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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第三十三話 ネクロマンサー、奴隷になる

三十三話につきましては、運営より18禁指定を頂いたと思われる部分なので改稿致しました。

 ゾンビの群れだ!

 妹のリサは涙目でほとんど固まっているけれど、私は負けない。

 私たちが作り出す生きた死体と違って、ゾンビなんて作るのは下級ネクロマンサーの仕業だ。

 死霊秘法の詠唱でゾンビたちを私の味方にしようとする。

 だけれども、一匹のゾンビさえ反応しない。

 もしかしたら、ネクロマンサーじゃなくてこの世界の科学省の愚劣な役人どもの作った傀儡なのかもしれない。

 死体が必要だ。

 操られていない死体が。

 私たちネクロマンサーは自力で戦えるほど強くない。

 操る死体が無ければほとんど無力と言ってもいい。

 でも、目の前の死体どもは私の力を受け付けない。

 ちらりとリサの方を見た。

 ゾンビに怯えて頭を抱えうずくまっている。

 死体にしちゃってもいいよね?

 そんな悪魔的な考えが私の頭をかすめる。

 女神様に選ばれた魔法使いがそんな事をしていいのか?

 そういう疑問もある。

 でも、このままじゃ、二人ともゾンビの仲間入りをするだけじゃない?

 私はローブの下に隠したナイフをそっと取り出す。

 ちょっとチクッとするだけだからね。

 ごめんね、リサ。

「ああ、そんなのは勿体無いですね。お二人とも無傷で僕の従順な奴隷として服従させて差し上げたい。まったく、お美しい肌に傷を付けるなんて許しがたい暴挙ですよ」

 息切れしながらそんな言葉を投げ掛けてきたのは、小太りでメガネの中年男だった。

「キモい」

 感想が口をついて出てしまう。

「ああ、それはご褒美ですね。いいでしょう。あなたが僕の操り人形になってもそのセリフは時々言ってもらうようにプログラムします。楽しみですね」

 こいつが悪魔のネクロマンサーか。

 見た目も気持ち悪いが、言っている事も相当にイカれている。

「妹さんは僕がお人形さんとして可愛がるのに丁度良さそうなキャラクターですね。色々と仕込んで楽しませてもらいましょうか」

 どこまで下劣な!

「僕の事を下劣だと思ったでしょう。でも、妹さんを死霊に変えて戦わせるのはいいんでしょうか?」

 その言葉が、私に一瞬の迷いを生じさせた。ナイフを構え直すけれど、その時には小太りのメガネ男は私の手首を掴んでいた。

 魔力が全て抜けていく。心臓の鼓動が極限まで下がり、体温が下がっていくのがわかった。

 小太りの男は短い詠唱をする。

――私はこの人の奴隷で、生ける死人。

 私の一番深い部分がこの男に従うのがわかった。

 嫌だ! こんなのは嫌!!

 抵抗している私が、私の奥底にいるのがわかった。

「服でも脱いでもらいましょうか。興奮してゾンビも生き返っちゃうかもしれないですしね」

 嫌だと思う本当の気持ちとは裏腹に私の手は服のボタンを外していく。

「聞き分けのいい子ですね。これから一生そのままですよ。僕の命令に逆らいたい自分を心の奥底に閉じ込めたまま」

「妹さんの方はね、もっともっと僕の深い趣味の方に使いたいので、全部改造させて貰いますよ。ふふふ」

 気持ち悪い! 最低だ!

 頬に涙が流れるのがわかる。

 これはどっちの自分?

「嘆いてください。悲しんでください。それが僕にとっての大ご馳走ですから」

 その横で、小太りの男はリサに見るに堪えない処置を施し始めた。

 よくわからない注射、謎の詠唱、肩に不気味な紋様を刻んでゆく。

 止めろ! そう叫んだつもりだけれど、その言葉が私の口から声が発せられることは永遠になかった。


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