第二十六話 殺戮の香り、満ちる
俺たちは予定通り、グールズバーグ首都のハンドラッド地区に身を潜めていた。
と言っても、別に物陰に隠れていたわけじゃない。
ショッピングを楽しむカップルの振りをして、俺とステラは水着の試着などを堪能しているところだ。
店内もそれなりに芋臭い若い男女で賑わっている。
そもそも俺たちの理想は置いておいて、どうもこの店の客は田舎臭くて良くない。
俺みたいなシティボーイから見ると、どうにもお粗末な田吾作カップルばかりだ。
「ソーイチ~。今度はアレ着てみたいなぁ~」
ステラにおねだりされるとついつい何でも許せてしまう。
客層はダメだが、品揃えはいいぞ、この店。
なんたってマイクロビキニが壁一面を占めている。
俺たちの理想が成就した暁には、こんなツルツルの素材の水着は姿を消すのだろうが、デザインだけは残しておきたいものだ。
(俺……りそ…てな…だよ)
何か耳の後ろあたりが痒いような痒くないような。
店内はこの時間でも明るく、賑わっている。
別におかしななところはない。
指定された時刻まで一般市民に混ざって時間を潰すのも任務の一環だ。
俺たちのチームは俺とサテラ、ロイと翔太、クレアとオットーの六人だ。
俺は班長とか伍長みたいな位置付けらしい。
今回は軍隊で言えば大隊規模が一斉に動く。
新しい時代の幕開け、いや、古き良き時代の再来だ。
この腐り切った世界を浄化して剣と魔法の時代に戻すのだ。
(な…か知ら…が、つまり…テロ……ムっ…事だ…)
俺は残高があまり無いカードで支払いを済ませ、店を出る。
いい具合に日も暮れてきた。俺とサテラは指定されたアジトに入り、着替えを済ます。
もうすぐだ。
もうすぐ恐怖の夜の始まりだ。




