第十四話 社長、危機に陥る
僕は勇者の村に来ている。
正直気が重いが、政府からお金を貰っている以上、定期的に啓蒙活動や監視をしなければならないのだ。
村人とすれ違うと一瞬恐怖の表情を浮かべた後、物凄い作り笑いになるのが辛い。
僕何かやっちゃいました、なのである。
いまだに魔王退治のために中世と言いつつ近世っぽい暮らしをしつつ、恥ずかしい技名を叫んで修行に明け暮れているこの村の転生者たちに関しては、政府も手を焼いていた。
死者こそ出さなかったものの、圧倒的な魔法で村の実力者を全て叩きのめした僕が、この村の実質的な支配者になっているのは仕方のない事だろう。
「ぐあ~~! 気が重い」
精神安定のために、僕は肩に乗っかったマサムネをわしわしと撫でる。
マサムネを連れてくるのは、狂戦士と化した僕を止められるのはこいつだけだと村人たちが認識しているからだ。
「しゃちょー、落ち着いて。」
マサムネが僕の耳を甘噛みしながら言う。
肩に爪が食い込んでちょっと痛い。帰ったら切ってやろう。
村の中心にある広場に着くと、幾つかの勇者パーティが出迎えてくれた。
騎士団も二つほどいる。
毎度思うんだが、こいつら誰に仕えている騎士団なんだろうか。
「楽にしてくれ」
「「イエス! マイロード!!」」
だから、いつ僕はロードになったのだ?
「いつもの視察なんだが、特に変わったことは無いね?」
「……」
なんでそこで黙る? メチャクチャ嫌な予感しかしない。
「何かあったの?」
皆、顔を見合わせてヒソヒソと話し始めた。
そういうのやめて。
むちゃくちゃ怖いから。
「えー、おっほん」
わざとらしい咳払いをすると、全員が一斉にビクッと体を震わせる。
いや、そういう反応もちょっと傷付くから。
たしかに一歩間違えば大虐殺レベルの大暴力を振るったのも事実なんだけど。
「あ、あの~」
いかにも異世界ファンタジーの巨乳ヒロイン枠といった容姿の魔法使いがおずおずと口を開く。
君の事は憶えているよ。
メチャクチャ凄い上級魔法を撃ち込んでくれたんで、反撃したら手足がありえない方向に曲がってしまった人だ。
どうやら全快して後遺障害も残らなかったようで何より。
あ~、でも僕のヒロインには絶対になってくれないんだろうな。
すっごい震えてるし。
めちゃくちゃ好みなんだけど。
「いいよ、続けて」
敢えてぶっきら棒な口調で返す。
もとより立っていないフラグが更にバキバキに折れたのを感じた。
最悪だ。
「新しく転生してきたパーティが、長様に反抗を企てているという情報がありまして……」
厄介事は御免だ。
マサムネが肩から腰を伝ってするりと地面に降り立ち、トットットっと軽やかな足取りで森に駆け込んでゆく。
ずるいぞ! さっさと逃げやがって。
「私共も抑えてはいるんですが……キャッ!」
僕はとっさに彼女の視線を読んで振り向いた。
「キエェェェェェェッ!」
正気の人間が発するとは思えない叫びとともに斬撃が襲う。
平穏な日々の終わりの始まりです。




