俺魔王になる。
俺とルキナは突如として目の前へ現れた三体の魔物を前にして、恐怖で声も出せず、ただ呆然としていた。
「おいおい。そんなに怯えることはないぞ。儂の部下たちはけしてむやみに攻撃したりしないからな。」
そんなこと言われても!いきなり魔物がでたらそりゃ驚くだろ!
「なんだぁ?いきなり呼び出してよぉ。おお人間とは珍しいな。おいヴァイ、こいつらなんだ?」
魔物の一体が喋った。
何だこいつ。
頭が牛で体が人間、いわゆるミノタウロスってやつだな。あとめっちゃムキムキ。
「この者たちはなんでか分からんが、儂が結界を張っていたにも関わらず儂の部屋に居たんじゃ」
そう言いながらヴァイは俺達の方を見てにやけている。
するといきなり
「フフフ。さっきはいきなり出てきたから驚いちゃったけどバケモノめ!この麗しくも強いこのルキナ様がぶちのめしてやるわ!」
女神としての正義感に駆られたのかルキナが雄叫びを上げながら魔物たちへ襲いかかって行った。
「私の前へ現れたことを後悔しなさい!ゴッドバーニングパーーーーンチ!!」
バコォン
やられたのはルキナの方だった。
さっきヴァイと会話していたミノタウロスにワンパンされた。
死んでないよな?
「おいおいなんだこの姉ちゃん?いきなり襲いかかって来たぞ。気絶してるみたいだな。」
こりゃ逃げられねぇわ。
俺は異世界に来てそうそう死ぬのか。
俺が何もかも諦めて床に寝転がっていると。
「おい誉何をしてるんじゃ、今からお主に魔王を継いでもらうと言っているじゃろ。早く起きるんじゃ」
そうだこのジジイ。魔王を継いでもらうとか言っていたな。ということはこのジジイも魔物なのか?
「誉?何しとる。起きろと言って」
「分かった!継ぐ!継ぐから殺さないでぇ!」
「殺すわけないじゃろ。なんの冗談じゃ。」
やばい心臓がバクバクいっている。
落ち着け、話だ。まずは話をして状況確認しよう。
「あ、あの魔王ってことはヴァイさんは魔物なんですか?」
「いや、儂はれっきとした人間じゃよ」
え?人間なの?
「じゃあなんで魔王になんかなったんですか?」
「誉、儂の話聞いてなかったじゃろ」
も、もしかしてあのクソ長い話のこと?
ぜっぜん聞いてませんでした。すみません。
「もう一度いうが、儂は生まれなら凄い力を身に着けておったのじゃ、そして成長していくうちにその力も強大になっていってな、その強大すぎる力を恐れた王は儂を国から追放したのじゃ。どこかの村にでも行こうと思ったがその王も陰湿なやつでな、国の周辺のすべて村や街に儂を危険人物として広めたのじゃ」
そんな壮絶な人生だったのか。だが、まだなぜ魔王になったのかは明かされていない
「そしてどこにも行けなくなった儂はいつも一人じゃった、とても寂しかった、そんなときふと思いついたんじゃよ」
おいまさか。
「魔物を仲間にすればいいじゃん、と。そして仲間を集めるうちに魔物を統べる魔王と呼ばれ始めたのじゃよ」
そんな理由で……
だいたい分かった。でもまだ疑問はある
「でもなんで夢が全ての魔王を倒すことなんですか?」
「本当に話聞いてなかったのじゃな」
「す、すみません…」
「まあ良い。そのことについてだが、儂が魔王と呼ばれ始めて間もない頃、あることを耳したんじゃ」
あること?
「他の魔王の軍勢が儂を追放した国を襲い、全て人間を皆殺しにしたんじゃ」
皆殺しか、その国の王はいったいは王にどんな恨みをかったんだ。
「儂はそれを許せなかった。儂を裏切った国でもだ。しかもその国には儂のことを愛してくれた両親も居た。そのとき儂は決心した。争いのない本当の平和な世界を作ろうと。それがどんなに不可能なことであろうと、世界を征服してでもやり遂げてみせると。」
か、カッコいい!これが真の男の中の男ってやつか。
「だがもうこの通り老いぼれじゃ、目的を達成する前に何もできない無力な老人になってしまった。仲間も戦いの末この三人になってしまった。夢も諦めかけていたそんな時に誉、お主が現れたのじゃよ。」
そういうことだったのか。じゃあこの魔物たちも世界平和のため頑張ってきた仲間ってことか。
いい奴らじゃん。
「誉よ、もう一度聞くがやってくれるな?」
俺が当初計画していた勇者ハーレム計画とは
全く異なる感じにはなるが、世界平和を目指すことは変わらない。世界の守り方の違いだ。何よりこの老人の人間性には惹かれるものがある。
魔王か。
「おう!やってやるぜ!」
そして俺は魔王になった。
話が全然進まない。
次回も多分登場人物の説明的な感じなのであんまり話が進まないかもしれません。