第二十八話 格闘少女、狙撃する
レミントンM700……のコピー品。
幸生からはそういう説明を受けたけれど、あたしから見たら随分と高級なライフルだ。
あたしにはちょっと長いから、銃身を切っていいかと聞いたら、官給品だからダメだと言われた。
先生の兄にしてはケチな事を言うが、役人というのは色々と面倒なんだろう。
無線機がガサついた声を伝える。
「配置についたか? アホなコスプレイヤーみたいな連中がいたら片っ端から撃っていい。間違えても俺が責任を取る」
幸生の声だ。先生の声と似ている。
アフガニスタンと呼ばれた国の辺境で先生と暮らした頃が懐かしい。
姉は先生と男と女の関係というやつだったらしいが、幼かったあたしにはあんまりよくわからなかった。
だが、こっちの世界に来て、「ほけんたいいく」というのを学んで、ちょっとだけ姉に嫉妬した。
姉は先生の子供を産んだのだろうか?
「聞こえてたらスイッチを2回押せ。返事はしなくていい」
あたしは無線機の送信スイッチをカチカチと押した。
幸生はどうもせっかちなところがある。それに、多分、先生より弱い。
先生がこっちの世界に来たらドラゴンどころか、幸生が過去に戦ったという敵とも素手で渡り合えるだろう。
「一応、矢巻は殺すなよ。さすがに寝覚めわりい」
わかってる。ヤマキはバカでスケベでガキンチョだけど、悪人じゃない。
でも、ヤマキが誰かを殺したとしてもあたしとしては別に排除する理由にはならない。
この世界では、あたしは自由だ。
ライフルに初弾を装填してスコープを覗く。
昔、写りの悪いテレビで見たアニメの登場人物のような姿の魔法使いが見えた。
そっと引き金に指を掛け、思い直してもう一度双眼鏡を手にして周囲を見渡す。
ゾンビだ!
やっぱり昔見た映画に出てきたゾンビがいる。
ゾンビは魔法使いに飛び掛かり、喉笛に食い付いて食い破った。
何が起きているんだろうか?
あたしは次の標的を探すために、ビルの屋上から周囲を見渡した。
平日の夕方なのに、一般市民はあまりいないようだ。
ちらほらとそれらしい姿も見えるけれど、歩き方が軍人のそれだ。
作戦としては予定通りらしい。
胸の大きい神官服の女が視界に入った。
この世界ではそもそも神官というのは忌み嫌われる存在という事だ。
つまり、遠慮無く撃っていい。
距離にして400メートル。
風も無い。
あたしは周囲を警戒してゆっくりと歩いている女の乳首のあたりに狙いを付けて引き金を絞った。




