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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第一章 グールズバーグへようこそ
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第二十八話 はじまりのおわり

 ぐだぐだになった矢巻が椅子にぐったりともたれ掛かっている。

 さすがに十二時間も風呂に入っていれば当然そうなるだろう。安っぽい入浴剤の匂いはするが、悪臭は完全に抜けたようだ。

「鈴木そ○子か超サイ○人かどっちなんだ?」

 脱色効果もあったらしい強烈な脱臭剤のせいで、矢巻はお肌真っ白、髪の毛は金髪になっている。

「マジ勘弁。冗談言ってる余裕ねえ」

 口から魂が半分漏れ出しているのが見えるようだ。

 ドアを開けてマサムネを抱っこした吉村さんが入ってきた。ライラもちょこちょこと後をついて来る。

 こっちは二人ともお肌ツヤツヤ、プラス一匹は真っ白な毛が銀色に光り輝いている。

「マサムネは偉いね~。お風呂で綺麗になってフワフワで凄く可愛いね~」

 吉村さんがマサムネの毛皮に顔をうずめる。このイタチ、褒められると滅茶苦茶ドヤ顔するんだな。ちょっと憎たらしい。

「で、サジさんは何だって?」

 あのオヤジだったらギルドに矢巻の身分証カードの再発行してもらいに行ってるはずだ。元の身分証は勇者の村で紛失したか服と一緒に焼かれたかのどちらかだろう。

「待たせたな」

 サジが人差し指と中指で挟んでいたカードをピッと矢巻の方に弾く。矢巻は受け止めようとノロノロと手を上げるが間に合わずカードは鼻に直撃した。うへっと呻き声を出し、矢巻は空中でカードを何度もお手玉してやっと受け取る。

「残念ながら、良い知らせしか無い。心の底から残念だ」

 矢巻の持っているカードを覗き込む。吉村さんもライラも興味津々で覗き込んでいる。

 近い。

 二人とも凄くいい匂いがするんだからあんまり寄るな。流石に変な気分になる。残念ながら矢巻はしばらく嗅覚が無い状態だろうからこの天国も味わえないのだろう。

「社会信用スコア五十三万!?」

 思わず声を上げてしまう。あれだけの大暴力事件を起こしたのにどうして信用スコアが上がっているのかわけがわからない。しかも桁が違いすぎるだろ? そう思って自分のカードを確認すると結構上がっていた。ちょっと前まで百を切っていたのに今は三百以上だ。一応、矢巻捜索とかに関わったのが評価されたのかもしれない。

 ちっちゃい手で自分のカードを確認しているマサムネの方を見ると、スコアが七万とかになっている。

 俺の視線に気付いて、またドヤ顔でイタチが鼻をヒクヒクさせている。なんか理不尽な気がして矢巻の頭を小突いてしまった。

 マサムネをイジメると女性陣から総スカン食らうのが目に見えているのだから、ここは矢巻でも叩いておくしかないだろう。

「ギルドで何年も塩漬けになってた勇者村絡みの依頼をほとんど解決したんだから仕方ない。しかもコイツは魔力を奪うために半殺しにはしたけど誰も殺していないからな。マイナスポイントよりもプラスポイントが勝っちまう。で矢巻よ、預金残高も見てみな」

 ヘロヘロの矢巻がカードに指を走らせると、現時点の預金額が表示される。

「ひえっ!」

 チラ見した瞬間、悲鳴のような声を吉村さんが上げる。

 俺も覗き込んでみた。今のレートで言うと、多分元の世界で戦車とか買ってもお釣りが来るくらいだな。

 よし、矢巻。吉村さんは譲ってやるから俺を書生とか食客としておいといてくれ。サラリーマンの生涯年収の何倍も稼いだんだから、もう三人で慎ましく暮らしていこう。

「そんなわけで、お前ら明日から家を探せ。転移者のケアも済んだから首都警の出番は終わりだ」

 ポンコとクロが擦り寄ってきた。

「俺は広い建物がいいな。縦方向の構造物が充実してるやつ」「あたしは結構ボサボサの庭が付いてるのがいいなあ」「ボク、ちっちゃい部屋が欲しいし、オモチャ仕舞う宝箱も欲しい!」

 動物どもが勝手な事を言い始める。

「あと、それぞれちゃんと仕事に就いてそれなりに社会に貢献しろよ。遊んでばっかりだとスコア下がるぞ。とくに白神とか」

 矢巻のヒモになって遊び暮らそうという野望は見抜かれているようだ。

 まったくこのオヤジは勘が鋭い。

 ふと思い立ってサジに質問する。

「サジ……さん。良ければ参考までに信用スコア見せて頂けませんか?」

 頑張って丁寧な言葉づかいをしてみた。悔しいけど。

「あん? 見てみるかい?」

 無造作に突き付けられたカードの信用スコアの数字は、見なかった事にしたいものだった。何をしたらそうなるのかまったくわからない。そもそも桁あふれしていて、数字が横スクロールしている。サジが指を走らせると指数表記になった。

 余計にわからんわ。

「ま、軽く世界を三〇回くらい救ってみれば俺に追い付けるかもな」

 物凄く悔しいが、どうせ今の俺は信用スコア三百のゴミだ。今回だけは素直に負けを認めよう。イタチ野郎の二百分の一でも仕方ない。

「わかったよ。じゃあ、矢巻、よろしく頼んだ」

 相変わらずぐったりしている矢巻の肩に手を置いた。ヤツはそっと頷く。

 明日からきっと新しい何かが始まるだろう。


ちょっと間が空きましたが、あと一話で第一部完です。

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