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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第十六話 社長、見捨てられる

 結局、僕が『証拠不十分』という事で釈放されたのはそれから二日後の事だった。

 所持品を返却されて警察署を出る。

 意外な事に拷問もされなかった上に、一応粗末な物だが食事も水も出た。

 気掛かりなのは、結局誰も身元引受人にもなってくれなかったし、面会にも来てくれなかった事だけれど、きっと何か考えがあっての事だろう。

 社会信用スコアがガタ落ちになった身分証カードを使って自動運転タクシーに乗り、探偵社に帰る。

 事務所のドアに手を掛けると、鍵が掛かっていた。スマホで時刻を確かめると、営業時間を数分過ぎたところだ。

 盛大な出迎えを期待していたわけじゃないけれど、流石にちょっとガックリ来る。

 ポケットをまさぐって鍵を取り出し、ドアを開けた。

「おーい。帰ったぞ」

 返事が無い。

 なんだか胸騒ぎがした。

「ただいまっ!」

 返事は無い。

 執務室に飛び込んだが、誰もいない。

「おーい」

 返事は無い。

 ガレージに通じるドアを開ける。

 ミニバンもATVもバイクも無い。

 完全に空っぽだ。

 鉄でできた階段を駆け上がった。

 二階の居住スペースの個室を片っ端から覗き込む。

 ベッドやタンス、本棚のような大きな家具はそのままだが、布団や枕までごっそり無くなっている。

「なんだよ、みんな。悪い冗談はやめろよ」

 自分の声がまるで遠くのスピーカーから響いているように聞こえた。

「おおい、何してんだよ。明日も仕事だぞ」

 僕の声はだだっ広い倉庫に虚しく響いた。

 一階に降りて、執務室に入る。

 さすがにパソコンなんかは残っているが、皆が机の上に飾っていたフィギュアや猫じゃらしなんかのオモチャは一つも残っていない。

 僕は事務椅子にどっかりと腰を下ろし、背凭れに体を預けた。

「マジかよ……」

 視界の中で白っぽいものが机の上から床にヒラヒラと落ちてゆくのが見えた。

 僕は拾い上げて、そこに書かれた文字を読んでみる。


 今度という今度は愛想が尽きた。

 皆は辞めて出ていくからな。

 その我儘が本当に鼻につくって前から思ってたし、

 何より慢心し過ぎだろ。

 もう沢山だ。

 これ以上、大事になるんだったら、

 俺達はもう大丈夫だってわかるまで姿を現さないぞ。

 お客のミリアム夫妻も怒ってるし、ちゃんと責任を取れ。

 本当にお前は屑だ。


 女の子ぽくて、白神の字じゃないような気がするけれど、白神が書きそうな内容だ。

 字体は吉村さんみたいだ。

 あの馬鹿、そろそろ日本語が書けなくなって吉村さんに代筆してもらったのか?

 しかし、何にせよみんなが俺を見捨てたのは間違いない。

 誰も頼れない異世界で仲間にも見捨てられて、これからどうやって生きていけば良いのか全くわからない。

 思い付いて電話を掛けてみる。

 サジさんなら何とかしてくれるんじゃないかと。

 そして、首都警に電話は繋がったが、サジさんもラインハルトさんも長期出張中で、携帯も繋がらない所にいるらしい。

 詰んだ。

 俺、詰んだ。


矢巻くん最悪の時期の到来です。

仲間が頼りになるのはジャ○プ漫画だけ!

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