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グールズバーグの春を愛す ~屍食鬼の街の魔法探偵事件簿~  作者: 吉冨☆凛
第三章 亡き友の魂への誓い
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第二十五話 再びルルイエに(2)

「八巻はん。出番でっせ」

 ポルさんがドタドタと歩いて来る。この世界にはカワウソ用の軍靴なんて物があるようだ。いや、オーダーメイドか?

「待ちくたびれたぜ!」

 カッコよく一挙動で跳ね起きようとしたが、いい加減水物の飲み過ぎで腹がたぽたぽしてしまっていて、デッキチェアの横に転げ落ちるようにして座り込み、よたよたと立ち上がることになった。

「今から指示する通りにドカンと一発かましたってください」

 邪神が一面を埋め尽くしていた防衛線の向こう側はだいぶスッキリしていた。僕たちが立っている場所を中心として概ね百五十度くらいの扇形に邪神の群れがカットされている。

「器用なもんですね」

「元々手前側は群れが薄かったでそっから削っていったんや 奥の方はテストしたるゆうて軍から借りた超遠距離狙撃銃が役立ったわ」

 どうやらこのカワウソ、僕には内緒で他の契約もこの仕事の中で消化しようとしているらしい。まあ、薄々勘付いてはいたけれど。

「じゃあ総仕上げと行きますか」

 アルコールは多少回っているけれど、魔法が使えないほどではない。

「防衛線の所に最強レベルで魔導防壁張ってくださいな。一直線でかまへんけど、幅は地平線くらいまで」

 僕は体内のマナを自分の鼻面の前から押し広げるイメージで左右見渡す限りまで防壁を張った。主に熱と衝撃波に対する防御を強めてある。

「そんで、まっつぐ前のやっぱり地平線くらいの所で"控え目に"攻撃魔法を爆発させておくんなまし。前に打ち合わせた通り、『火属性』ってのイメージして貰うと助かりま」

 僕は邪神が蠢く水平線に向けて手を差し出す。火球のイメージを練り上げ、放出した。

 はじめに光が見えた。防壁に叩きつける衝撃波、そして光が見えた十数秒後に爆音。

「五度くらいずれてまんなあ」

 呑気にポルさんが言うが、目の前に広がる光景は一面の地獄の業火だ。衝撃波が防壁で跳ね返って、更に爆心で急速に低下した気圧によって猛烈な吹き替えしが地平線に向かって戻ってゆく。

 数十秒後、爆轟が収まった後には何も残っていなかった。

 高熱で融解した雪原が水になり、静かな湖面のように広がっているが、すぐに低温に晒されてまるで鏡のようにまっ平らな氷原となってゆく。

「いやあ、壮観ですなあ。ほな、JVの皆さんに連絡しま」

 衛星携帯を取り出してポルさんは二言三言話す。

「これで一つ終わりですわ」

 お目付け役として来ていた666さんが腰を抜かして転がっている。一応大企業社員なんだからしっかりしてくれ。

「じゃあ、雪上車とか出して、そろそろデッパツしまひょか」

 契約完了の書類に判子を貰いながらポルさんが言う。666さんの印鑑って「轟」とか「姦」みたいに6が三個並んでいるのか。全く役に立たない知識が身に付いたぞ。

 ゴブリンや狼人間、オーガといったポルさんの部下が武器をコンテナに仕舞っている。コンテナには『5S』の文字。整理・整頓・清掃……あとなんだっけ? 帰ったら調べてうちの事務所でも徹底させよう。この前もマサムネが散らかしたおもちゃを踏んで危うく後頭部を強打するところだったし。

 地響きを感じてふと視線を向けると、地平線の向こう側から雪煙を立てて大量の車両が突き進んでくる。

「JVの方々も到着や。あとは社員はんとここに残しとく護衛に任せてうちらもはよ出まっせ」

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