第三十四話 探偵、復活する
三十四話につきましては、運営より18禁指定を頂戴したと思われる部分なのでかなり改稿致しました。
痛い。
とにかく痛い。
脚が千切れたのは仕方ないとして、気化した銅が超音速で太腿やら左足を貫通したなんて話は聞いてなかった。
くすんだ色の金属片を渡されて、これがあなたの脚を千切った弾丸ですみたいな事は言われたが、メタルジャケットが溶けて周囲に被害を及ぼしていたなんて話までは聞いてない。
「麻酔マシマシで! もう! 永眠してもいいから!」
メチャクチャなことを言っている自覚はある。
でも、美人の看護師さんはピピッと何かのスイッチを押して去っていった。
「鎮痛の魔法を掛けときゃいいじゃん?」
五才児の姿のドラゴンが眠そうに言った。
そりゃそうなんだけど、一応病棟内は患者の魔法利用禁止だしな。
「さて、破壊された断面の培養が終わるまでしばらくサイボーグ義肢を付けるか、それともおとなしく寝てるかどうかだが」
The・他人事といった口調で白神が言った。
そりゃまあ、他人事でしょうな。
今回、白神はATVの運転&高みの見物しかしていない。
吉村さんもちょっとキモいって目線で眺めていただけだ。
マサムネに至っては、俺の仲間を装っていた歩く死体の断片を食べようとしてゲロを吐き、僕の肉をちょっと食べたくらいだ。
あれ? 今、僕、俺って……。
「やあ、そういう意識の混乱はネクロマンサーに操られていた後遺症としてよくある事だよ。それに、協力者のキミには特別な選択肢もある」
警察署で見た色白、小太りでメガネの男だ。
「正式な挨拶は初めてでしたね。警視庁の小池警部です。ヘイタイの位で言うと君たちと仲良しの佐門幸生さんより少し下かな」
警察署で会った時はヤクザと半グレの太鼓持ちみたいな顔をしていたが、実は結構偉い人だったんだな。
それよりも僕としては小池警部の両脇に控える露出度大サービスな衣装を着た美少女二人の方が気になる。
「ああ、キミくらいの歳だとこっちの方が気になるよね。僕の奴隷のリサとリム。奴隷って言い方は悪いけど、キミも一度仮死状態になって違う自分を植え付けられたよね。彼女たちはキミを操っていたネクロマンサー組織の人間だったけど、僕が作り変えてあげたんだ。どんな嫌な事を命じられても従わざるを得ないし、本来の自分はそれを止めることも出来ず、狂う事も出来ずに見ているだけなんだ」
いや、僕、『俺』になってる間、結構ノリノリだったみたいです。まあ、『僕』が目覚めている時には嫌悪感で一杯だったけど。
はっと気付く。
そういう事か。
彼女たちは意図的に元の意識を常に目覚めさせられたまま、意に染まない命令を与え続けられている……。
まさに生き地獄だ……。
小池警部の口の端がニィッと吊り上がった。
「そうだよ。愉快だろ。立場が逆転したわけだからな。彼女たちも常に元の意識は目覚めたまま、意に染まない命令に従い続けるんだよ」
最低だ。
こんな奴が警察機構でそれなりの地位にいるなんて。
いくらネクロマンサー組織に属していた少女たちとはいえ、僕よりも年下に見えるこんな娘たちが永遠の魂の牢獄を彷徨うなんて事があって良いはずがない。
一方で、それに興奮している自分にも気付いた。
最低なのは僕かもしれない。
「まあ、僕が最低なのはわかっているよ。でも国家は僕を手放せないし、追放されたら更に好き勝手やらせて貰うだけだしね」
敵に回したら最悪最低かつ最強の相手だから、民警もお目溢しをしているという事なのだろう。
「それで、今回の一斉摘発に協力してくれたキミに良い提案があるんだ。おい! アレを出せ」
小池警部はリサと呼ばれていた少女の頬をデコピンの要領で弾いた。可哀想は可愛いという歪んだ気持ちが何となく分かる。
少女は暗い表情のまま、下げていたバッグから巨大なジップロックみたいな医療用のビニールバッグを取り出した
「培養期間もサイボーグ義肢も要らず、後遺症も残らない。王国最高のゾンビ使いの施術が受けられるチャンスだ。あ、そうそうこれも返しておこう」
手渡されたのは僕の身分証カードだった。
「偽造品で過ごして貰ったけど、あんまり使う機会無かったでしょ。この娘たちの預金で相殺しとくからキミの懐は痛まないぞ」
社会信用スコアも上がって、預金残高も増えているカードを渡されても、僕の心は沈んだままだ。
「では、お願いします」
不安はあったが、この痛みとオサラバ出来て、しかも自由に動き回れるなら悪魔にだって魂を売ってやる。
いや、そんな滅多な事は言うものじゃないかもしれない。
「では、そうしよう。リサ、リム手伝いを」
美少女が僕のズボンを脱がし、傷口の包帯を解いていく。
培養液らしき液体に塗れた僕の膝から下を美少女二人が断面にあてがっている。
小池警部が詠唱を始める。この魔法王国とも言えるグールズバーグでも初めて聞く呪文だ。
少しアラビア語に雰囲気が似ている気がするが、死霊魔法もアラビア語もほとんどわからない僕には完全に意味不明だ。
小池警部の手が僕の太腿を撫でる。とてつもない快感が体を包んだ。
頭が真っ白になりそうな中、とんでもない醜態を晒したのはわかった。
もうお嫁に行けない……。
白神はガン見しているし、吉村さんはわざとらしく顔を覆った指の間からめっちゃ見ている。
もう嫌だ! 最悪だ……。
でも、この快感は癖になりそう。
「終わったよ。歩いてみると良い」
小池警部は、美少女二人の尻を叩いててさっさと病室から出ていってしまった。
切断されていたはずの僕の脚は完全に傷跡も無く繋がっていた。
なんだかおかしな夢を見ていた様な気分だ。




