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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第四話 隊長、契約を語る

話数がズレていたので訂正しました。

第三話→第四話

 宮殿のような首都警の入り口で、無愛想というよりそもそも表情がわからないガスマスク姿の隊員からボディチェックを受け、僕はサジさんの執務室に向かった。

「おう、矢巻か。元気そうで何よりだ」

 サジさんは大量の焼き菓子を前にのんびりと茶を飲んでいた。転生者への対応と対テロなんかの荒事中心の治安部隊なので、基本的には暇なのかもしれない。

 どこからともなく現れたラインハルトことフジヤマ中佐がコーヒーを手渡してくれた。

 一口啜る。

 美味い。疲れが吹き飛ぶようだ。

 朝からクロのしでかした不始末対応に振り回されて、凹んだり悩んだりして精神的な疲労は相当溜まっていた。それが一口ごとにスーッと引いていく。

「美味しいですね。ありがとうございます」

 フジヤマ中佐に言うと、サジさんの前の焼き菓子を勧めてくれた。

「コルドンの更に南のミリタリーベースで作っている豆が手に入ったので、折角なので飲んで頂きたくて。お菓子も焼きたてなので、是非」

 そう言えば、朝から何も食べていなかった。遠慮なく頂くことにする。

 こちらも美味い。フジヤマ中佐の手作りだろう。

「今日はご相談があって参りました。実は『魔王の秘宝』とやらを探すことになりまして……」

 サジさんがブッと吹き出す。フジヤマ中佐も笑いをこらえているようだ。

「矢巻、それ有名な詐欺だぞ。転生者とか転移者を騙して最終的に身ぐるみ剥ぐやつだ」

「詐欺ですねえ。一応、最初にお渡ししたハンドブックにも書いてあったと思いますよ」

 にべもない態度だ。

 胡散臭い話だとは思ったけれど、そんなオチだったとは。

 だが、話の出所を考えるとちょっと不自然だ。

「あの……、転生者とかじゃない人がその詐欺に引っ掛かったりする事ってありますか?」

 サジさんとフジヤマ中佐が顔を見合わせる。

「無いだろう。常識的に考えて」

「民警の方に確認しないとわからないですが、まず無いでしょうね。幼い頃に幼児向けマンガで読みましたが、少年誌で魔王の秘宝なんて陳腐な物を題材にしたら、あっという間に不人気投票で打ち切りでしょう」

 色々と酷い言い方だが、グールズバーグ生まれのフジヤマ中佐が言うのだから間違い無いだろう。

「たとえばですね、全国規模の物流を担ってる会社のオーナーが、魔王の秘宝探しを探偵に依頼するなんて話があるとしたらどんな意図があるんでしょうか?」

「ワイバーン運輸か。ジェイソン家だな。ミリアムは微妙なセンスの骨董趣味がある変わりもんだけど、詐欺に引っ掛かるような間抜けではないし、全く想像もつかんなあ。しかし矢巻、守秘義務あるんだからポンポン話すなよ」

 一発で言い当てたのはそっちでしょうと言いたかったが、正論でもあるのでぐっと飲み込む。

 しかし、ほとんど軍隊みたいな治安部隊で民間の契約なんかに通じている必要も無いはずなのに、この人はえらく法務関連について細かい事を言う。

 転移前の日本ではどんな仕事をしていたんだろうか。

 それで思い出した。

「そうだ。もしですよ。もし万が一見つけ出したら成功報酬っていくらぐらいにしたらいいでしょうか?」

 サジさんもフジヤマ中佐も難しい顔をしている。

「そもそも、国宝級の代物で歴史上の大発見になるだろうから、物自体に値段は付かないな。所有権は放棄する前提で考えなきゃダメだ」

「そうですね。入手したとしても然るべき研究機関に寄贈する形になると思いますよ。そもそも、物が何か、実態が有るのか無いのかもわからないですが」

「成功報酬を二つに分けて記入するんだ。まず達成した事に対する報酬と、見つけた物に対する顧客満足度に応じた報酬だな。どっちも向こうに決めてもらうしか無いが、満足度の方はどうせ今はわからないから、達成後に応相談って書いとけ」

 これからも契約関連で迷ったらサジさんに相談に来よう。

「依頼は受けるんだな?」

「歴史ある運送会社の代表があからさまな詐欺話で一介の探偵を陥れようとしているとは思えませんし、騙されているというのも考え辛いですから」

 サジさんが頷いた。

「で、まだ何か頼みたい事があるんだろ?」

 僕は頷いた。

「はい、魔王との面会のアポを取ってください」

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