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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第七話 龍の子、飛ぶ

 僕たちは首都警の訓練場に来ていた。

「一日千圓な。貸し切りじゃないけど特別割引だ。レースのルールについては暇な時に教えてやるし、その辺にいる奴に聞いてもいい。そっちは無料(タダ)だ」

 金取るのかよ、という言葉が喉元まで出掛かったけれど、民間のフィールドを借りればもっと掛かるし、領収書も切ってくれたのでひとまず黙っている事にする。

「まあ、投資ってのは大事なもんだ。俺なんか日本にいた頃はスーツ一揃いにウン百万掛けてたぞ」

 まったくこの人の前職は想像もつかない。

 スーツにそれだけお金を掛けるって、ヤクザか何かだろうか? それともホスト? ヤクザはともかくホストはあり得ないだろう。

「お前らが出るのは恒例の武道大会の予選ついでの余興みたいなもんだ。気楽にやれ。大会の予選には俺やミリアムも出るけど、こっちはガチだからな」

 戦争が長く続いたせいで、いまだに武道大会は人気らしい。

「あと矢巻、魔法戦の予選もあるけど、悪い事は言わんから今回は見送っておけ。ボロ負けしても下手に勝ち進んでもマイナスイメージにしかならん」

 サジさんの言葉に僕は頷いた。暴走状態だったとはいえ、勇者の村を壊滅させて伝説を作ったのは間違いない。

 そんな僕が一回戦負けしたら目立ってしまうし、逆に勝ち進んでも一般市民からは脅威としか思われないだろう。

 出てみたい気もするけれど、経営者としての立場を考えるとNoだ。

「わかってますって。じゃあ、鉄砲と信号弾借りていきますね」

 若い隊員から信号拳銃を受け取る。中折式の単発銃だ。

「早く自前の買っとけよ。日本と違ってこっちじゃそいつは無許可で買えるしな」

「わかりました。業務にも必要そうなんで近いうちに手に入れときますね」

 僕は飛びたくてウズウズしているアルに合図した。サジさんたちは建屋の方に戻っていく。

「では、行きますか」

 既に赤龍の姿になっているアルが力強く羽ばたく。砂埃を巻き上げて浮き上がった。

 騎乗するメンバーは問題無いだろうが、地上でサポートする側はマスクやゴーグルが必要そうだ。信号拳銃と一緒に買い物リストに入れておこう。

 アルはしばらく同じ場所でホバリングしていたが、吉村さんが小さな旗を振ると同時に全力加速を始めた。

 速い! 流石は脳筋龍だ。あっという間に訓練場の端まですっ飛んで行って、見えない壁に「ぽよん」と弾かれて墜落した。

「あ」

 訓練場と外部との境界には流れ弾や魔法が飛び出さないように魔導防壁が張ってあるのだ。言うの忘れていた。

 僕たちは乗り入れていたATVでアルのもとに急いだ。

「大丈夫か? アル」

「何なんですか、これ。ぶつかっても別に痛くなかったけど、ビックリして落ちちゃったじゃないですか」

「ここ、首都警の訓練場だろ。危ない魔法や銃弾が飛び出さないように防壁が張ってあるんだ。ごめん、言うの忘れてた」

 幼児の姿になったアルが、えい! えい! と自分がぶつかっった壁の辺りを叩いてみている。

「なんにもないよ?」

 訓練場のフェンスの手前十メートルくらいの所から障壁が張られていたはずだ。

 もっとも、ある程度以上の速度か高エネルギーの物以外は素通りさせるので、普通の鳥くらいなら通り抜けてしまう。

 アルにそう説明すると、なんだか得意げな顔になった。

「つまり僕は銃弾くらい速いって事だね」

 たしか時速三百キロくらいで障壁に引っ掛かるよう設定されているはずだが、機嫌を損ねてもいけないので黙っておく。

「そうだね。だいたい十五メートルくらい手前で引き返すようにしようか。あと、真っ直ぐ飛ぶだけじゃなくて地上の目印見ながらジグザグに飛んでみて。なるべく正確にね。黄色い目印の所で急降下して着地、合図したら再スタートよろしく」

 アルに説明した後、訓練場内を回って三角コーンを幾つか立てていく。

「じゃあ、もう一回やってみようか」

 凄い! ジェット戦闘機の時代になっても竜騎兵部隊が生き残っている理由がよくわかる。

 遷音速での急降下と地上数センチでの静止、信号弾の合図に合わせての再加速はまるで下手糞な特撮かCGを見ているようだ。

 物理法則を無視したような機動を見ていて、ふと不安になる。

 乗り手は誰にしようか?

「人を乗せるには鞍も買わなきゃね」

 吉村さんが気が抜けた声でボソッと言った。

 ジェイソンさんから提案された時は、バッサバッサと飛んでいくドラゴンに優雅に跨る姿を想像していたが、実際の動きを見たらとんでもない。

 鞍だけじゃなく、耐Gスーツが必要だろう。

 どんどん出費が嵩んでゆく。

 交際費とか広告費で計上できるんだろうか? 近いうちに税理士に相談してみよう。

「そもそも、アレに誰が乗る?」

 白神が青褪めた顔で聞く。

 僕は視界の端でクロがコソコソ逃げ出すのを捉えた。

 そして……、ATVのシートでキョトンとしているマサムネに視線が集中する。

「イタチ用の耐Gスーツがあるかどうかお店の人に聞いてみよう」

ポンコはお留守番担当です。

サブタイトルを「竜の子」→「龍の子」に修正しました。

(2020/05/11 23:42)

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