第二十五話 探偵社、再起動する
黒塗りの装甲車両が首都警本部脇の車庫から続々と出ていく。
今回は予備役まで招集して総動員のはずなのに俺の出番は無い。
「留守番だな、俺たち」
横に座っているポンコの頭をガシガシと撫で、気持ちを落ち着けようとする。
「戦いは避けた方がいい。あたしたちはそうやって生きてきたし」
噛む力なんかはそれなりに強いが、野生動物かつ転生時の能力引き上げがあったとは思えないくらいポンコの身体能力は低い。
タヌキっていうのは野生の肉食獣の中じゃ最弱クラスじゃないだろうか?
俺も同じかもしれない。剣道をやっていた経験と、こっちに来て使えるようになった魔法でなんとなく強くなれた気がしていたが、転生者じゃなくても筋金入りの軍人たちの力には遠く及ばない。
「遠くから見るくらいならいいんじゃないか?」
高そうなソファで爪研ぎをしようかどうか迷っていたクロが余計な事を言い始めた。
うん。そうだな。見るだけタダ。安いよ!
禁煙室なので煙くない、隊員控室から出ると、美南が待っていた。高級な毛皮の襟巻きのようにマサムネを首の周りに巻いている。ちょっと暑そうだ。
「どうせ、行くんでしょ?」
俺は頷いた。美南の後ろには、”元しょぼくれたおっさん”の超絶美少女事務員アンドロイドの山本さんも控えていた。
「ATV、四人乗りだしな。この状態だと”人”は俺ら二人だけだし」
クロが足元で同意するように「なぁ~」と鳴く。
「今回は暴走した矢巻くんに匹敵する人型災害レベルが少なくとも五人。更に裏に付いてる組織の増援もありそうなんだって」
俺は不謹慎な言葉をぐっと堪えた。それに、その『人型災害』とか、商標登録とかされてんじゃないのか?
「そんなお祭り、見とかなきゃ一生後悔するよね。」
あっさりと俺の良心を踏み躙って美南が思っていた事を口に出す。いや俺はむしろお前の口に出し……ムギュ。
襟巻き状態だったマサムネが跳躍して俺の顔面にエイリアンのように貼り付いた。
イタチって読心能力持ってるのか?
「あまり時間もありませんし、玄関に車を回してありますので、そろそろ出ましょう」
美少女事務員山本さんが冷ややかな目付きで俺を睨めつけて言った。
マサムネはかなり臭い。矢巻が無事戻ったら一日休暇を与えてずっとマサムネを洗わせよう。
俺たちは、濃緑色のATVに乗り込んで、装甲車両の跡をつけはじめた。




