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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第二十六話 再びルルイエに(3)

 傭兵たちが雪上車と軽戦車を回してくる。雪上車はレンタルだから傷付けないようにしないと。

「戦車にはネクロマンサーのおねえちゃんの姉の方に乗ってもらいまっせ。デストロイヤーを妹の方乗せたうちらの車で挟んで召喚魔法で網飛ばすさかい」

 なにやら死霊魔術と召喚魔法は相性がいいらしく、保護観察中のネクロマンサー姉妹はだいぶ色々な物を召喚できるようになってきていた。

「ドローン使う手も考えたけんど、EMP攻撃で一発やさかい、生身の精霊に運んで貰う事にしたんや」

 ドローンの費用節約したかったんじゃないのかという考えが頭をかすめたが、段取りは全てポルさんに任せてある。余計な口出しは止めておこう。僕は老ゴブリンが操縦する軽戦車に乗り込んだ。車長席はネクロマンサー姉。僕は装填手の立場だが特にやる事は無い。いや、ちょうどいいポジションでネクロマンサー姉の女の香りを嗅ぐ事が出来る。

 砲手席のコボルトの中年男が老ゴブリンに話し掛ける。

「懐かしいですなあ、隊長殿。辺境警備にこんなボロ戦車で駆り出されて原始恐竜どもを挽肉にしていた日々が」

「ああ、こいつよりは新しい型だったが、しょっちゅう履帯が切れたりエンジンがオーバーヒートしたりして、毎日が楽しくて仕方なかったな」

「隊長殿が軍を辞めるって聞いて、俺もさっさと辞めちまったんですが、隊長殿はいったい何で辞めたんです? 今まで機会が無くて聞いてなかったけど」

「貧乏人の子沢山ってやつで、当時十五人目が生まれてな……、さすがに軍の給料じゃやって行けなくなったんだよ」

「ひゅー。十五人っすか。さすが絶倫っすね」

「今年末っ子の二十三人目が小学校に入るんだ。さすがにもう打ち止めにしたけどな」

 微笑ましいんだか不穏なんだかわからない会話をしながら老ゴブリンは戦車を走らせる。過去のレストア時に積み替えられた電子制御の水冷エンジンを敢えてオリジナルに戻した骨董品の空冷二百馬力のディーゼルエンジンは意外にも快調そうだ。


「えっちなのはいけないと思いますよ」

 僕が充満する女の香りにいい気分になって、車体が揺れるのに合わせてネクロマンサー姉の太腿に触ろうとした瞬間、中年コボルトから鋭いツッコミが入った。

「いやあの、まあ揺れたから」

 しどろもどろになって僕は言い訳を始める。

「お互い合意ならいいんじゃないかな? なあ? 小僧!」

 老ゴブリンが鋭い目つきで僕を睨み付ける。

「いや、まあ、合意してからにします……」

 幸い車長席のネクロマンサー姉には聞かれていない。

「武士の情けだ。黙っといてやる」

 ゴブリンの爺さん、あんた本物のサムライだよ。感謝するよ……。

「今は本気で愛せる相手がいないからそうやって軽薄な態度になるんだ。そこのオネーチャンに対してだって本気じゃなくてあわよくばエッチ出来るかもなんて思いしか無いんじゃないか? 切っ掛けがそれで上手く行った連中も知ってるから否定はしないが、あまり褒められたもんじゃないぞ」

 ゴブリン様、その通りでございます。でも、盟友だと思っていた白神も航空宇宙軍の少尉とよろしくやってるし、吉村さんなんてあんなオヤジと子作りまでしてしまって……。

「焦る気持ちはわからんでもない。でもな、この世界じゃ汎人類は一二〇年も生きるんだ。小僧の歳で焦って人生棒に振るような事は避けないとな」

 亀の甲より年の功とはこういうものか。ゴブリン人種はたしか七、八〇歳が平均寿命だったはずだから、人生の大先輩の言うことは素直に聞いておこう。

 獣人類が六,七〇歳って事はポンコ辺りと一緒になると人生の最後の最後で二、三〇年寂しい独身生活を送ることになるのだな。逆にエルフなんかをお嫁にすると、同い年なら何十年も寂しい思いをさせるわけだ。あいつら汎人類が三〇代でポコポコ死んでた時代に平均寿命一二〇歳とかだったから、「定命の者よ」なんて超々上から目線だったけど現代医療が発達した後はそれほど汎人類と変わらないって事がバレて、美魔女とか若作りに勤しんでいるんだよな。でもまあ、男も女も一〇〇歳越えて子作り出来るってのはさすがだとは思う。

「見えた! おっきーね」

 車内無線を通してネクロマンサー姉の声が伝わる。ごめんなさい。僕のはそんなにおっきくないです。

「目標を視認か。ヤマキ、念のために防御魔法を貼り直してくれ」

 僕は今まで張っていた耐寒防御の上から耐衝撃・耐熱の魔導防壁を張り直す。電磁波にも効くようにしたつもりだが、どんな波長で来るのかわからないのでかなりいい加減な代物だ。

 一度喰らってみれば正確に防御できるけれど

「五キロまで近付いたら後ろの荷物から網出して展開開始だ。精霊召喚の準備よろしく」

 一応ボスとしての威厳を保ちつつ、僕は全員に指示を出す。いや、ポジション的にアラクネの糸で編んだ網を出したりするのは僕の役目か……。

 その時、視界の端に点のように捉えていた畝傍の姿が掻き消えた。

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