表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
74/107

第一話 死せる友へのバラッド

あけましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。

 一日目 17時30分 首都警本部

「わりいなあ。さすがに表立っては動けないし、非合法デバイスの件も見なかった事にするのがやっとだ。ひとまず、アンドロイドボディに意識を移すとかしか無いんじゃねえか?」

 徹夜明けプラス通常勤務のシフトだったらしく、無精髭をこすりながらサジさんが渋い顔で言う。

「そんな事言わないで、パパ。白神くんは大事な友達なの!」

 吉村さんが目をうるうるさせながら言う。

 お腹の子のパパ、つまりサジさんは物凄く嫌そうな顔をして缶コーヒーを一口飲んだ。

「肝心の体が無いんじゃ手の打ちようが無いしなあ。クローン体作って移し替えるって非合法手段も無い事は無いが、そいつは殺人罪だぞ。クローン体自身の自我を殺す事になるからな。体細胞培養するにも元の体の切れっ端でも無いとクローン体と同じくらい時間が掛かるし。アンドロイドボディの難点は……」

「人権が制限されるし、時間が経つと人間としての意識も薄れていく……でしょ?」

「よく勉強してるじゃねえか。こっちのシャチョサンたちにも教えてやんな」

 うなだれる僕とカワウソ。

「お前んとこの山本さん、アレがギリギリ人間とアンドロイドの境目くらいだ。あそこまで生体パーツが多ければ近いうちに人権が完璧に認められる。だけど、彼と言うか彼女については、新規で自我を獲得したって扱いだからなあ……。白神の場合はアレくらいのボディに意識を移しても生体部品が元の体と違うから拒絶反応とかで人格が変わる可能性もあるし、下手すると人間の記憶を持ったゾンビボットになるかもしれないんだよ」

 あ、白神の影がまた薄くなった……。あんまりいじめないであげて。

「一番いいのは体を取り戻して再利用できる組織を機械の体に組み込んでやるってやり方だろうなあ。詳しくはフランソワか嫁のバニーちゃんに聞いてみろ」

 あのオークの科学者か。確かに治安部隊の荒事師よりはその辺詳しそうだ。

「もう一つ……。いや、これも元の人格には戻らないし、邪悪過ぎるから考えないでおこう。とにかく根回しだけはしとくから色々当たってみな」

 サジさんの視線が一瞬吉村さんのお腹に向けられたことを僕は見逃さなかった。


 同日 22時15分 探偵事務所

「矢巻さん、事情は聞いていますが、この状態ではあんまりお役に立てないと思いますよ」

 フランソワさんがウォーハンマーみたいな巨大なマンガ肉を頬張りながら言う。

 いつもの白衣ではなく花柄の部屋着姿だが、画面に映るのはファンタジーものに出てくる凶悪なオークそのものだ。

 こっちの世界の肉牛や豚は平気で数トンのサイズになるし、味も非常に良い。

 そういえば、昼に食べていたカップ麺を途中で取り落してから何も食べていない事を思い出した。

 途端に腹が鳴る。

「矢巻さん。ちゃんと食べてますか? 準備だけはしておきますから、体調を整えて今から言う物を用意してください」

 地球の両親は元気だろうか? 無謀運転で同級生二人を死なせた上に現場から逃亡した酷い奴の親という誹りを受けてはいないだろうか?

 なんか涙が滲んできたので、山本さんにメモを取ってもらって僕はマサムネをキュッと抱きしめた。

「ヤマキ、おなかすいたのか? カリカリやるぞ」

 マサムネがどこから出したのか数粒のカリカリをちっちゃなお手々で渡してくれる。

 僕は受け取ってポリポリと齧る。あんまり美味しくないが、空腹のせいで何の抵抗もなく食べられる。

「ありがとう。この後ちゃんと食べるからな」

 耳の後ろを撫でてやると気持ち良さそうに伸びをして大きなあくびをする。

「社長、お疲れのご様子ですので……」

 山本さんが言葉を切ったところまではわかったが、猛烈な眠気にやられてその後はよく憶えていない。

 抱っこしたマサムネがククッと笑い声のような鳴き声を立てたのを聞きながら意識は急速に闇に飲まれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ