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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第六話 探偵、誘われる

ちょっと間が開いてしまいましたが、第六話です。

 ――次の日。

 僕はまたジェイソンさんの家に来ていた。

「成功報酬についてはこんな感じでお願いします。科学省管轄になる物品だったり、山一つとか所有が難しい物だったりした場合の条件を付け加えさせて頂きました。報酬額についてはジェイソンさんの方で決めて頂いて結構です。正直、想像もつかないので」

 ひとまず、昨日中に送れなかった事を侘びつつ、契約書の細部について相談しているのだ。

 ジェイソンさんはちょっと難しい顔をしている。

 あれ? 僕何かやっちゃいましたか!?

「ええと、山一つくらいなら持ち主から買い取りますけど。でも、お国に召し上げられるのは厄介ね。じゃあ、見つかった場合の金額はこんな感じで。私が手に入れられるかそうじゃないかは探偵さんには関係の無い事ですものね。あと、もう一つ条件を付け加えさせて頂いても良いかしら?」

 さすが大富豪だ。山一つくらいなら僕らがチョコレートバーを買うくらいの感覚なのだろう。

 しかし、もう一つの条件ってなんだ?

「見付からなくても、それまでの調査結果に満足が行けば、それに応じた金額をお支払いします。もちろんこれに関しては金額未定ですが、契約終了時に確定でよろしいですね」

 思ったより美味しい話だ。

「願ってもないご条件です。ありがたく受けさせて頂きます」

 ちょいちょいと契約書に追加して、ひょいとジェイソンさんに送る。

「これで大丈夫です。問題ありません」

 ジェイソンさんは自分の端末から電子署名入りの契約書を送り返してきた。契約成立だ。

「ところで、サジとも話したんですけど……」

 ジェイソンさんがサジさんの事を気安く呼び捨てにしている。今日は吉村さん連れて来なくて良かった。彼女はサジさんの事になるとちょっと神経質になるのだ。

「見立て通り誠実な方々みたいなので、ちょっと色々お手伝いさせて頂きたいと思ってますの」

 事業拡大キターーー! と思ったが、僕はあくまで冷静を装う。

「有り難いです。元はと言えばクロの不始末が原因なのに」

 僕は頭を下げる。

「不始末なんてそんな。子猫ちゃんたちのお陰で科学省と太いパイプが出来た事ですし、こちらこそ感謝しなければ」

 この人、趣味は変だけど、根っからの商売人だ。多分クロの子供の中の一人? は良いモルモットになるのだろう。猫だけど。

「それで、今度はどんなお話ですか?」

 ちょっと警戒気味に聞いてみる。あんまりこちらに不利になるような話であれば断らなければならないだろう。

「新興の探偵社さんにとってはいいお話だと思いますよ。あちこちにコネも出来るし宣伝効果も期待できるんじゃないかと」

 僕はパーティーとか苦手だぞ。下手したらダンスとか踊るんだろ? 勘弁して欲しい。

「元々いらっしゃった世界では、社交界のパーティーなんていうのがあったみたいですけど、こちらでは長く戦争が続いたせいで貴族階級もすっかり無くなってしまいましたし」

 社交界とか、むしろ僕にとってはこの世界よりずっと異世界ファンタジーなのですが、正直に答えて良いのかどうかわからないので、軽く頷くだけに留めておく。

「わが家も昔は爵位なんか持っていたらしいのですが、今では特別に文化的な価値が有るような家柄以外は認められないとかで、数百年前に失くしてしまいました」

 たしかに、この世界に来てから貴族だのなんだのっていう話はあまり聞かない。それどころか、国王と魔王以外にそんな称号が付いている人を見た事が無かった。

「皆様方の世界の異世界ファンタジーでは、異世界転生するとだいたい王族に呼ばれて、貴族のパーティーに招かれるのが定番じゃないですか」

 さすが昭和のブリキ玩具を蒐集しているだけある。日本のラノベ事情にもだいぶ詳しいようだ。サジさんによれば、科学省放出の昭和玩具は軽く庶民が家を一軒買えるくらいの価値らしい。

 僕たちがガベージで見掛けた大量の「くいだおれ人形」もいつかジェイソンさんのコレクションに加わるのかもしれない。

「たしかに、そういうファンタジーものが好まれていた傾向はありますね。僕はそういうパーティーとか苦手なのでちょっと遠慮したいのですが」

 ジェイソンさんはふふっと笑って話を続ける。

「ご安心を。こちらではそういった上辺の取り繕いばかりの交流はあまり好まれませんの。何せ九千年近くも戦争を続けていたわけですから、血縁より実力、身分より拳の方が物を言いますわ」

 さらっと怖い事を言う。腕っぷしについても僕はあまり自信が無い

 。勇者の村で無双した時はたしかに物凄い能力を発揮できたけれど、あれは転移者の記憶封印が開放される時の一時的な物で、今同じ事が出来るかと言われたら自信が無い。いや、ぶっちゃけ出来ないだろう。

「そういう荒事もあまり得意ではないんです。サジさんの弟子にも軽く捻られるくらいで」

 そう言えばライラちゃんは元気だろうか?

 僕の頚椎を真っ二つにしてくれた責任を取って結婚してくれないかな?

「そういう謙虚なところも気に入っていますわ。何せ、ここのところ転生してきた方々って、『いけ好かない』『自意識過剰の』『己を知らないクソガキ』ばかりでしたので」

 なんか、滅茶苦茶嫌な事があったのだろう。

 確かに勇者の村に住んでいるような連中は根拠も無しにこちら側の人々をバカにしているし、こっちの世界の人も動物もゲームのNPCみたいに思っている傾向があるみたいだ。

 一応あの村の治安維持を委託されているので、時々アルとマサムネを派遣して絶対的な実力差を教え込んでいるが、まだまだそういう感覚の連中が多いのは確かだ。

 とはいえ、マサムネの「ファイナルブラスト」に関しては、保健省から苦情が来ているし、さすがに勇者の村の連中も懲りたみたいだが。

「それで、その『クソガキ』じゃない僕たちに提案ってどんな事ですか?」

 ジェイソンさんは横に控えていたネコミミメイドさんに手を差し出す。メイドさんは重厚な感じの蝋印が付いた封筒を手渡した。

「受けるか受けないかはお任せしますが、悪くない話だと思いますわ」

 僕はジェイソンさんから封筒を受け取った。

 ジェイソンさんが微笑む。

「ドラゴンレースに出て頂きたいの」


異世界ファンタジーについてややメタ的なセリフがありますが、リアル現代日本から転生した前提のお話なので。

転生が日常化した世界なら異世界製品マニアもいるだろうし。

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