初めての戦争
不死王は、スケルトンを中心に二百の兵で部隊を編成した。この部隊の目的は、敵領地への破壊工作と偵察である。自領域の検分は大分前に終わっているが、それ以外の場所の事は全く判っていなかった。部隊を送るついでである。
ちなみに破壊工作に関しては、敵にこちら側へ攻め込んでもらうために、人死にが出ても良いと指示を出していた。何なら村の一つでも壊滅させるぐらいの事をしても、許容範囲内であった。
部隊長はハイ・スケルトン。この派兵の裏の目的は、スケルトン兵がどの程度の戦闘ができるのかを知ることである。なので、実際の戦闘単位の編成で送り込む。使えるようならそのままで、駄目ならもう一度考え直しである。
しかし、この目論見は、半分成功で半分失敗に終わる。不死王は知らないことだが、王国は戦争慣れしている。独立して間も無いだけに、帝国からの派兵は続いている。さらに、独立したばかりの国を無視するほど、この地域は安定していなかった。
それらを凌いでいる王国の経験値は高く、今回の事態を受けて念のために部隊を送っていた。五百と王国側の部隊の方が数は多かったが、先に手を出すなとの命令が出されていた。
スケルトン側は敵地の偵察の為に、王国側は万が一の為に周辺の情報を集めていたので、遭遇戦が起きることは無かった。両部隊は昼前には相手を発見していたが、スケルトン側は相手の方が数が多い為に、王国側は命令の為に動きは無かった。
動きがあったのは、夜になってからだった。スケルトン側が夜襲を仕掛ける。骨人種は種族の特性上で、夜間の行動に何も支障が無い為である。スケルトン側は全部隊で突撃。王国側も警戒はしていたが、突撃を受けた箇所を中心に動揺が拡がる。
ところが、実戦経験の豊富な王国側はすぐに部隊を立て直す。そうなっては数で勝る王国側が有利で、被害の増えたスケルトン側は兵を引くしかない。双方共に相応の損害を受けた為、警戒しながらも撤退する事となった。
王国側としては想定の範囲内だったが、不死王としては想定の範囲外だった。まさか、王国側が領域の境目付近に部隊を展開させているとは考えてもいなかった。しかし、この実戦により、スケルトンは戦闘に使える事はわかった。これはこれで大きな収穫だった。他にも色々と知ることができて、不死の王としては得るものの方が多かったので満足していた。
だが、王国は少なくない戦線を抱えているのに、また新たな戦線を抱えてしまった。今までは警戒の必要の無かった方面に戦線を抱えるのは避けたかった。しかし、今回の戦闘で戦争に突入したと判断できるために、最悪の結果で終わったと言える。
そんな王国に、新たな情報が舞い込んでくる。以前教国に問い合わせていた、骸骨兵についての返書が届いたのだ。その内容を確認した王国は、今回の結果も踏まえて本格的な出兵が決定される。王国にとって、この出兵は何が何でも成功させなくてはならなかった。