第三話
遅くなりましたが、第三話掲載させていただきます。別サイトで二次創作をメインに書いておりますのでどうしても遅くなるんですよね(笑)こんな話でも見てくださっている方がいれば幸いです。
6
荒天と飛が大成に会いに行った日の夜の事である。月明りが明るく地面を照らし、歩くことに全く苦労しない。
だからだろう、大成は馬に乗って山道を登ったり降りたりしていた。一時間ほど移動していくと、あっという間に村を通り過ぎ、谷間の上の道を歩いていく。
馬である『轆轤』と大成は呼び、向こうの大陸からわざわざ連れてきていた。もっとも、大成は本来はここまで連れてきてやろうとは思っていなかった。
一人当ての無い旅をしていた際、足に怪我をしていたところを大成が助けたのだった。
せめて怪我が治るまでは面倒を見てやることにした大成、その後轆轤を野生に返してやったが轆轤はそれでも大成について回っていた。
そのうち、大成はあきらめて馬に轆轤という名を与えてここまで連れてきてしまった。
それこそ普段はその辺に放っている為、沙耶ですら会ったことが無い。
轆轤は人間が仕掛けてしまった罠にかかり死にかけた。それゆえの人間を信じない姿勢に対し、大成の優しさに惚れ込み、ついてきてしまった。
それ以外にも様々な馬を連れてきて、道具を持ってきた。
武器や農業用の道具を多数この地まで持ってきた。
別に意味はない、助けてあげた報酬にともらっていた道具や馬を連れて旅をしていた期間が約一年。様々なところを回り辿り着いたのがこの倭の国と呼ばれていた後の日本である。
安息や時分を知らない世界を求めていたのかもしれない大成。本当の自分を知っているという事をほかの誰よりも恐れ、常に偽名と嘘を重ねた毎日。だからだろう。所詮は『大成』という名前も結局が偽名だった。
しかし、そんな名を真剣に言う彼らを思って大成は山を超えていた。
彼らの話を聞き、考えて彼らの事を想い、嫌な予感を感じ取り山を越えてきた。
山の中腹から村へと流れる川の側にそれはいた。
最悪の存在というべきだ。
轆轤も嫌な奴らだという事を感じたのかもしれない。多少興奮気味になっているのを大成は何とか抑える。
「やはり近くまで来ていたか………山賊」
そこには山賊たちが火を明かりにし、肉を焼いたり拠点を整えようとしている。
「あの状況を見る限り………数日は動かないだろうが」
大成は長年の戦いの経験がそう告げている。おそらく行動し始めるのにはそれなりに時間がかかるだろうという読みである。
「周囲を知り、ある程度何があるのか分かるまでは攻撃はしないだろう。まあ、山賊がどう動くなんて分かった者じゃないが」
彼が問題にしているのはそこではない。
大成が問題にしているのは………
「こいつらが動いたら間に合わないぞ……」
どうやって戦い、どうやって生き残るのか?
大成は苦々しい表情を浮かべ、脳内の回路が焼ききれそうなほど悩んでしまう自分がいる事に気が付く大成であった。
7
強くなり、村を守りたい。しかし、それから先の事を何も考えてこなかったというのは真実であった。
夜が更けていき、村のあちらこちらで火が灯り、それから逃げるように飛は川へと足を突っ込み涼んでいる。
涼むことで頭を冷やして思考回路を落ち着かせる。
何かいい未来があるのか思いつかない。村を守ろうとすればするほど脅威を周囲に作っていく。
「結局……怠惰的な生活や、隷属的な生活がいいという事なのか?」
「そんな生活はごめんです」
唐突に声を掛けられ警戒心を高めながら素早く後ろを向くと、そこには体型を隠すような服を選んでおり、髪は後ろで纏めているポニーテールにしている女性だった。
「芽木か……物音をたてることなく立たないでくれよ」
「そんな事より……」
物音をたてることなく真後ろに立っている事を「そんな事」と流す芽木は、真剣な面持ちを続けながら飛ににらみつける。
「今更でしょう?和義様から聞きましたよ。村を守る為に強くなろうとしているっと。あなたと同じ気持ちを抱いている人は多いと知っているでしょう?私を含めて………ね。なのに今更しり込みをするというのですか?」
睨みつけながら後ろから離れようとしない。
「で?どうだったのですか?うまくいったのですか?強かったのですか?みんなその辺を気にしているんですよ?」
よく見ると芽木の後ろにさらに多くの若い人々が少しだけ集まっていた。
ずっと報告を聞きたがっていたのだろうが、長老などの戦力反対派の前でははしゃぐわけにはいかなかったのだろう。夜になり人が家に入っていくのを待っていたのだろうというのは分かった飛である。
「強かったよ。強すぎるくらいだ。なんていうのかな?次元が違う?そんな言葉が一番しっくり来るかもな」
そう言うと後ろの奴らが「おおー!」っと多少興奮したように驚きを隠せずにおり、安心したように村の方へと帰っていく。
しかし、芽木は同時に不思議に思ってしまった。
「だとしたらどうして浮かない顔をしていたのですか?」
「大成様に言われた。『お前達が村を守る力を得れば得るほどむしろ国からすれば不快な存在なんじゃないのか?お前達が力を持っていないからこそ手を出していないという状況だろう』っとな」
芽木は顎先に人差し指を置きながら「う~ん」っと考えているような声を出し、飛は川から出ると芽木の方を向く。
飛は悩み、答えが出ないまま村の方へと移動していく。
8
大成自身彼等の気持ちが分からないわけでは無かった。
かつて彼等と同じく這い上がっていった身である、しかし、その結果の失敗を踏まえれば、決して自分のしたことを褒められたことではない。
誰かから見捨てられることを恐れるあまり、自分自身でいられなかった。必死に尻尾を振り、必死に媚びて、必死にしがみつこうとした。
そうでもしなければあの激動の時代を生き延びることができなかった。
誰かから見捨てられることをほかの誰よりも恐れた。それを悟られないように過ごすことに必死さを覚えた。
しかし、その思いは空回りし、部下に殺されかけるところまで行ってしまった。
その部下の一人を殺したところで彼は引き返すことができないと悟り、同時に恐怖を初めて覚えた。殺意への恐怖、身内の殺意。
同時に今まで揺るがなかった君主への疑問を覚えた。
もしかしたら……という考え方が君主への疑惑を作り上げ、逃げ出すきっかけになった。
そんな日の事を思い出し、日が昇り始める所を目撃してしまう。
自分の横に立てかけられている剣と呼ぶには少々心もとない武器は、いつでも彼の側にいる。まるで呪われた武器のようだ。
そういつだって側にいた。
荷物になると思い捨てようと思った時ですらいつの間にか側に戻ってきている。一人になり、当てのない旅を続けていた時に武器商人からもらったものだった。
「これはどうやらあなたと共に居たいようです。どうかもらってやってください」
当時はそこまで深刻に考えておらず、次の武器へのつなぎになればいいというぐらいにしか考えていなかった。
しかし、この武器の恐ろしさは大成が自ら目のあたりにした。
刃こぼれしたこの剣を捨てたとき、この武器が翌朝の枕元に戻っていた。
刃こぼれしたところが綺麗に治っていた形で……
刃こぼれしていたはずだっとも考えたし、そもそもこれが捨てたものだという事は考えなかったが、こんな奇妙な形をした武器が世界にそんなにあるとは思えなかった。
何より触り心地は全く同じであった。
違和感より恐怖を感じ取った。
しかし、同時に思い出す言葉―――――、「この剣に認められたという事は、あなたは近い将来自らの願いを叶えることができる立場にあるという事です。覚悟してください。その願いをどんな形ですら叶えるという事は、あなたの前には過酷な戦いが待ち受けているという事です」っと武器商人は言った。そして、一方的に押し付けられた。
しかし、同時に幸運だとも思った。
だって……願いを失った人間としては、自らの願い叶えてくれるという矛盾の武器がどんな願いをかなえてくれるのか心底楽しみではあったからだ。
「なあ……お前はどんな願いをかなえてくれるんだ?」
この剣は答えてくれない。
のちに、大成はある人物より、『草薙剣』となずけられる剣の刃を見つめる。
綺麗な刃先に移る自分の情けない姿を見る。本当に情けないと思う。
「なあ、お前は………なんで俺を選んだんだ?俺みたいな冷たく、愚かしい人間を」
答えるわけが無く、むなしい自問自答が繰り返されるだけ。あの日からずっと考えている自問自答―――――、「俺は……生きている意味があるのだろうか?」
生きている意味―――――、生きるとは何なのか?そんな今までなら絶対に考えなかったようなことである。
だって、そんなことを考える暇があるのなら一人でも多くの敵を倒すことを生きがいにしていたのだから。
だから、大成になってから彼はずっと考えた。
これが彼の本当の本質を目覚めさせることになるとはまるで思わなかった。
9
人間にはきっと本質があるのだろう。それが大成が一年ほどをかけて出した武術の考え方である。
その本質を理解することで、自分に合った武器、戦い方が見えてくるだろう。
そう思った時、自分の本質を自分自身が見失っていたことに自分自身が笑ってしまった。
だからだろう。色々な事を考え、試した結果、今の自分がこの剣が一番性に合っていると思い至った。
どうして大成がこんなことを考えているのかというと、前日から面倒を見てやると言い切った荒天は今日に入ってからしつこいというほどに突っかかってくるからである。
大成は木刀の先を右肩目掛けて突き出し、荒天はそれをよけることも無くまともにぶつかってしまう。
しかし、まるで懲りていないのか、再び武器を構え始める。
大成は大きなため息と共に弓の休憩がてら決闘の回数を数えていた飛に尋ねる。
「これで何回目だ?」
「俺が数えている限りでこれで十回目です。しかし、懲りないな~お前も」
聞いていない荒天は再び走りながら武器を振り下ろそうとする、大成は木刀で足払いを仕掛け、荒天は大成の予想通り大きく跳躍する。
大成は大きなため息を吐き出しながら回し蹴りを鳩尾に決める。
「ちったぁ!学習しろやぁ!!」
吹っ飛んでいき、木の根元へと頭部を激しく激突させた。
さすがに疲労と衝撃の結果で気を失ってしまう荒天、大成も多少疲れてしまったのか、近くの木に背を預けて大きく息を吐く。
大成は正直荒天に対して驚きを隠しきれなかった。
『学習能力の無さは大きな欠点じゃあるが、それを補うように体力の多さと力強さは称賛に値するな。こっちが疲れてきちまった』
荒天と飛がやって来たの前日の事であり、結果として面倒を見てやるという方向性でまとまることにはなった。
だからまず、大成は二人の戦い方と才能を見極める必要があった。それが午前中の出来事である。
休憩を終えた飛は立ち上がりもう一度弦を引き、獣の牙や角で作られた矢を腕と胸の筋力を使って引き絞る。両足は力強く地面に縫い付けるように立っている飛をもう一度見つめる。
『飛。こいつは頭で考えて行動する人間だ。本能というより、少々神経質に近いかもしれん。一歩後ろで行動し、全体を見渡すことができる』
そして、いまだ伸びている荒天の方へと視線を移す。
『荒天。頭で考えるより先に行動している感じがするな。ひと昔の自分がこいつでもあるんだろうが、そう思うと少々反省してしまう。筋力や体格の良さはかつての俺を彷彿とさせる。まあ、今の俺はだいぶ絞っちまってるからな』
自分の筋力や体格と荒天のモノを比較しても、大成は今では負けている。細くなってきている。これは単純な衰えではなく、力任せに戦う事を止めた為でもある。
『いや、衰えだろうな。学習というべきか?力任せでは戦いに限界があるという事を思い知った。流れるような戦い。所謂『柔術』を俺は狩りの中で色々と知ったんだが、こいつとの戦いで色々と試せてちょうどいい』
しかし、それは大成にとって丁度いいというだけで、荒天の成長速度からすればむしろ都合が悪い。なぜなら、荒天はこの十回の決闘もどきを繰り返してもまるで成長していない。
本来戦う中で成長するというのは、これではダメだ、これは効果的だという風に考えるものだ。しかし、この場合荒天が昔の大成に似ているという事が悪いように作用した。
よすうるに、荒天は命懸けの戦いでなければ真価を発揮できないのだ。
命を懸けるという事は一歩間違えれば『死ぬ』という事だ。
『俺がそうだったように、命懸けというのは最悪で災厄の手段だと思う。本来なら頭で理解する方が生存確率は高い。どうしたものか……』
大成がそうであるように、こういう性質みたいなものは他人がどうこうすることでは何ともできない。
大成は困り果てていた。
『柔術』を色々と試せて大成は「良かった」と思う反面、荒天が言うことをまるで理解してくれないことは「悪い」と思うのだ。
『名前を付けてみるか?あっ………もう一つ試してみるか』
そう思い大成は荒天に近づいていくと右わき腹を思いっきり蹴り上げる。うめき声をあげる荒天はゆっくりと立ち上がる。
「最後にもう一度試したい技がある。もう一戦するぞ」
そう言って大成は木刀を右側に持ち、息を大きく吐き出す。
荒天は再び険しい表情を浮かべ、縦に木刀を持つ。
二人が睨み合いを続ける中飛は呆れかえる―――――、『あれだけ暴れ回ったのに、まだ戦う事が出来るなんて』
我慢することができない荒天は数秒で走り去っていく。再び縦切りの要領で振り下ろそうとする。
大成は右足を軸に左足を後ろに移動させるように攻撃を回避する。荒天は斜下から上へ向けて飛り上げる。
しかし、それを左足半回転することで攻撃を回避する、完全に回避したと判断した大成はそのまま左足を一歩前に押し出して木刀を振り上げる。木刀は荒天の腹に直撃した。
吐き出しそうになる気持ちを荒天はグッとこらえ、息を大きく吐き出しながら呼吸を整える。
飛は内心『昨日だったら驚いているところだけれど、今更驚かないな。あの人は右足を軸に全くあの場所から動いていない』っと微かに驚きを隠す。
しかし、荒天だけはその凄さが分からなかった。
その後もしつこく攻撃を繰り返すが、大成は右足を軸に回避しつつ攻撃を繰り返す。最後に荒天の頭部に木刀を振り下ろす。
一発で気を失わさせる。
しかし、そんな事とは関係なしに大きな声を放つ―――――、「この戦術を『柔術《軸》』となずけることにする」
飛は内心ため息を吐き出しながら一連の会話を聞いていた。
10
雲一つない夜空を満天の星空と欠けることのない満月が視界いっぱいに広がっており、大成は小高い丘の上にたつ一本の桜の木、満開の桜から少しだけ離れたところから満天の星空を見ていた。
『この星空だけは全く変わらないな』
変わらない物もある、変わらない常識も存在する。
それを知るだけで安心する。だから、ここに毎日来るようになった。
月明りと星空の明るさが夜の道でも地面を明るく照らしてくれる。それに綺麗な桜の木の花びらがかすかに重なるのだから、来て見て悪い気持ちにはならない。
むしろ、飽きずにいつでもここに居たいという気持ちになる。
轆轤も多少休みながら暇そうに地面を蹴って遊んでいる姿を、大成は微かに微笑んでいると森の奥から誰かが姿を現した。
小柄で一件女にも見えるほどに中性的な魅力を見せる『和義』が姿を現した。
大成はもちろんの事ながら、轆轤もまた警戒心を高める。轆轤は鼻息を荒くして多少興奮を高める。
大成は轆轤の首を撫でながら興奮状態を落ち着かせようとする。轆轤は多少落ち着き態勢の頬をなめる。
「あなたは?」―――――、そう言いながら近づいていく和義の容姿と、飛達から聞いていた村長の容姿とが一致する大成。
「お前が……和義か?」
和義に対して警戒心を多少落とすがそれでも最低限の警戒心は心のうちに持っておく。
大成はあきれ果てながら心の言葉をそのまま口にする―――――、「村長がこんな所をウロウロするもんじゃないぞ。いくら村から近かろうがな。夜も遅い」
和義は苦笑いを浮かべながら大成のそばまで近づく―――――、「すみません。寝れない時はここにきて木の下で休むようにしているんです」っと素直に答えた。
同時に分かる和義という人間の『優しさ』と『大らか』を理解した大成は寝っ転がり、和義を隣に誘う。
手招きされた和義は大成の隣に同じように仰向けに寝っ転がると、和義の視界いっぱいに星空が見えてくる。
大成は指を星空に指しながら―――――、「あれが―――――」っと説明し始める。
和義は大成から星座の名前を一つずつ聞かされていく。その名前を一個一個確実に脳内に刻んでいく。
自分の知らない世界が隣にいると和義は感慨深い感情に襲われた。
知らない動物、知らない知識、知らない世界が目の前にある。それを教えてくれる人がいるという幸福。
大成は少しすると立ち上がると同時に和義も立ち上がる。
「村まで送っていってやる」っと大成に言われるが、和義は―――――、「大丈夫です。歩いて直ぐですので。それに多分誰かが近くに居てくれていると思います」と微笑む。
それは大成も分かっていた。
というより飛と見慣れない人物(芽木である)がこちらをチラチラとみているのには気が付いていたからだ。
大成は「そうか」っとつぶやきながら一旦飛の方を見る。
安心し轆轤に乗り込んで立ち去ろうとした時、和義はもう一度近くにより小声で頼み込む。
「明日も教えてくれますか?」
切実な思いをもって尋ねる。大成は朗らかに笑いながら答えてくれた。
「ああ、別に構わねぇよ」
これが大成と和義の出会いになった。
どうだったでしょうか?山賊編まではまだ会話劇や人物の数もまだまだです。本格的に面白くなってくるのは『覇国攻略戦』からです。次回から多分山賊が本格的に戦いに参入することになります。今回大成が言っていたと思いますが、山賊戦はまともに戦える人間が少ない分かなりの苦戦を強いられると思います。そう思うと、どう描くのかが実に悩ましい限りです(汗)どうしましょうか………、まあ悩んでいても仕方のない事ですのでまずは行き当たりばったり頑張ってみようと思います。自分が目指す最後まで責任をもって書いていきたいと思いますので!!デワデワ!!!次回お会いしましょう!!!!




