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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第十九話 社長、死ぬ

ついに主人公死にました。

 まだ夕方だからなのか、気持ちが昂ぶっているからなのかわからないが、ベッドに横になってもなかなか寝付けない。

 しかし、あのパンチパーマ刑事はなんであんなに居丈高なんだろうか。

 この世界に来て、あんなに暴力的で不愉快な人間に出会ったのは初めてだ。

 暴力を生業にしているサジさんやカワウソのポルさんだって別に普段から暴力的なわけじゃないし、見た目は世紀末救世主伝説のヒャッハーさんな国王親衛隊の人たちだって無駄に人を威圧するわけじゃない。

 ライラちゃんに「アメリカ兵を何人も殺して心が痛まないのか?」という質問を全く空気を読まない白神が投げ掛けたことがあったけれど、それに対する答えは、

「畑を荒らす害獣だったら耳を撃ち飛ばすだけにしてるけど、人を襲ったら殺すだけ。問題無い」

 というものだった。

 でも、ライラちゃんは決して無駄に誰かを威圧したり、たとえ害獣相手でも蔑んだりはしない。

 それに比べて……、パンチパーマ刑事の事を思い出すたびに本当にイライラする。

 あんな奴はいつか僕の攻撃魔法で粉々にしてやりたい。

 苛ついた僕は寝転がったまま枕にパンチを叩き込む。

 情けない程軽いパンチだ。

 自慢じゃないが、体術には自信が無い。たまに首都警の訓練に混ぜて貰ってはいるが、いつも途中でダウンして見学に回っている。

 でも、勇者村での襲撃で、魔法防御だけではなくある程度は体力任せの回避が出来た事を考えると、日本にいた頃よりはずっと動けるようになっているのかもしれない。

 それで思い出した。

 3Dチェスをやっていたはずの小太りの男だ。

 立ち上がって僕とパンチパーマ刑事を仲裁するまでの動きが全く見えなかった。

 サジさんやライラちゃんも凄い動きをするけれど、それとは全く違う。

 何か別の空間を通り抜けて迫ってくるような、ヌルリとした気持ちの悪い動きだった。

 まるで、こっちが引き寄せられているような不気味な感覚だ。

 高校時代に何故か流行った、「北朝鮮流、縮地の術!」と言って下駄箱の手前に敷いてある泥拭きマットに誰かが乗った瞬間に、思いっ切り引っ張る悪戯を思い出した。

 もしかしたらそういう、空間を圧縮したり相手を引き寄せる魔法なのかもしれない。

 今度サジさんと連絡がついたら聞いてみよう。

 そこまで考えて、喉の乾きに気付いた。

 よく考えたらプンスカ怒って寝室に来たけれど、それまで水分を摂っていなかった。

 冷蔵庫にはキングマートブランドのビールがたっぷり突っ込んである。

 異世界転生優待カードで無料で手に入れて、空っぽになったガレージにもたっぷり積み上げてあるのだ。

 カロリーも摂れるし、眠れるし、水分補給も出来る。

 完璧な飲み物だ。

 僕は灯りを点けて部屋を出た。この倉庫転用の事務所は二階が居住スペースになっている。

 三階まであるのだが、階段を上がるのがかったるいので誰も使っていない。

 たまにマサムネとクロが駆け上がって遊んでいるくらいだ。

 ともあれ、ビールだ。

 このグールズバーグでは(ヒト)種に関しては一六歳が成人年齢なので、酒もタバコも問題無い。

 僕の意識は完全に一階の冷蔵庫にたっぷり詰め込まれたビールだけに向かっていた。

 飾り気の無い鉄の階段をカンカンと音を立てて降りてゆく。

 最後の三段だと思った瞬間に、僕の体を何かが貫いた。

 痛い。いや、熱い。

 右の肩口から入った灼熱の槍が左の腰に抜け、体を内側から焼き尽くそうとしている。

「あがががっっがっあああ」

 意味をなさない呻き声が勝手に口から漏れる。

 死ぬのか?

 多分……。

 死ぬ……?

 意識は急速に遠のいていく。

 僕は……、死んだ。

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