お別れと新たな出会い 3
ギンファちゃんがライル君と一緒に故郷へと帰って行って、早数日。
新たに家の住人となったシェリーさんとその幼い息子さんも、段々と私達に打ち解けてきてくれている。
シェリーさんの息子さん、リシェロ君は、毎日愛くるしい姿で皆の後について家の敷地内をトテトテと歩き回っていて、とても和む。
ふさふさの耳と尻尾のついた小さな体で、『クーちゃ~』と私を呼びながら後ろをついてきた時には、思わずムギュッと抱きしめてしまった。
リシェロ君はふにふにしててふさふさしてて温かくて、とても抱き心地が良かった。
是非また抱かせて欲しい……。
「クレハ、それ、いくつ作るつもり?」
「え? ……あっ!?」
シヴァ君に声をかけられ我に返ると、目の前には山となった錬金術アイテム。
どうやらリシェロ君の感触を反芻してるうちに作りすぎてしまったらしい。
いけない、いけない。
「ご、ごめんシヴァ君。止めてくれてありがとう」
「いや……。けど、これ、今日ギルドに納める依頼の物だろう? 多い分は普通に売るのか?」
「そ、そうだね。うん、そうするよ。それじゃ、品も揃ったし、街に行こうか」
「ああ、わかった」
「イリスさん、シェリーさん~! 私達出かけて来ます~!」
トルルの街のギルドに錬金術で作った物を売るようになって数年経った現在、私は勿論、シヴァ君にも、指名で依頼がくるようになった。
それらは、この日までに欲しいという期限を依頼主が定めて、その品と数を期限までに納める事になっている。
今回受けた依頼はまだ期限には余裕があるけれど、期限内ならいつ納めても構わないのだし、買い足す必要のある食料と日用品がある為、今日街に行き納めてしまう事にした。
「は~い! 行ってらっしゃい、クレハちゃん、シヴァ君」
「行ってらっしゃいませ。ほら、リシェロ」
「あい! 行っちゃい、クーちゃ、シーちゃ!」
「うん! 行ってくるね! すぐに帰って来るからね~、リシェロ君!」
私とシヴァ君が玄関に向かうと、イリスさん達が見送りに出てきてくれた。
シェリーさんに抱っこされながら手を振るリシェロ君の姿が可愛いすぎる。
リシェロ君に後ろ髪を引かれながらも、私はシヴァ君と共に街へと向かった。