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父さんの秘密と誕生日

「家にこんな所あったんだ……」

「まぁな。俺たちはここがあるからこの家を選んだんだ」


 家の家の庭先にある一カ所に地下室への隠し扉があり、俺はあ父さんとその中にいた。


 中には沢山の本や地面に何かの魔法陣が描かれていて、魔女でも済んでいそうなそんな雰囲気のする空間となっている。


「……実はな父さんの家系は代々何故か沢山の、そして貴重な本を管理しているんだ。それは決して口外してはならないという約束付きでな。・・・少し早いがこの本の山をお前に上げようと思う」

「え?俺に……?」

「ああ、実はな。この本の山には様々な魔法や魔法陣に着いて、そして珍しい魔法まで乗っている……が、何故か俺も俺の父親も爺さんも魔法が苦手でな。宝の持ち腐れになっていたんだ。そこに魔法が得意な天才なお前が生まれた。ならお前にこれらを託した方がいいと思ってな……」

「そうなんだ……。それにしてもこの本の山をよく持ってきたね。他人に知られてはいけないんでしょ?」

「ふふ。それはね……。これがあるからさ。」


 と言うと父さんは棚から少し汚れた皮の袋を取り出した。


「……これは?」

「これはな。大変貴重な「魔法の袋」と言われているものだ。この袋の中には家数件分の物が何でもはいるんだ。……まあ生きている者は入らないがな。とりあえず論より証拠だ……」


 父さんはそう言うと近くにあった本を次々に袋の中に入れていった。


 しかし袋の大きさは拳二つ分くらいの大きさから変わらずどんどん本を飲み込んでいく……。


「……どうだ?本当にいくらでも入るだろ?」

「……信じられない……。どうなってんのそれ……」

「はっはっは!!これも決して他言するなよ?実はこれはあるドラゴンの胃袋からできているんだ。現在も王宮で少しずつだが生産はされている。だがその袋は値段が高く容量も家一軒分が限界らしい。だがこれは古代魔道文明の代物でな。何故か家数件分入るという貴重な物なんだ」

「……なんでそんなものがうちに?」

「わからん。だがこの袋とこの本は先祖代々うちが守ってきたものであり、そして受け継いできたものだ。……とりあえずこの袋は特殊な作りでな。まずはお前の登録をしてしまおう」


 袋の底には魔法陣が描かれており、そこに対象の人物の血を流し詠唱をすると袋の持ち主として登録でき、以降登録を変更しない限り登録者以外は使えない仕様になっているらしい。


 何とも便利なまさに「魔法の袋」だ。


 「魔法の袋」の古代魔道時代の物は貴重で王国でも数個しか存在を確認できていないらしい、が現在作っている者は先も述べたが貴族などはステータスとして持ち歩き、そして商業を行う物にとってそれを買う事は夢の一つであり、それを持つことによって「成功者:のレッテルが張られるそうだ。


 俺はまずは魔法陣に血を垂らし袋との契約をする。その後父さんと力を合わせて本を全て袋の中にしまう。


 袋は手をかざし中をイメージすると脳内に中の物がみえ、簡単に取り出せる様になっている。


「……。ありがとう父さん。こんな貴重なものを……」

「いいさ、それが決まりだからな。それとお前にはもう一つ教えておくことがある。それは「結界魔法」と言う本に載っている。まずはそれを取り出してみろ」


 俺は言われた通りに袋に手をかざし「結界魔法の本」を取り出すイメージをすると、手元がかすかに光り本がポンっと飛び出してくる。


「その中には結界魔法の全てが書かれている。……そして古代魔法「結界破壊魔法」もな」

「「結界破壊魔法」?」


 父さんは俺を招き近くの床に描かれている魔法陣の中に一緒に入り、魔法陣に手をかざして魔力を流す。すると魔法陣は光り、魔法陣の円の外側から真っ直ぐ上に光の半透明な壁が出来上がる。


「……これが「結界魔法」だ。試しに壁に触れてみろ」


 俺は言われた通りに壁に手をかざすと、半透明なそれは確かに固い壁のように感じ叩いても蹴っても壊れることはなかった。


「これが「結界魔法」だ。「結界魔法」は犯罪者を閉じ込めたり魔物を閉じ込めたり。、罠に使われたりする。これも初級から神級まであってそれに応じて壁の固さが決まっている。そしてそのまま壁手にを触れてみな」


 俺は言われた通りに壁に手を添え、父さんも俺の隣で壁に手を添える。


「……いいか?魔力の流れを感じるんだ。お前ならできる」


 父さんはそう言うと目を閉じ集中し始め、俺も壁に集中すると魔力は下から上へ流れていくのを感じる。

 そしてそれを遡るように上から下へ魔力を流し、まるで知恵の輪を解くような感覚で魔法陣の組まれている複雑な魔力を紐解いていく。


「……今だ!!」


 突然魔力が歪んだと思った時、父さんは壁を握りつぶし「パリィィィィン」という鏡が割れた音と共に魔法陣は破壊された。


「……ふぅ。これが「結界破壊魔法」だ。結界ってのはいくつもの複雑な魔法の糸を折り重ねてできている。それを魔力を遡らせて魔力を紐解き、そして歪んだところで壊す魔法だ。……感じられたか?」

「……うん。父さんの魔力が壁を伝って地面に書かれている文字の周りをどんどん紐解いていくのが分かったよ」


 そういうと「やはり天才だな……」と小声でつぶやく。


「……全く。それを俺が感じられるようになったのは訓練を始めて半年もかかった時だったのに。……これが才能って奴か。」


 父さんはそう言うと地面に書かれ、恐らく先ほどの魔法で壊れた文字を書き直し再び結界をな造り始めた。


「……さあ、おまえならできるはずだ。この結界を破壊してみろ」


 俺はそれから数日にかけて「結界破壊魔法」の訓練をし、無事習得することが出来た。



 そんな毎日忙しく過ごしている雪の日。


 家の食卓には豪華な食事が並んでいる。


 今日は俺の9歳になる誕生日だった。


「おお、今日は朝から豪勢だな!!」

「ふふ。チャールズの誕生日だもの。今日はずっと豪華な食事を用意してあるわ。」

「わー!!やったー!!あ、お兄ちゃんお誕生日おめでとう!!」


 俺の誕生日は食事のついでか、とミアにツッコミそうになったが、まぁその笑顔は天使そのものだったので良しとしよう。父さんとの朝の訓練を終え「クリーン」の魔法で体を綺麗にしてから食卓に着き、ミアはお気に入りのクマさんのぬいぐるみを抱えながら二階から降りてきた。


 食卓には朝からアップルパイに様々なサンドウィッチが並んでいた。奥のキッチンには昼か夜に食べるであろう牛肉の赤ワイン煮込みが鍋の中でぐつぐつと煮え、何かのケーキを作っているであろうお菓子を作る道具が並んでいた。


「「「「いただきます!!」」」」

「うん!!美味い!!……ところでチャールズ。ビビちゃんとはうまくいってるのか?」

「ブッ!?……何をいきなり聞いてるんだよ父さん」

「あら、私も気になるわ。女の子をあんまり待たせちゃだめよ?」

「ぶー!!お兄ちゃんはミアと結婚するの!!他の女をたぶらかせちゃダメ!!」

「……ミア。どこで「たぶらかせる」なんて覚えた?」

「おい、チャールズ。ミアと結婚など父さんが許さんぞ!?決闘だ!!娘は誰にもやらん!」

「ふふ。チャールズと貴方の決闘なら私はチャールズに着くわ。可愛い息子を倒そうとする悪い夫は凍らせるに限るわね。ふふふふ」

「あ、ごめんなさい。やっぱり決闘はよくないな。平和的に話し合おうチャールズ」

「父さん……。かっこ悪いよ……?」


 親馬鹿二人は今日も相変わらずだった。


 寒い冬もこの家はいつも暖かくそして優しい。今日は二月なのに珍しく雪も降らずにまぁまぁ暖かかったがそう言う意味ではない。


 本当に心から安らげ、そして尊敬できる両親に可愛い妹。俺の前世にはない理想の家族の形がここにはあった。


 俺はいつまでもこんな家族でいたいなと心から思い、家族を心から愛していた。


 ……だがこの日を境に全ては壊れてしまった。


 俺の暗くて長い人生の幕が、今日開かれたのだった。


 ……それは突然やってきた。


「……おい!!アントにー!!リリー!!大変だ!!「スタンピート」がこの街に来るぞ!?」


 俺達が朝食を楽しんでいる時、サンドウィッチ屋のジェニスが家に飛び込んできた。俺達は突然の出来事に一瞬固まったが、次の瞬間父さんと母さんはすでに動き出している。


「チャールズ!!戦闘準備をしてミアを連れて協会の地下室へ!!急げ!!」


 父さんの今まで聞いたことのない緊張感のある叫びに俺はハッとし急いで二階へ上がり動きやすい戦闘服に着替える。念のため「魔法の袋」を腰にくくり、木刀を持って一回に降りるとすでに父さんと母さんは恐らく冒険者時代の服装だろう、を着て玄関の前に立っていた。

 ミアはどうしたらいいのかわからず、父さんの隣でクマさんのぬいぐるみをギュッと抱きしめて怯えて立っていた。


「チャールズ。本当は後で渡すはずだったがこれを。こんな時だが誕生日おめでとう」


 父さんは俺の伸長にあった短めの剣を手渡してくれた。


「……これは「ミスリル」という貴重な鉱石で出来た剣だ。絶対に折れない剣だ。だからこれでミアを守ってくれ。……お前ならもう状況が読み込めてるな?」

「そうか……。チャールズの誕生日だったか。そんな時にすまない。だが街の一大事なんだ。それにこの街でも特級冒険者は二人しかいないんだ。……わかってくれ」

「ジェニス。大丈夫よ。チャールズは賢いから全部わかっているわ。……それじゃ二人とも。あとで会いましょう」


 母さんはそう言うと父さんと一緒に俺たちをギュッと抱きしめて「愛しているよ」とだけ言って走っていった。


「……お兄ちゃん。ミア怖いよ……。」

「大丈夫だよ。お兄ちゃんが付いてるし、父さんと母さんが凄く強いのは知っているだろう?必ず後で会えるから、今は父さんの言う通りに教会に行こう」

「……わかった」


 俺はできるだけミアを安心させるように語りかけ、そして教会へ向う。


 「スタンピート」

 

 それは普段群れをなすことのない魔物がある一定の条件下でしか起こらない珍しい現象だ。条件とは空気中にある魔力が何故か一カ所に大量に集まっているとき、又は強い魔物の出現で縄張りを追われた魔物たちが一斉に逃げ出した時だ。


 そしてその時怒るのがスタンピート。簡単に言えば魔物の大群が一カ所に押し寄せてくることだ。


 スタンピートと呼ぶ定義には最低でも500体以上のモンスターが一斉に押し寄せてきた時にしか使われない言葉で、小さい町などがその道中などにあるとその後、そこには何も残らないといわれている。

人も、町も全てを飲み込んでしまうのがスタンピートだ……。


 街は慌ただしく、走って北門に向かう冒険者たち、急いで街から逃げ出す者、家族と離れて急いで協会へ向かう子供達……。


「……この街は冒険者上がりの人達で溢れている。皆戦うんだ。だから大丈夫……。」


 俺はミアに言いながら、自分にも言い聞かせ教会に向かう。


「……チャールズ!!来たか。ミアもお早う。チャールズ。すまないが万が一の時の為にお前は儂と共に教会の前に待機していてくれ。ミアは先に地下室に」

「……わかった」


 俺は泣きそうなミアをいつもの地下室に連れていく。


 そこにはすでに多くの子共や女性、老人などがうずくまり避難していた。ミアは不安なのか俺の手を放そうとしなかったが俺はいかなければいかない……。


「ふう……。お忙しいところすみません皆さん!!初めまして!!俺はチャールズ!!この子は妹のミアです!!残念ながら俺は上に行かなければなりません!!どなたかミアと一緒にいてあげてくださいませんか!?」


 俺は勇気を出して大声で叫ぶ。


 すると近くにいた知らない姉妹が名乗りを上げてミアの手を引いてくれた。いつの間にかミアの周りには大勢の子供たちが集まり、ミアは何とか泣かずにその輪に入ることが出来ている。


 俺は心の中で「ありがとう」とつぶやき急いでノアの所に駆けつける。


「……状況は?」

「わからん。まさかこんな手を使ってくるとは……。いや、これは偶然のはずがない……」

「……ノア?」

「ん?ああすまん。状況は分からん。とにかく外の皆を信じるしか……」

「……ノア、このスタンピートついて何か知ってる?」

「……儂のせいかもしれん。いや、チャールズよ。お主なら素早く動けるじゃろう。一度様子を見てきてくれんか?」

「……分かった」


 ノアの言葉に疑問を感じたが外の様子が気になっていた俺は急いで屋根に上り、足から「ウィンドボール」を出しながら最短ルートで屋根の上を飛び越え北の城壁を目指した。


 ……伯爵邸の本でも、父さんにもらった本でもスタンピートを人工的に起こした事件などは載っていなかった。


 頭を振りノア言葉を忘れてとにかく急ぐことにした……。




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