第三十話 九頭竜の呼び声(1)
最初に着弾したのはきっと資料で見せられたAPFSDSに類似した砲弾だろう。
障壁の一点が赤熱し、周辺にオレンジ色の光が広がっていく。
宇宙戦艦の土手っ腹をぶち抜くであろう威力だ。魔導防壁に衝突した際に発した高熱で弾体自体が蒸発したようだ。
次は榴弾。いや、キャニスター弾のような物だと説明を受けた弾丸だろう。
ぐるりと囲った障壁の各所がオレンジ色の光を放ち、そこから液化して垂れ落ちた金属が周辺の海面に水蒸気を上げさせている。
最後に強烈な電磁兵器。
透明に戻った障壁が全体にぼんやりと薄橙色に輝く。
「白神、無事か?」
『ああ、無事だ。サイボーグじゃなかったら腰を抜かしてるところだ』
僕は安堵のため息を漏らす。最初に電磁兵器を撃ち込まれなくて良かった。発砲炎を見てから障壁展開しても間に合わず、下手したら全員が蒸し焼きになっていたところだ。
「ひとまずそこで停船してくれ。ちょっとなんとかならないか考える」
停船すると言っても巡洋艦サイズではなかなかすぐには停まれない。僕は障壁の範囲を少しずつ調整しながら何か方法は無いかと考え込む。
「要は敵意が無いって伝えればいいんだろ? もともと警戒心が強い連中だ。いきなり戦車や軍艦で取り囲まれてグルグル巻きにされたんじゃ反撃もしたくなる」
老ゴブリンが軽戦車の砲塔に腰掛けて言う。さすが亀の甲より年の功だ。
「宇宙から来た駆逐艦のみなさん! わたくしたちはみなさんを助け出しに来たのです! 敵意はありません! 信じてください。お願いします! 何でもしますから!!」
僕は無線機に向かってペコペコと頭を下げながら必死に説明した。宇宙船の砲塔が旋回してこちらを向く。あれだけの性能だ。照準など一度でつけられるだろうに、まるで威嚇するかのように砲身を小刻みに振ってみせている。
「あと一息だ。白神さんも何か言ってやってくれんか?」
『わかりましたよ曹長どの』
「曹長は余計だ」
「白神よ。お前じゃなきゃ出来ないとっておきの方法考えたんだ。ちょっとやってみてくれ」
白神は脳も補助電子頭脳と直結されている上に無線機も内蔵している。つまり、頭の中で作り上げた平和なイメージをそのまま送信できるはずだ。
「ラブでピースな奴をいっちょ頼んだぞ」
『了解』
十秒……二十秒……一分……。
再び畝傍に向けられていた砲塔が旋回し、砲身は直上に向けられた。
どの周波数帯でどんなプロトコルで送ったのか全くわからないし、説明されても僕には理解出来ないだろうが、なんとか成功したようだ。
少なくとも実体弾を撃つ気は無いという意思表示だ。
それに応じて、僕も防寒以外の全ての魔導防壁を解除した。
と、途端に奥歯に猛烈な歯痛が走った。
同時に頭の中に声が……。




