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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第九話 電気執事はアンドロイドの夢を見るか

「痛いです」

 喧嘩慣れしている傭兵たちにとっては昨日の騒動など、ちょっとしたじゃれ合いに過ぎないのかもしれないが、僕は帰りの機内でしっかりと治療を受ける羽目になった。

 山本さんが傷をスキャンしてガラス片や木片を取り除き、吉村さんの監督の元ネクロマンサー姉妹が治癒魔法を掛ける。

「ヤマキはんはもうちょい魔法の使い方練習せんと、そのうち大変な事になりまっせ」

 人をボール代わりに謎球技をやってくれた傭兵どもがドッと笑う。チャーター便のはずなのに昨日の隣席の客たちも何故か一緒に乗り込んで笑っている。

 どういう事なんだ?

「ビジネスチャンスちゅうんはどこにでも転がっとるもんよ。こちらワット工務店ロストック支店長のビーンさんや」

 紹介されたコーカソイド系の顔立ちの中年男性には見覚えがあった。

 昨日隣のテーブルから僕をぶん投げた荒くれ者だ。だが、今日はワイシャツにネクタイを身に着けその上から作業服のジャケットを着込んでいる。

「ビーンと申します。昨夜は失礼致しました」

「はあ、どうも。探偵の矢巻です」

 差し出された右手を握り返す。多少ゴツゴツしているが、肉体労働者そのものの手ではない。紹介された通り、主な仕事はデスクワークなのだろう。

「政府の競争入札で邪神の侵攻を抑える壁をルルイエに建てる案件がありまして、見積のために現地入りしていたのですが昨日あの後にポル様から魅力的な提案を頂きまして、ぜひ矢巻様にもご協力頂きたいと考えております」

 僕はチラリとポルさんの様子を窺う。カワウソは下手糞なウインクを返して寄越した。協力しろという事だろう。白神の治療にどれだけ掛かるかわからない以上、金蔓は確保しておくに越したことはない。

「ロストックで探偵社やっている矢巻といいます。何かありましたらご協力させて頂きます」

 ポルさんたちは商談に戻り、僕はまた座席を倒して全身の打撲傷に治癒魔法を掛けてもらう。

「白神も治癒魔法でなんとかなればいいのにな。ほら、僕も脚が千切れた時に治してもらっただろ」

 ネクロマンサー姉妹が揃って嫌な顔をした。警視庁の小池警部の事を思い出したらしい。たしかにあの人に頭を下げるのは御免被りたい。

「損傷度合いが違い過ぎますよ。ライフル弾の当たりどころが悪かったのと、頭と金玉しか残ってないのじゃ対処方法が全く違います」

 山本さん、美少女の姿でさらっと下品な言葉を口にしないで欲しい。ちょっとドキドキしてしまうじゃないか。

「私としてはこんなのをお勧めします。素体としてこのボディを使って、脳への栄養補給は外部タンクから供給すれば白神様のお給料でもローンを組めばなんとか」

 タブレットに映ったロボットを見て僕は噴き出した。C-3P○。いや、伏せ字になっていない。

有名な宇宙戦争もの映画に出てくる金ピカロボットそっくりな奴が、ご丁寧に黄色いヘルメットまで被って大きなチェーンソーを掲げてポーズを取っている。しかも金ピカじゃなくて全身ブリキ色でオリジナルに比べるとパチモノ感が物凄い。

「いいなこれ! これに決めよう」

 昨日の事もあって多少意地悪な気分になっていた僕は、詳しい仕様も含めて白神の魂が定着させられているデバイスに転送してやる。

「死にたい……」

 地の底から響いてくるような陰気な声がデバイスから漏れてきた。

「もう嫌だ……死にたい……」

 騒がしかった機内が静まり返り、ターボファンエンジンと機体が風を切る音だけが響く。

 あれ、僕また何かやっちゃいました?

 白々とした視線が突き刺さる。

 痛い。痛いよ、ママン……。

「わかった。どんな手術でも超高級ボディでも僕がなんとかしてやるから! だから……だから……」

 『冷たい目で見ないで』と言おうとした瞬間に機内が歓声に包まれた。

「さすが伝説の勇者!」

「グールズバーグ一の名探偵!」

「世界一の大魔導師!」

「童貞のくせに太っ腹!」

 最後の言った奴誰だ?!

「頑張って稼いでね! パパ!!」

 どうやって出しているのかわからない、裏声になった白神の合成音声がトドメを刺す。

 僕はお前のパパじゃねえ!!

 どうやらハメられたらしい事に気付いて胃が痛くなったが、これは治癒魔法では治らないようだ。

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