現実を見ましょうか
「やっぱり第一王子よ!そして、国母になるのよ!」
「国母なんて荷が重いわ。第二王子のが無難じゃない?」
「えー、将軍様のが素敵よ!みたことある?あの筋肉!」
「筋肉なんか興味ないわよ。やっぱり宮廷魔術師でしょ。将来安定。そうそう、死ぬようなこともないし。」
「えー、でも寝暗そうよ?騎士様は?」
「あなたたち、おしゃべりしてないで手を動かしなさい!」
「「「「「はい!」」」」」
「あ、ところで先輩の押しは?」
「宰相様一択ね」
「「「「「さすが枯れ専!」」」」」
ここは、王宮の隅の隅の隅の隅の洗濯場。運び込まれるのは、王宮で働く人たちの洗濯物。だから、ほぼ、庶民とおんなじ。いや、庶民である。
少し不敬なことをいったところで、白い目で見られるだけで、放置される。だから、面白おかしく、ワイワイおしゃべりできる。
ちまたでは、庶民と貴族の恋愛物語や、庶民の成り上がりストーリーなどが流行っているが、まずない。あるわきゃない。宝石になれるのは、原石があったから。周りがどんなに汚い石でも原石があれば宝石にはなれる。でも、ただの石は誰かの特別になれることはあっても、宝石として、飾られ称えられることはないのだ。
「あなたたち!下世話な庶民の癖に私の婚約者に手を出さないでくれる?汚らわしい。きちんと言いましたからね?」
そして、今日もまた一人の令嬢が、こんな隅の隅の隅の隅の隅の隅の隅の…あれ?隅が多いか?洗い場まで来て、釘を指していく。
「あの方どなた?」
「さぁ?」
「昨日の人とは違う?」
「2日連続来た人はいないよー。さすがにそこまで暇じゃないでしょ?」
「小説の読みすぎだよね」
「てかさ」
「「「「「うちらみんな既婚者なんですけど。」」」」」
「あ、よねばぁは未婚だよ!」
「そうだ、御年70だっけ?さすがに無理じゃね?」
「いや、現役らしい。」
「「「「まじか。やるな、よねばぁ。」」」」
乙女ゲームの世界であっても、なくても、私たちが転生者で、その知識を持っていようが、なかろうが。今すごく幸せなんですよ。
ねぇ、ちゃんと見てから来てくださいよ。お姫様方。