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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第一章 グールズバーグへようこそ
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第一話 地獄の番犬

 僕たちは夜の街にいた。

 どこだかわからない異国の街。

 だけど、どこか懐かしさを感じさせる都会の町並みだ。

 ナチスの亡霊のようなヘルメットとガスマスクをつけ、甲冑のような黒いアーマーを纏った兵士たちが僕たちの周りを囲んでいる。

 兵士たちの装備した丸いゴーグルは不気味に紅い光を放っていた。

「地獄の番犬……」

 吉村さんが呟くのが聞こえた。

 記憶が薄ぼんやりとしていて死んだ理由はよくわからないが、僕と白神、吉村さんは日本で死んでしまってこの世界に転生させられたそうだ。

 どこだかわからない空間でレクチャーをしてくれた女神らしき存在から聞いたところでは、この世界は魔王との戦いで人類は存亡の危機に瀕しているとのこと。

 非業の死を遂げた僕たちに女神様は異世界での活躍の機会を与えてくれた。

 日本でいくつか読んだ異世界転生物のように、最初は雑魚モンスターを倒してレベルアップというわけにはいかないようだ。

 黒尽くめの軍団はどう見ても凶悪な地獄の使者にしか見えない。

 ツバのあるヘルメット、紅く光るゴーグル付きのガスマスク、中世の甲冑を近代化させたような漆黒の鎧。

 しかも兵士の大多数は巨大な機関銃らしき物を構えている。更に何人かは透明な盾を持って前衛を務めていた。

 僕はこの世界に放り出される前に教えてもらった魔法発動の手順を反芻した。

 大丈夫。行ける。「転生してすぐに魔王と戦えば勝ち目はありませんが、最初の街で出会う程度の敵ならば粉砕できるでしょう」女神様のお墨付きの魔法だ。

 体の中に満ちるマナは満タン。臍下丹田のあたりから絞り出したそれを腕の中で加速させ撃ち出す。イメージからするとリニアガンとかレールガンみたいな感じだ。

「ファイアーボール!」

 体から離れる瞬間に火の属性を付与する。なんとも言えない快感とともに掌から放たれた火の玉は、その軌道がかすめたゴミ箱を一瞬で灰に変え、中にあった生ゴミに触れて水蒸気爆発を起こした後、凄まじい勢いで地獄の軍団の先頭に立つ隊長らしき男に向かって飛んでゆく。

「ふっ」

 マスク越しに笑った表情が見えた気がした。

 そう、ゴーグルを紅く光らせた男は、とんでもないスピードの火の玉を止まっているハエを掴むような動作で握り潰し、手首を振って消し去ったのだ。

「ブルーライトニング!」

 白神が転生時に女神から授かったカタナを振るうと、周囲の建物のガラスが振動し、黒い軍団に青みを帯びた銀色の衝撃波が同心円状に襲い掛かる。

 路上にあった立て看板や標識が一瞬で気化し、高熱の蒸気が叩き付ける。だが、僕たちを取り囲む軍団は身じろぎ一つせず、樹脂製らしい盾で雷を纏った青い衝撃波を受け止めた。

 吉村さんが詠唱を始める。僕と白神の服のすぐ上に見えない鎧が構成されていくのがわかった。これが連携プレイというやつだ。

「一気に行かせてもらうよ!」

 不可視の鎧を全身に纏って僕と白神は正面の男に突撃する。ファイアボールを連射。一発、二発……。

 ひとまず、巨大な機関銃のような武器を持った左右の兵士は無視して、先頭に立っている隊長らしき男に全て叩き込む。三十発まで数えたところで体内のマナが尽きた。白神もカタナで斬撃を繰り返している。

 だが、正面の男は掌で軽くあしらって、視界から消えた。

「おごっ、がああああああああああ」

 自分の口から出た声とは信じられない声が聞こえた。

 アスファルトに顔を押し付けられ、腕は完全に逆関節に極められている。

 信じられない事に、僕のすぐ横で白神も隊長らしき男の"脚で"腕を極められ、地面に横たわっている。

 ほんの数分前に、女神と称する人物から「魔王を倒して世界を救え。そのためにチート能力を授ける」と言われてこの世界に転生してみれば、あっという間にこのザマだ。

「あなたがた一人ひとりの能力は、今でも通常の魔族相手ならば、数千を相手にしても一瞬で片が付くでしょう。鍛えてゆけば決して魔王にも遅れを取らないはずです」

 なんて言われて、その気になって、この世界に来てみれば、あっという間にこんな状況だ。視界の端で吉村さんも黒尽くめの隊員に拘束されるのが見えた。扱いが結構優しいのはちょっとずるい。とはいえ、悪魔のような装備の軍団に捉えられて何も無いとは思えない。

 ゴメン、吉村さん。だいぶ前に触手とかで蹂躙される妄想で抜いたの謝るから無事でいて。

 ゲームなら序盤の雑魚キャラしか出てこないはずの序盤展開なのに、こんなナチスの亡霊の兵士たちに一瞬で制圧され、死んで転生した十分後にはもう一回死ぬ運命なんて、あまりに理不尽過ぎる。

 ゲームならそもそもこんなナチスの亡霊は雑魚キャラ扱いだろ?

 吉村さんの方を見ると、「ケルベロス……、地獄の軍団……」なんて言ってるんだよな。

 何にしてももう終わりなんだろうから無駄な抵抗はしない。

 僕は後ろ手に手錠のような物を掛けられながら、この世界に僕たちを召喚した女神らしき存在を呪った。

サイトの使い方に慣れていないため、一話を弄くり回している状態です。

2020/06/01 第一話修正しました。

ブランク長かったんで、勘を取り戻すまでは色々(つたな)い描写をしていますね。

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