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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第二章 魔王の秘宝
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第二話 社長、尻拭いをする

「いつ見てもでっけー家だな」

 ジェイソンさんの家の門の前だ。家と言うより屋敷と呼んだほうがいい、いわゆる西洋風のお屋敷だ。

 趣のある石造りの門にはあまりそぐわない外見のプラスチックのチャイムが付いている。昭和に建てられた木造家屋に付いているようなやつだ。しかも配線が剥き出しで、赤と青のリード線が出ている。

 白神が腰に付けた工具入れをまさぐるのが見えた。やめろ! やりたい事はわかるが、これ以上頭痛の種を増やさないでくれ。

 僕はニッパーのグリップのつまんで取り出そうとしている白神を手で制し、ボタンを押した。

 すぐに小さなドローンが飛んでくる。カメラが舐めるように三人と箱罠に入った一匹を見つめる。

「YSY探偵社の方ですね、お待ちしておりました」

 ドローンのスピーカーから声が響くとともに、門扉が音もなく開く。

 前に指示された通りATVを動かし、屋敷の正面入り口の前に停めた。

 ピッタリのタイミングでドアが開き、猫耳メイドが迎え入れてくれる。このメイドさんは猫が化けているのではなく獣人だったはずだ。

 客間に通され、暫し待つ。

 元々は洋風の洒落た部屋だったのだろうが、壁には高そうな額縁に入ったアニメや特撮のポスター、棚にはフィギュアや昭和風玩具が並んでいる。

 現当主のミリアム・ジェイソンさんの趣味だと聞いたが、全くちぐはぐだ。

「お待たせしました」

 ジェイソンさんがメイドを連れて入ってきた。メイドさんは大きなケージを抱えている。

 ケージの中には三毛猫と、黒い塊が沢山。

「この度は、誠に申し訳ありませんでした。責任の取り方に関しましては、話し合いをさせて頂き、お互いに納得が行く形にさせて頂きたいと考えております」

 僕は一気に喋って頭を下げる。

 頭を下げたまま、白神が持っている箱罠をちらりと見た。クロは僕からもメイドさんが捧げ持っているケージからも目を逸らしている。この期に及んで責任逃れを考えていそうだ。後で絞めてやらなければ。

「頭をお上げください。立ち話もなんですし、お掛けくださいな」

 僕は姿勢を正し、もう一度軽く一礼してからふかふかのソファーに腰を下ろした。

 ジェイソンさんは三十代半ば、ややふくよかな金髪の女性だ。おっとりした性格なはずだが、朝の電話の声には少し棘があった。

「クロさんでしたっけ? 彼も出してあげてください」

 白神が渋々箱罠の扉を開く。クロはビクビクしながらそっとソファの上に降り立った。

 メイドさんがケージをテーブルの上に置いて立ち去る。

「朝は電話で失礼致しました」

 なんかだいぶ態度が軟化している。

「クロさん、申し訳ないのですがテーブルの上に移って頂けます?」

 クロがピョコンとテーブルに飛び乗る。ケージの中の三毛猫が嬉しそうに「うなー」と声を上げた。

 ジェイソンさんがケージの扉を開く。

「パパ!」「パパ!」「パパ!」「パパ!」「パパ!」「パパ!」「パパ!」「パパ!」

 黒い塊が八個跳び出してきた。全員父親似だ。子猫の群れにクロがもみくちゃにされている。

 人語を話す子猫は犯罪的に可愛い。吉村さんが悶絶しそうな表情をしている。

「ミケちゃんが妊娠した時はどうしようかと思ったんですけど、家出してしばらく経ってたからそういう事もあるかなって思っていたんですの。産まれたのが黒猫でもクロさんの子供だって証拠も無いし」

 クロの責任逃れ計画は途中まで成功していたようだ。いや、家族計画出来ていない時点で何の計画も無かったのかも知れないが。

「でも、昨日の夜になって『ママ』とか『おっぱい』とか言ってるのを聞いて確信しましたの」

 クロも転生による能力付与が遺伝するとは、流石に予想していなかったのだろう。

 単に欲望に負けて何も考えていなかった可能性のほうが高いが……。

「クロさんの子供だとわかって、流石に驚きましたし、少し怒りも湧きましたけれど、今日お友達に動画を見せたらあっという間に貰い手が決まりましたのよ。とっても可愛いって」

 ああ、それで態度がだいぶ軟化しているのか。僕は安堵のため息をついた。

「ただ、一つだけ問題がありますの。この子たちは『ヒト』という扱いになるそうなので、まずクロさんに認知して頂いて、その後で養子縁組の手続きをして頂かないといけないの」

 クロが「ぐふっ」っというような声を出した。僕は笑いを堪えるのに必死だ。ざまーみろ。

「認知に関しては責任を取って頂く範疇なので費用はお出ししませんが、養子縁組手続きに関してはこちらの都合になりますので当然報酬はお支払い致しますわ」

 クロがテーブルから床に飛び降りた。「うにゃ」とか言って一瞬で変身を終える。お得意のネコミミ執事風イケオジの姿だ。

「承知致しました。この度は私共が至らずご迷惑お掛けし、誠に申し訳ありませんでした。社長以下、誠心誠意お手伝いさせて頂きます」

 いや、私共じゃなくてお前だよ、お前。社長以下がお手伝いじゃないだろ、お前が全部責任取れ!

「きちんと責任を取って誠意を尽くして頂けるのであれば、今後のお付き合いに関しても前向きに考えさせて頂きますわ」

 クロのイケオジ成分でジェイソンさんの態度が更に軟化している。これを利用しない手は無いが、クロの事だからジェイソンさんにも手を出して更に子孫繁栄し兼ねない。扱いには細心の注意が必要そうだ。

「そうね、早速ですけど、新しい依頼をさせて頂いていいかしら?」

 僕は頷いた。従業員を食わせていくにはチャンスは最大限活かさなければ。

 ジェイソンさんが躊躇いがちに口を開く。

「魔王の秘宝を探して頂きたいの」

大風呂敷広げます。

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