第十五話 社長、窮地に陥る
バトル書いてると筆が進みますが、話は進みません。
極彩色の鎧を身に纏った剣士が僕の真後ろから脳天を狙って剣を振り下ろすところだった。
とっさに避けつつ全身に薄い防壁を展開する。
左手首に嫌な感触が走った。
グジュッっという音を立てて骨が砕ける。
痛みは後から来た。
「最強の勇者でありながら魔王に心奪われた者よ! 天誅!!」
色々と突っ込みどころ満載の台詞を叫んで、極彩色剣士が横薙ぎに第二撃を放つ。
僕はステップバックしてなんとか躱した。
治癒魔法を掛けている余裕も無いので、左肘から先の神経伝達を遮断し、少し冷静になって相手を睨み付ける。
アニメでは赤やら青やら緑の配色じゃないと見栄えがしないだろうけれど、現実にそんなデザインの鎧を見せられると思わず笑ってしまう。
真っ先に連想したのが、南国のよくわからない鳥が求愛行動をしている姿だ。
それに僕が魔王に心を奪われているって? 多少マイケル・ジャクソ○に似ていると言っても、オネエ言葉で喋る子煩悩な中年男性だ。悪いけどそっちの趣味は無い。
そんな事を考えながらジリジリと間合いを取り、遮蔽物になりそうな木箱の陰に隠れる。
「逃げる気か! 卑怯者!!」
叫び声とともに、左右から攻撃魔法が襲う。
火属性と水属性の魔力の塊が同時に僕を挟み込んだ。
水蒸気爆発で盾にしていた木箱の山が弾け飛び、中身の野菜やら布類が宙を舞う。
ある程度予想して着弾点から一歩下がった僕は無傷だ。
一瞬遅れて僕の真正面に飛んできた矢を、魔力付与したジャガイモで受け止める。
「チェストー!」
もう何でもありだ。
どう見てもハリウッド映画に出てくるようなサムライが叫び声とともに、刀を叩き付けてくる。
お前は金髪の薩摩藩士か?
僕は先程キャッチした矢に魔力を籠め、やけにゴツい刀を受け止めた。
日本刀の形をしているだけなのか、それともこちらの魔力が勝ったのか、刀は中程で折れて切っ先が宙を舞う。
僕は木の陰からチラチラと様子を伺っていたマサムネに親指を立てて合図した。
日本等の断片がキラキラと光る風に弾かれ、剣士の鎧の隙間を縫って腹に突き刺さるのが見えた。
僕は右手に持った矢でサムライを滅多打ちにする。
技など何もない。魔力頼りの力技だ。
前に魔力が暴走した時程ではないが、身体強化と矢への魔力付与はかなり強力だ。
やってて良かった現代魔法。
壊れた人形のようになったサムライと、腹に刀の切っ先が突き刺さった剣士はピクリとも動かない。
魔法使いとアーチャーがいるはずだが、いつの間にか気配が消えている。
マサムネはまた見えなくなっていた。どうやら鎌鼬を放った後にさっさと移動したようだ。
「ヒッ!」
極彩色剣士の傷の具合を見に行った巨乳ヒロイン枠魔法使いが悲鳴を上げた。
振り返るとガタガタと震えて横たわる剣士を指差して何か言おうとしているところだった。
「どうしたんだ?」
「し、死んでる……」
僕は足元がフワフワと頼り無い感触になっていくのを感じた。
まさかと思い、倒れたサムライの肌に触れてみる。
脈が無い。
体温も急速に下がっていっているのか、なんだかひんやりとしている。
「し、死んでる……」
僕はその場にヘタリ込んだ。
まさか人を殺してしまうなんて思っていなかった。
これから僕はどうなってしまうんだろうか。
「警察だ! 警察が来た!!」
遠巻きに眺めていた村人たちの間からそんな声が漏れ聞こえてくる。
乱闘騒ぎが通報されたにしてもやけに早い気がするが、いかにもお硬いイメージの制服に身を包み、銃やら警棒を構えた警官が僕の周りを取り囲んでいた。
「矢巻総一、殺人の現行犯で逮捕する!」
手が後ろに回され、何重にも魔力が付与された手錠が手首に掛けられるのを僕は右手だけで感じた。
さて、矢巻の運命やいかに。
マサムネは逃げました。




