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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第三話 依頼者、語る

「魔王の秘宝を探して頂きたいの」

 僕は耳を疑った。そんな大仰な、いや、胡散臭い話だとは予想もしていなかったからだ。

 精々、ミケが攫ってきた小鳥の飼い主を探して代わりに謝罪するとか、ジェイソンさんの婚約者の身元調査だとかその程度だと思っていたのだ。

 ジェイソンさんに婚約者がいるかどうか知らないけど。

「随分とスケールの大きなお話ですが、ウチのような零細でお役に立てるかどうか……」

 誠実な態度を見せるのは大切だ。実際問題、九千年以上前の秘宝なんて、探偵社じゃなくて考古学者の領分だろう。

 いや、当代の魔王の秘宝だとしたら握手券付きCDとかか?

「そういう正直なところも気に入っているんです。もちろん、探し出して持ってきて頂くのが一番ですけれど、手の空いた時に情報を集めて頂くだけでも宜しいので」

 情報収集程度なら出来ない事も無いだろう。

「それで、何かわかっている事はあるんですか?」

「いいえ、ほとんど何も。でも、とっても小さくて、とっても大切な物だと聞いています。もしかしたら、手に入れた人によっては全く無価値かもしれないとも」

 情報が少なすぎる。だが、仕事の選り好みをしているほど経営に余裕があるわけでもない。

 そもそも、何だかわからない物なんだから、成果が上がらなくても経費だけきちんと計上して貰っておけばいいだろう。

「承知致しました。今日中に契約書を送りますので、ご確認頂いて承認して頂ければ明日から取り掛からせて頂きます」

 僕はソファーから立ち上がり、頭を下げた。

「それでは、私は先にお(いとま)させて頂きます。養子縁組についてはこれから手続きを進めさせますので、宜しくお願い致します」

 クロに必要な手続きをしてから戻るように言って、お目付け役として吉村さんと白神を残していくことにした。

 こっちの世界じゃ何でもオンラインで片付くから僕も事務所に戻る必要は無いのだけれど、契約を交わす前に少し確認しておきたい事があった。

「じゃあ、後は頼んだぞ」

 三人に声を掛け、ジェイソンさんに挨拶してから徒歩で屋敷を出る。

 配車アプリから呼んだ自動運転タクシーは既に門の前で待機していた。

 探偵社に戻るように告げて、僕はタブレット端末で契約書の雛形を呼び出し、必要な欄を埋めてゆく。

 経費は一時間あたり五百圓プラス実費といったところだろう。

 もし見付けた場合については、成功報酬としてそれなりの額を貰う事にしたいが、ひとまずそこは空欄にしておいた。

 魔王の秘宝の価値なんて全くわからないし、所有権についてもどうなるか予測もつかない。

 入手して買い取りをお願いするような形ではなく、発見して後は依頼者に判断を任せる契約にしておいた方が無難だろう。

 概ね出来上がったところでタクシーが事務所の前に停まった。

 身分証カードをかざして精算を終えて事務所のガレージを開ける。

 事務室とガレージの間のドアからポンコがヒョコッと顔を出した。

「特に何も無かったかな?」

「身元調査の依頼が一件。マサムネに行ってもらってる。それで脳波対応のミニドローン一個借りてるね」

 この世界は基本的に社会信用スコアである程度の素行はバレてしまうが、それでも婚約者や被雇用者にそれ以上の安心を求める人たちは意外と多い。プライバシーの問題もあるので、個人的な性癖や趣味については評価の対象にならないのも一つの理由だろう。

 つまり、女装して女湯に入れば犯罪だし、当然社会信用スコアも下がるが、女装して外を歩くだけなら何も問題は無い。

「じゃあ、その件はマサムネに一任しておいて。僕はちょっとサジさんに会ってくるよ」

 元々フェレットはウサギ狩りや配線工事に使われていた動物だ。隠密行動は得意だろう。

 休憩中はドローンを飛ばしておけばいいし、バッテリーも街中にある充電ステーションに自動的に戻るように設定しておけばずっと使える。

 ヘルメットとグローブを身に付け、僕は二百ccのオフロードバイクに跨る。

「急ぎの依頼があったら吉村さんに連絡して対応してもらってね」

「うんわかった。じゃあ、いってらっしゃ~い」

 僕は軽く手を振りバイクを発進させた。

やっとモーターのコイルが温まってきました。

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