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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第十話 探偵、何かに気付く

「で、秘宝は見付かったのか?」

 ミルフィーユちゃんから降りてきたサジさんが聞く。

「全然手掛かりナシです。何かわかりませんか?」

 サジさんは無言で首を振った。

「秘宝? ライラの村にもそんな伝説があって、たまによそ者が騙されてやって来てたよ」

 アルの頭から跳び下りて、十メートルくらいの距離をほんの数歩で駆け寄ってきたライラちゃんが、小龍の手綱を受け取りながら言う。

「アレキサンダーの秘宝とか言って、この目を見せるとみんな騙されるって」

 よく見るとライラちゃんの目は微妙にオッドアイだ。右目は緑がかった青、左目は少し紫がかっている。

「うわ! ホントだ! すごいよ!!」

 ライラちゃんの目を見た吉村さんが興奮している。

「村の人、みんなこんな目をしてた。よそ者は喜んで割れた瓶を高く買ってくれたよ。Win-Winっていうやつ」

 吉村さんによれば、かなり史実に基づいた話ではあるらしいが、思いっ切り張本人がインチキだと認めているのだから、古代の秘宝なんてそんなもんだろう。

 しかも、Win-Winの使い方が微妙に間違っている気もする。

「一応、お宝はあるけど、今掘り出しても大した価値じゃないって村長も言ってたよ」

 貴金属や宝石ならともかく、工芸品なんかだったら考古学的な価値はあっても実用品としては役に立たないだろう。

 何か早口でサジさんに告げ、マサムネがアルに乗って飛び立ったのが見えた。自主練は大いに結構。どんどんやってくれ。

「サジさん、ワイバーン運輸についてなんですけど、何か情報ありますか?」

 ライラちゃんの話を聞いていて、少し思い付いたことがあったので聞いてみる。

「サイトにある会社の沿革読めば何千年も前の事まで書いてあるぞ。地球と違ってそんだけ昔でもけっこう映像資料も揃ってる」

 後で見てみよう。

「そうだ、これは公然の秘密なんで一つ言っとくけど、元々ワイバーン運輸は人類側に送り込まれた間諜だ」

 白神が両手を組み合わせて人差し指を突き出した。お前は小学生男子か!!

「スパイ、ですか?」

 サジさんは頷く。

「魔王軍の兵站部隊とワイバーン運輸は元々同じ一族でな、戦争中はバレてなかったけど、今じゃ誰でも知ってる」

 物凄く重大な話のようだけれど、企業イメージなんかに問題は無いのだろうか。

「数では負けてた魔王軍を人類側と互角の戦いに導いて、休戦協定にまで持ち込んだ立役者とも言えるしな。世界にとっちゃ救世主みたいなものかもなあ」

 軍の展開先や構成が事前にわかるのだから、ある意味チート級の戦力だ。

「両サイドの流通と情報に通じていた自分とこの組織さえ掴んでいない情報を探せとは、ミリアムの奴も随分面倒な依頼をしたもんだな」

「ありがとうございます! サジさん。おかげで捜索の方針がちょっと決まってきた気がします!」

 サジさんは少し驚いたような表情を見せたが、すぐにニヤリと笑う。この人の笑顔、魅力的なんだけど物凄く怖いんだよなあ。

 白神は全く何もわかっていない顔でポカンとしている。まだ両手はカンチョーのポーズのままだ。

「正攻法で攻めても何も出なさそうなんで、むしろもっとずっと正攻法で行きます」

「それで何か出てくるかどうかもわからんが、世界中回って聞き込みやるよりはずっとマシだろうしな」

 初代魔王は百年も生きたらしいけど、その後の九千年分の調査をするのに比べればほんの百分の一で済む。関係者だってずっと少ないはずだ。

 まずは魔王城と図書館巡りだな。

 ちょっとニヤついていると、携帯が鳴った。

「はい、矢巻です。っとポンコ、落ち着いてくれ。なに!? 山本さんが倒れた?」

 慌て過ぎていて要領を得ないが、アンドロイド秘書の山本さんが突然意識を失って倒れたらしい。

 空を見上げると、アルとマサムネは楽しそうに飛び回っている。

 アルに飛んでもらえば一瞬で事務所まで着くだろうが、せっかく乗り気になってきたのに邪魔するのも悪い。

 サジさんの方を見る。ダメだ、言葉の通じない炎龍を乗りこなせる気はしない。

「ヘイ! ヤマキっち、乗っていくかい?」

 ライラちゃんの声だ。

 心臓に悪いから毎回後ろから声を掛けるのは止めて欲しい。

 振り向くと、ごついビッグバイクのシートに膝の裏側を引っ掛け、やっと反対側の足が地面に着いている危なっかしい状態のライラちゃんがいた。

 片手でヘルメットを投げてよこす。

「免許は?」

「ある。大丈夫」

 この世界には免許取得後一年は二人乗り禁止なんて法律は無い。技能さえ備わっていれば年齢制限も無いし、ネコやタヌキだって免許を取れる。

「じゃあ、お願いするかな」

 タンデムシートに跨って、腰に手を回そうとしたら思いっ切りはたかれたので、仕方なくシート脇のグラブバーを掴む。

「飛ばすから、落ちるな」

 ライラちゃんが言い終える前に高々と前輪を跳ね上げて、ビッグバイクは猛烈な加速を開始した。

アフターコロナを見越した仕事の準備をしつつ今の仕事も手を抜くなという無茶振りのおかげで、更新ペースがゆっくりになっていますが、ちゃんと続きます。

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