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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第七話 不完全な死体

「おらおら、兵隊ども! ちゃきちゃき掘り出せ!!」

 ポルさんがぷにぷにした肉球の手を振って恐ろしげな傭兵たちに指示を出す。

 オーガやら人狼やらゴブリンといった絶対に夜道では出会いたくない連中が素直に従って、スコップやチェーンソーでゴリゴリと邪神の死骸をバラしていく。

 白神を飲み込んだ邪神の体があっという間に切り開かれ、この世で出会いたくない類の「死んでも尚動く内臓」がむき出しになる。

「肉傷めんなよ。高く売れるで~」

 たしかにこの味で、南極近くにしか生息していないとなれば超レア物だ。

 昭和の昔には借金抱えるとマグロ漁船に乗せられるなんていう話があったが、きっとこの世界では邪神漁に行かされるのだろう。

 ポルさんが電卓を弾いて見せてくれる。

 なかなか魅力的な数字が踊っていた。

「おっけーです。是非よろしく」

 白神の体の再生費用も掛かるだろうし、お金はあって困るものではない。

「ヤマキはんが直接倒すと死骸も粉々になってまうんで、ウチの兵隊どもが丹精込めてぶち殺した奴を特別サービスですわ」

 十二番のスラグ弾一発で壊滅的打撃を与えるとは思ってなかったし、力もセーブしたつもりだけれど完全に標的を消滅させてクレーターを作ってしまった。

 攻撃魔法はもう少し制御できるようになりたいけれど、練習する場所が無いのが辛いところだ。

「ヤマキはん。これ終わったらちょいと付き合ってもらえまへんか?」

 いや、俺童貞なのにいきなりカワウソのオスと付き合うとか無理っす。LGBTどころじゃない話じゃないですか。

「変な意味じゃなく、ヤマキはんの才能をちょっと鍛えてみたい思ってますんで」

 なんだ、びっくりした。

 確かに獣としては可愛い部類に入るニホンカワウソのポルさんだが、同系統のマサムネの方が絶対に可愛いしモフモフ度も上だ。

「そ、それなら良かったです。じゃあお願いします」

 ちょっと離れた所で強そうなオークが手を振っている。どうやら目的のブツを見付けたようだ。

 ネクロマンサー姉妹が魂定着デバイスを持って歩いてゆく。

「いやだー!!」

 白神の絶叫が響く。僕はちょっとだけ足早に声の方向に向かった。

 何せ大氷原で足場が悪いので走ったりすると簡単にすっ転ぶ。

 そこで見たのは半分溶けた頭部と……骨盤付近の塊だろうか。

「うっは、きっもー」

 僕よりちょっと早く現場に到着していた吉村さんが容赦ない台詞を吐く。

 たしかにキモい。表皮がドロドロに溶けて筋肉と骨まで剥き出しになった人間の一部だ。

「ほな、拾っていきまひょか」

 白神の頭部と腰部は『グールズバーグ・コルドン市指定ゴミ袋/無料配布分』と書かれたビニール袋に無造作に投げ込まれた。

「ほな、最初のミッションは完了や。宿帰って呑むで。クロはんも回収しといたし」

 そういえば泡吹いてひっくり返ってたな。心配だ。

「あれが……俺……いやだ……いやだよぅ」

 咽び泣くような白神の声をかき消す轟音とともに、僕たちを乗せたバード・オブ・プレイは離陸した。

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