春夏
掲載日:2016/03/14
「じゃりーん」
女の子は駆け巡る。声を上げながら。それはハチみたいに走り回る。転がって、何事もなく立ち上がり、台のてっぺんまで登った後は、勢いをつけて滑り降りる。手に持つ物は引っこ抜き、ポイッと放すか、気が向いて埋め戻す。
同い年でも、主導権はいつだって僕じゃない。不意に後ろに潜み、ポカリとやって逃げていく。理不尽さに、泣いたりはもうしない。やり返そうと追いかけるけど、キャハハと笑う主は足が早くて掴まえられない。女の子は飛び跳ねる。春の陽光。
「バイバーイ」
はねるはかえる。横いっぱいに広げた口。かえるは青い、今のうち。
卑怯にも、女の子は進んでゆくから。一足先に夏が来て、朱色をみる頃には、陰を忍ばせる。すまして離れて、置いてけぼり。バカに走り続ける僕の気持ちなど分かりやしない。
女の子は終わり。さよならは三角。
白と黒は語らない。
そして来る、春は次の季節。
「じゃりーん」
産み出された女の子が飛び跳ねる。男の子は後ろを追いすがる。それはまた、別の僕。追いつけないのだけが同じ。
青く焦がれ。また来てはしかく。




