第二十九話 再びルルイエに(6)
「でかくね?」
召喚された妖精を見て僕の口から出た第一声はそれだった。
形はいわゆる昆虫の羽根の生えた美少女。
だが、問題はサイズだ。
「あ~これは妖精は妖精でも戦闘妖精、シルフかもしれませんがスーパーシルフって感じでさあねえ」
俺よりも元の世界のサブカルに詳しそうなコボルトの傭兵が言う。
「あっちの世界出身でしょ? こっちでも六回くらい映画化されているんだから向こうじゃさぞかし大人気かと。俺は原作二〇回くらい読んでるし映画も全部見たし、今度やるミュージカルも予約入れてるんですよ」
ごめんなさい。一切わかりません。二〇メートルの巨大な妖精が活躍する話なんてあったっけ?
「しかもここは南極。聖地巡礼でさあ」
ますますもってよくわからない。きっとそういう作品があるのだろうが、わりと向こうの地球でもうすらぼんやりと生きていた僕にはよくわからない。
「あ、あっちの雪上車では妹がちっちゃくて可愛いのいっぱい作ってるから……」
『お前が一番可愛いよ』なんていうセクハラセリフを飲み込みながら、僕は身長二〇メートルに達する巨大な妖精たちを見上げた。そもそも僕がマナを送り込み過ぎたのが原因っぽい。
「まあ、資材の運搬なら大きい方がいいし、問題ないよ」
ネクロマンサー姉、包容力がある。お嫁さんになって欲しい。昔の事は水に流すし、過去に何があっても構わないから。
「ところでさあ、あのコボルトのオッサンが言ってる事わかる?」
僕だけわからないのは悔しいので聞いてみる。
「もちろん。あの作品を知らない人が転移者にいるなんて知ってびっくりした。矢巻さんって文字とか無い地域から来たんですか?」
ひどい。悔しいのでもうそういう設定にしてしまおう。
「じ、実はそうなんだ。アマゾンの奥地でピラニアを釣ってたら吹き矢が足に刺さって意識失っちゃって……気付いたらいつの間にかこっちに来てて……」
いい加減な事を言ったら滅茶苦茶ジト目で見られている。なんでお前らそんなに色々とマニアックなんだよ?!
「それはそうと障壁の外には出ないでね。実体弾とエネルギー弾両方に効果があるけど、片方向だから出ちゃうと入るのに穴開けなきゃならないし、第一なにか飛んできたら危ないから」
話を変えようと数十メートル先に張った魔導防壁を指さして説明した。いや、指さしても見えないんだけれど。
そうしている間にも巨大な妖精が真っ白な網を抱えて宇宙船目指して飛んでゆく。
上空でざっくりと展開したアラクネの網を小鳥の群れのような小さな妖精たちがそっと広げてスター・デストロイヤーの艦尾を包み込むようにして丹念に被せてゆくのが見えた。
いいぞ。どうやら兵器や機械と見做されなければ攻撃はされないようだ。
網の両端を持った巨大妖精たちが宇宙船の艦首を通り過ぎてホバリングし、畝傍の到着を待っている。
畝傍が回頭して近付いてくるのが見えた。そしてスター・デストロイヤーの砲塔が旋回しているのも。
「ヤバい!」
発砲炎が見えた。
間に合ってくれ!
僕は側面を晒している畝傍全体を包むように物理障壁と電磁障壁両方を全力で展開した。




