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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第三十六話 探偵、復讐する。

色々とあって一ヶ月以上空いてしまいましたが、やっと再開です。

前の何話かがエロかったらしく運営様に怒られたり、本業でやらかしちゃった人の火消しをしたのに梯子を外されて社内ニートになり掛けたり、鉄砲を買いに出掛けたら日本国内に在庫が無いから年単位で入荷待ちだって言われたり、と。

 ドラゴンレース当日。

 サジさんやジェイソンさんみたいな上級者なら、一周五〇キロのコースを二分ちょっとで一周するドラゴンレースは一言で言って圧巻だ。

 観客席の前に設けられた魔導防壁は音速を超えて飛翔するドラドンの放つ衝撃波で震え、赤熱する。

 緊張感漂う全国選手権の予選が終わったら、ある意味余興に過ぎない僕たちノービスクラスの出番だ。

「マサムネ、いいか?」

 吉村さんお手製のヘルメットを被ったマサムネがキュッという鳴き声で返事をしてちょこちょことアルの首に登っていく。

「しっかり練習したし、筋肉バカのアルの性能を百パー引き出してやれ」

「酷いですよ。僕だってちょっとは頭を使ったり出来るんですからね」

 ブンブンと頭を振り回す様子を見ていると、それは頭突きというのではないかという感想しか湧いてこない。

 マサムネはアルの羽根の付け根に固定された僕たちお手製の超かっこいいバケットシートにスポンと収まった。

 やべえ、超かわいい。アルがでかすぎるのだが、マサムネはちっちゃなぬいぐるみにしか見えない。

 吉村さんはキャッキャ言ってスマホで写真を撮りまくりだ。僕もスマホをポケットから取り出して何枚か写真を撮る。白神には動画を任せてあるが、あまり期待はしていないので、テレビ中継の録画を後でチェックすることにする。

 スタート方式は地球のドラッグレースと同じ。だが、合図はレースクイーンの振る旗だ。

 今回のレースクイーンは……、すげえ、ハイレグ神官服のダイナマイトボディだ!!

 僕は夢中で写真を撮りまくる。

 白くてちっちゃなぬいぐるみを乗せた怪獣がのっしのっしとスタートラインまで歩き、ロバくらいの大きさの皺だらけの龍に乗ったおじいさんと並ぶ。

 レースクイーンが旗を大きく掲げて、振り下ろす。思いっ切り背伸びをして旗を掲げた時に色々と絶対領域の脇の下とかVラインとかがむき出しになったけれど、しっかり写真には収めてある。

 最初からかっ飛ばすつもりのアルが、強烈なダウンウォッシュを地面に叩き付けて離陸。おじいさんとロバ龍はぽてっと横倒しになった。いいのか? これ。

 アルは見る間に音速を超え、地響きのようなソニックブームが叩き付けて来た。おじいさんはヨタヨタと起き上がり、ロバ龍とともにゆっくり飛び立った。歩いている方が速いんじゃないのか?

 あっという間にアルは豆粒のように小さくなった。あとは二十五キロ先のチェックポイントでマサムネが小さなコインを拾い上げて持ち帰ってくれば終わりだ。

「やあ、矢巻くん。なかなか好調なようじゃないか」

 背中から這い寄るような粘液質な声。

 昂った気分が一瞬で落ち込む。

「小池さん……。なんでこんな所に」

 振り返ると二人の美少女を従えた小太りの男がいた。

 警視庁の小池警部だ。

 色々と限界領域が見えそうなエロティックな衣装を着せられた少女たちはリサとリムといったっけ?

 娼婦のような化粧で男に媚びるような笑みを浮かべているが、それが無理矢理刷り込まれたものだという事を僕は知っている。

 本当の彼女たちは、こんな事は望んじゃいない。精神の奥底に閉じ込められた本当の自分は辱められる己の姿を見て病み苦しみ続けているのだ。

 怒りがこみ上げてくる。

 僕を操っていたのはたしかに彼女たちの属していたネクロマンサー集団だ。

 だが、個人の裁量で彼女たちにこんな仕打ちをする権利は小池警部には無いはずだ。

「なんだい? 矢巻くん。怒ってるのかい? 僕を殴りたいかい? 警視庁の警部に逆らったらどうなるかわかってるんだろうね」

 僕は体に満ちたマナをオーラのように揺らめかせ、攻撃魔法を小池警部に向けて放つ構えを取った。

「でもね、僕の方が速いだろ?」

 そう言って小池警部は僕の手首を掴む。

 狙い通りだ!

 掌から放たれる火の玉か雷でも予測していたのだろうが、今の僕は違う。

 掴まれた手首から吸い取られるマナを吸い取らせるままにし、更に大気に満ちるマナを圧縮して送り込む。

「げえっ!」

 小池警部は弾けた。

 体中の穴という穴から血を吹き出し、意識を失い掛ける。

 ここからが本領だ。

”魔法学校では教えてくれないネクロマンサーの秘技”ってやつを、この一ヶ月付け焼き刃だが金に糸目を付けずに、時には非合法な集団とも関わって身に付けたのだ。

 どんどん送り込まれていくマナとともに、僕は自分の意識の一部を小池警部の脳に送り込む。

 イメージとしては細く伸ばした配線を挿し込んで接続する感じだ。

 姉妹を操っている術式を探し、小池警部の脳内を僕の細く伸びた意識がまさぐって行く。

 あった!

 術式自体の意味はよくわからない。だが、姉妹に書き込まれているそれを小池警部の体を触媒にして解除することはできそうだ。

「エンッ」

 小池警部の脳を貫通して、僕の意識が大量のマナとともに姉妹の意識に届くのが感じられた。

 木偶人形のように佇んでいたエロティックな衣装の二人が、鼻血を出して白目を剥き倒れ込む。

 多分成功だ。

 ちくしょー! やったぜ!!

 だが、小池警部は僕の手首を掴んだままだ。

「ぎざま……、ごんなごどぼじで……だだでずむど……おぼうな」

 その時、強烈な地響きとともに強烈な風が叩き付けて来た。

「ヤマキヤマキ! ボク、やったよぉ」

 ちっちゃなぬいぐるみみたいな白いふわふわが肩に跳び乗ってきた。

 マサムネだ。どうやらゴールしたらしい。

「ずいどるだげじゃなぐ、ぎゃぐりゅうざぜるごども……」

 小池警部は過剰摂取したマナをボクに押し戻そうとしているらしかった。

 マズい。限界を超えて相手に送り込む技は習ったが、押し戻された時の対策はしていなかった。

「でね、でね、ヤマキ。ボク、もう限界かもしれない。流石に全力のアルは凄かった」

 肩の上でマサムネがプルプルと震えている。

 ヤバい。

 多分こっちの方がヤバい。

「で、出そうなの……。あっ! 出る! ファイナルブラスト!!」

 鼻を叩き折る強烈な臭気が周囲に充満する。小池警部は僕の手首を放し、鼻を押さえようとした姿勢のまま昏倒し、地面に叩き付けられた。

 僕は必死に意識を保とうとするが、膝から力が抜けてその場にへたり込んだ。

 薄れ行く意識の中で、ネクロマンサーの姉妹を担いで現場を離脱する黒い甲冑の姿が見えた。


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