得でしょ?」

 何が得なのかわからないが、ひとまず毎年とんでもない税金を払わなくていい事だけは理解できた。

「して、お値段は?」

 恐る恐る聞いてみる。

 無口なドワーフが電卓を叩いて僕に突き付けた。

 そこに並んでいた数字に血の気が引き、胃に裂けたような痛みが走り、喉の奥から鉄臭く焼けるような液体がこみ上げてきた。

 幸運な事に僕はそこで気を失った。

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