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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第二十八話 再びルルイエに(5)

 水蒸気爆発と衝撃波の後、白神から無線連絡が入った。

 畝傍の方に双眼鏡を向けると、かなりの勢いで氷が溶け、海面が広がってきている。

 一応、こんな事もあろうかと戦車と雪上車の進行コースは事前調査で氷の下に地面がある場所を選んでいた。備えあれば憂いなし、だ。レンタルした雪上車は水陸両用だが、ただの鉄の塊である軽戦車は足元の氷が溶けたら一直線に海底まで沈んでいくことだろう。

 一応、シャボン玉の中に小さな人形(フィギュア)を入れて周囲をすっぽり魔導防壁で包んで水に沈まないのを確認した事はあるが、戦車を支えられるだけの浮力を瞬時に算出して防水仕様の防壁を展開する自信は無いし、試してみたいとも思わない。最悪の場合、酸素が無くなるまで冷たい水の底で絶望して震えて過ごす羽目になる。

「了解した。これより曳航索展開に入る」

 外に出て車体後部に積んだ荷物に手を伸ばす。宇宙船の横をフラフラとアルが飛んでいるのが見えた。RATO用のブースターを両手に握っているが、既に噴射は終わっているようだ。

 と、いきなり火花を散らして錐揉み状態に入って墜落した。

 レーザーか荷電粒子砲にやられたのか?

 バウンドしながらこちらに向かって転がってくる。

「痛い! 熱い! もうやだ!!」

 巨大な赤龍が思いっ切り泣き言を言っている。

 僕は治癒魔法を掛けようと掌に魔力を集中させる。

「ヤマキの魔法痛くて嫌だ! そっちのお姉さんのやつがいい!!」

 僕の治癒魔法が必要無いのなら大した怪我じゃないのだろう。ネクロマンサーの秘法でゾンビドラゴンにでもなっておけ! 『首が千切れても助かるが、首を引き千切られるよりも痛い』と言われている僕の治癒魔法は大不評だ。どうやら断裂した組織が破壊されたのと同じ速度で回復するから猛烈に痛いらしいのだが、命が助かるのだからそんな贅沢は言えないはずだ。

「はいはい。いい子ですね。もう大丈夫ですよ」

 いつの間にか人間の子供形態になったアルはネクロマンサー姉の豊かな胸の谷間に顔を埋めている。あの野郎、いつか豚のケツに顔を突っ込む呪いを掛けてやる!!

「ブースターが攻撃用兵器と見做されたんだな」

 車外に出てきた老ゴブリンが冷静に分析する。

「そろそろこっちの仕事をしよう」

 荷ほどきして真っ白な網を引っ張り出す。目の前に広がる雪原よりもより純白で、まるでそれ自体光を放っているようだ。

 アラクネの糸は本当に軽い。そして単糸の状態で絡んだりすると何の抵抗もなく人間の指くらい切断してしまうほど鋭く、頑丈だ。縫製ミスは無いと思うが僕たちは慎重に網を広げていった。

「じゃあ、よろしく頼んだよ」

 ネクロマンサー姉は静かに詠唱を始めた。

 この世界では基本的にあまり魔法に詠唱を使わない。

 たしかに正しい呪文を唱えれば魔法の威力は数倍になる。だが、一分掛けて数倍の威力の魔法を放つより、毎分六〇〇発の魔法を放つ方が遥かに効率的で生存率も上がるというのが一般的な考え方だ。

 しかし、召喚魔法や繊細な操作が必要な場合には有効だ。

 僕は集中の邪魔にならないように静かにネクロマンサー姉の方にマナを送り始めた。

 大気中の”意思を持った”魔素が少しずつ集まってくる。

 ”それ”は徐々に形を取り始めた。

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