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第2幕「気が付くと僕は地雷原を両足で踏み込んでいた」④

大切なのはイメージでございます。

メルルは烏の人形に向かって唱え始めた


「大空の使者、大烏よ。古き盟約に従い、その封印を解き、我に更なる力を与えたまえ!」


すると、メルルの手先から赤い光がゆっくりと人形の方へ向かい、見る見るうちに人形が光りながら別の何かへと変化し始めた

少しずつ人形が大きくなっていき、徐々に形がはっきりとしたものに変わっていく

そして目の前に現れたのは…


「僕に新しい姿を与えて頂き感謝します、我が主。」


中性的な明るい声で、メルルの方に向かってにこやかにほほ笑む

黒を基調とした執事の服を着た、黒髪の美青年だった


「え…お、お前…さっきの大烏…なのか?」


そう俺が尋ねると、美青年はこちらに向かって歩き始め

俺の胸倉を掴んできた


「ぐおっ!?」


「あまり僕に馴れ馴れしい態度をとるんじゃない。はらわたをつつくにも値しない男め。」


うおお、なんだコイツ…

でもちょっといい匂いがほのかにする…

エアリーたちの方を見ると、二人もポカンとした表情をしている


「…珍しいわね。獣神が人間の姿になるだなんて…。」


「そうですね、滅多にないパターンだと思います。…これも、ひとえに旦那様の魔力のおかげ、なのでしょうか…。」


二人が話しているのを聞いて、美青年は俺の胸倉を掴んでいた手を放す


「…まあ、そういうことなら、一応礼は言っておく。」


「いてて…ったく、これで決闘の方は何とかなりそうなのか?」


「ええ、クリーの力は確実に上がっているわ。おそらく膨大な魔力を得た結果、人間の姿で戦った方が都合が良くなってこの姿になったんでしょうね。」


「まさにその通りです、我が主。勿論、元の大烏の姿に戻ることも可能です。」


クリーは誇らしげな様子でメルルにかしず


「そういや、決闘する相手ってのはどんな奴なんだ?」


ふと思い立って尋ねると、メルルは苦虫を噛み殺したかのような表情になった


「私とは正反対、『光の魔法使い』らしいわ。」


「ふーん、光ねえ…。何ていうかよさげなイメージがあるけど。」


俺がぼんやりと考えたことを言うと、メルルはやれやれといった感じに首を横に振った


「魔法使いに良い奴なんて、そうそういないわ。エアリーみたいな優しいのは珍しいくらいよ。」


「あら、いつから本音が言えるようになったんですか?ツンデレブラック。」


「…嫌味だって気づきなさいよ…。」


エアリーとメルルが言い合いをする中で、俺が先程考えた疑問を尋ねてみた


「なあ、魔法使いってのは魔法の使い方を知っているから、そう呼ばれているんだよな?」


「はい、さようでございます。」


「ならさ!俺も使えないかな?魔法。」


そう、先ほどから俺は魔法に巻き込まれていくうちに、魔法を使ってみたいという欲が生まれたのだ

漫画みたいに特訓したら使えるようになるんじゃないだろうか

興奮のあまり、つい勢いよく身振り手振りを加えて尋ねてしまった


「そうねえ…まあ、使えないことはないだろうけど…。」


「けど?」


「魔法は一日にしてならず。習得するにはそれなりの時間と特訓が必要で、更にきちんと使いこなすのはもっと大変なのよ。」


「な、ならさ、初級魔術みたいなのは無いのか?俺でもできそうなやつ。」


「…そうですね。では、手の中に丸いボールのようなものがある感覚をイメージしてみてください。」


「こ、こうか?」


俺は目を閉じて、手の中に野球ボールがある感覚をイメージした

野球ボールを持つ感覚なんて、何年ぶりだろうか

おそらく高校時代の授業以来だろう

昔からあんまり野球に興味はないからなあ


「…その辺にしておきましょう。」


「え…もしかして俺、向いてなさそう…?」


恐る恐る尋ねると、エアリーはクスリと笑った


「いいえ、初めは誰でもこんなものです。例え旦那様が野球選手だったとしても、いきなり球をイメージするというのは難しいです。ましてや、それを魔法に変えるのは至難の業。次は魔法適正を覗いてみましょう。」


そう言うと、エアリーは俺の額に手を当てた


「今から旦那様の魔力に干渉いたします故、本来であれば倒れないようにして頂きたいのですが、適性を知るため、そのまま感覚に身を委ねてください。」


「…わかった、やってみる。」


徐々に額から何かが外側に流れて行っている感覚を理解し始める

それが何なのか、感覚を研ぎ澄ませて必死にそれを掴もうとする

思わず呼吸を止めてしまいそうなほど集中している


…やがて、流れゆくものの形が、色が、イメージが頭の中に浮かんできた

初めは無色透明な丸い大きな球体

そこから細長い糸のようなものが、額へと伸びている

また、糸が額の方へ近づくにつれ、徐々に緑色へと変色していくのがわかる

暫くすると、自身の魔力は何者にも変化できる『変化』の力を持っていると、理解することができた


「…なるほど、ここまでに致しましょう。」


エアリーの手が額から離れ、一気に現実世界へと押し戻される


「…『変化』か…。」


俺は自身の力を知り、思わず顔がにやけてしまった

あとがきのひとこと…クリー(人間状態)はチャールズよりも背が少し低い

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