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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第三十一話 主人公、我に返る

 僕が俺だったりしたけれど、何だかわからないうちに首都警の人たちと戦っていたみたいだ。

 単発の攻撃魔法に限れば、僕はこの世界で最強クラスらしいけれど、訓練された軍事組織相手では、たとえ剣と魔法のファンタジー的なパーティを組んだところで全く勝ち目は無い。

 それくらいわかっているのに、何故かまた僕はこんな状況に追い込まれてしまっていたのだ。

 良く訓練された首都警の黒い甲冑軍団を相手に弓矢や剣、そして強いと言ってもあまり連発が効かない魔法で対抗しても多寡が知れている。

 そんな当たり前の事に気付いたのは、死角から何かとんでもない攻撃を受け、路上に横たわってからの事だった。

 右膝から下の感覚が無い。恐る恐る首を起こして見てみると、右膝から下がそもそも無いように見えた。

 『俺』ではなく『僕』に戻ってから、ほんの数十秒の事なので、現実味が薄いが、どうやら右足を撃ち飛ばされて倒れたようだ。

 僕ほど強力な防壁を張れるわけじゃない弓使いとシーフらしい二人が、ビルの上で肉を撒き散らして弾けるのが見えた。

 クレアとオットーとか言ったっけ? さっきまでは仲間意識みたいなものを感じていたのに、今では全くの他人事にしか感じられない。

 ロイと呼ばれていたアメリカンニンジャが果敢に首都警の防衛線に突っ込んで行き、爆散した。

 幸運にも魔導防壁は体の一部を失った時に止血帯の役割も果たしてくれる。

 あまり得意ではない治癒魔法の中から、唯一まともに使える鎮痛の魔法を右脚に掛けた。

 範囲が広すぎたのか、ちんちんまで痺れてしまったが、痛みは止まってくれる。

 目の前に散開しているケルベロス軍団にはサジさんもラインハルトさんもいないようだ。

 粉々にされる前に降伏しようと、辺りを見渡して白い布を探す。

 どこの世界にも落ちている使い古しの軍手が片っぽ。

 白というよりも黒に近い灰色だ。

 僕はため息を吐いて頭を地面につけた。

 流石に血を失い過ぎたようだ。色々と考えるのがダルい。

 轟、と風が吹いた。

 何とか繋がっていた右脚の膝から下が突風で千切れて転がっていくのが見えた。

 さよなら僕の右脚。

 そして巨大な影が僕を包む。

 のどかな草原を思わせる土の匂い。

 なんだ、ドラゴンか。

 遅かったな、アル。

 もうちょっとお前と仲良くしておいても良かったのに、あんまり絡む機会無かったな。

 火のように熱いドラゴンの指先をそっと掴む。

「矢巻くん! もうちょっとだから頑張って!!」

 そう叫んだ吉村さんは何もせず、僕の脇に横付けしたATVの助手席でふんぞり返っている。

 代わりに身長一五〇センチの超絶美少女がどデカいクーラーボックスを担いで飛び降りた。

 山本さんだ!

「ご主人さま! 今楽にして差し上げますね!!」

 いや、それはマズいだろう。わりと今の気分だとどうでもいいけど。

 山本さんは転がって行った僕の足を拾い上げ、ペットボトルの水で洗い流すとレジ袋に放り込み、クーラーボックスに仕舞った。

「ライラちゃんに撃たれたって聞いたから、あんまり心配はしてなかったんだけど、結構酷い有様だね」

 吉村さんはスマホを弄りながらふんぞり返っている。この女、いつか事故に見せかけておっぱい揉んだる!

「ヨシ! 幸生さんに連絡付きました。想定であと一五分程度で戦闘は終了。テロリストの生存者はわずか。主力部隊掃討後は民警に任せて撤退、だってさ」

 マサムネが肉の欠片を咥えて持ってきた。

 この形は、乳首?

 白いイタチは少量の吐瀉物とともに肉片を吐き捨てる。

「これ、腐ってる!! しかも変な薬の臭いと化粧品の臭いで気持ち悪い!! 最悪!!」

 元から赤い目がピンク色を帯びてキラキラと輝いている。怒りか興奮かわからないが、感情が昂ぶっているのだけはわかる。

 トコトコと寄ってきたマサムネが僕の足の傷を舐める。

「こっちは新鮮! 美味しいけど社長! あんまり食べないでおく」

 いいんだ、マサムネ……。多少食べてしまったって。

「マサムネ! 何かの毒が仕込まれてるからあんまり食べちゃダメ!! その代わり帰ったら塩分控え目の生ハム作ってあげるから!!」

 吉村さん……、僕は毒物ですか? 生肉としても失格ですか? もう何も望みません。だから、おっぱい揉ませてください。

「ちょっと元気になったみたい。えっちい事でも考えた?」

 読まれてました。やっぱりおっぱい怖いのでライラちゃんの発展途上の胸をさすりたいです。

「ん? ヤマキ、ちゃんと生きてるな」

 僕には想った相手を引き寄せる力でも備わったのでしょうか? ライラちゃんの声です。

 手にはゴツい鉄砲を抱えています。後ろで周囲を警戒しているのはカワウソ人のポル・ポトさんです。

「ポルや! それにもう、カワウソ人は廃業や! ワシは最後のニホンカワウソや! こっちの世界に転生した最後の生き残りや!!」

 情報量が多すぎて脳の処理能力が飽和し、僕の意識はそこで途切れた。

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