プロローグ
1回目の投稿なので短いのはご了承下さい
ポタッ……ポタッ……
周囲は抉れ、吹き飛ばされた山の跡だけが残る、紅く濡れた土地の真ん中でそんな音だけが響き渡り、空に一つだけ妖しく輝く星だけがそこを照らす。
そんな場所に2人の男女が立っていた。……いや、その言葉は適切ではないだろう。
正確には女が男の胸を剣で貫いて立ち、男は胸を剣で貫からたまま血反吐を出した。
服は自らの血で真っ赤に染め上がり、力も入らなくなってきていた。
それでも俺は最後の力を振り絞り、自分の最愛の弟子に笑いかけた。
「……これで君の思い描いた世界がようやく…来る、な」
そしてそんな言葉と共に俺は朱く染まった地に膝をつく。
「いい、か?……これから俺が言うことを忘れるな……。お前は優しい、優しすぎる。そしてその…優しさにつけ込もうとするヤツは必ず、出てくる……。いい、か……見極めろ。……お前のその、目で。その、頭で……!考えて、考えて、考え続けろ……!!そうして、出会った仲間はお前のかけがいのない一生の支え、となる。………それ、が俺……には………………」
ドシャッ
そんな言葉と共に世界に恐れられた男はその永い人生を終えた。
…男のたった1人の弟子をこの世に残して……。
「……さようなら、我が師、セル・ヴェルド」
ーーー☆ーーー
「……さようなら、我が師、セル・ヴェルド」
そんな言葉を私は死んだ師匠に送った。
しかし、今まで散々憎んできた敵を殺したにもかかわらず、私の心は疑問が尽きない。
ねえ、何で本気で殺しに来なかったの?
ねえ、何で私を恨んでもいい筈なのに微笑むの?
ねえ、何で最後の最後であんな言葉を投げかけてきたの?
そんな事を思いながら死んだ師匠の体をぼんやり眺めていると、師匠の服に濡れた手帳が入っているのを見つけた。
そのまま私は恐る恐るその手帳を手に取って開けた。
そこには師匠のこれまでの人生全てが書かれていた。
そして手帳には私のことも書かれていた。
最後のページになると自分は弟子に殺されるだろう、といったことも書かれおり、私に対するこれからの心配などが綴られていた。
そして、そのまま最後の一文を見た私は涙が止まらなくなり、そのまま泣き崩れた。
ーー愛しているよ我が弟子、スグ・ヴェルド
「あぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」
いつのまにか空は曇り、雨も降り始めていた。
ーーー☆ーーー
あの最後の日からどれ程の時がたったのだろうか。
そろそろ生きていた時の記憶も掠れてきた。
……しかしそんな時、俺の意識が急上昇し、それと同時に不快な雑音が聞こえてくる。
「ぎゃはははは!やっぱ落ちこぼれはそんなボロっちい英霊剣しか出せねえんだよ!腹がねじれちまうぜ!」
「なんだよその剣!錆びてるぞ!ひひひひひひ!」
その雑音は俺に向けられたものではなく、この俺の柄を持つ者に向けられたもののようだ。
そんな意味がわからない状況で俺が思うことは一つ。
……きたか、
この一言に尽きる。
何故なら似たような経験を一度聞いたことがあり、その時に俺に話してくれた奴も剣だったのだから。
なんでも、過去の英雄の、詳しく言うと歴史に残るほどのことをした人物の魂の宿った剣をこの世に呼び出すらしい。
……だからこそ、俺のような史上最悪の殺戮者もごく稀に呼び出される。
ーーそのとき、世界はとんだ間違いを犯した。
さあて、今度はどう人を殺し尽くそうか……
ーーまだ世界に対する怨みが消えていない最悪の殺戮者を蘇らせてしまったのだから…
最後まで読んでくださり、ありがとうございます
「次も頑張って」「次が気になるなぁ」「まだまだだよ!この下手くそ!」「面白くない」
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次回、「世界はーー」