異世界生活始まりました
目が覚めたらそこは異世界だった。
見知らぬではない。見知ったゲームに似た、否そのままの世界だった。
そこに気がついたら自キャラの姿でいたのだ。
…こんなことならもっとしっかりキャラメイキングしとくんだったと、この時思ったとか思わなかったとか。
このゲームをやり始めたのは友達に誘われてだった。
それまでとくにオンラインゲームなどに手をつけなかった。あまりコミュニケーションができる方ではなかったから。
だが友達がいるなら、と手を出してみた。
基本知ってる人としか活動しなかったし、廃人と呼ばれる人たちに比べたら全然やりこんではいない。
ライトもライト、初心者だ。
それでもそこそこにレベルは上げていたし友達経由で知り合いも増えた。
もう一度言うが廃人と呼ばれる人たちとは比べものにならないくらいライトなユーザーだ。
特別好きなゲームではなかったし、気が向いたときにやる程度。
それなのに何故その世界に自分はいるのだろうか。
どうせゲームの世界に行けるならあのゲームの方が…と他のゲームが浮かぶ自分はなんだか場違いな気がするのだ。
ゲームの世界だと気がついたのは目に入ったポップ画面のおかげだ。見たことのある画面に、ここがゲームの世界ではないかと気がついた。
それでショックが無くなったわけではないが。
とにかくステータスを確認した。
キャラ名は登録した通り。
ステータスはゲームプレイ時と変わっていなかった、多分。
細かいことはあまり覚えていないが変わっていないと思う。
記憶の限りレベルも同じなのでそうだと思う。
思う思う続いて申し訳ないがそんな細かい数値覚えてる人っていないんじゃないかな。
とにかくここがゲームの世界だというのは確信できた。
「それでも場違いな気がするよねぇ…」
プレイヤー名ランタンは呟いた。
見た目は少女。パッと見る限り特別可愛いわけではないがブスでもない。
可もなく不可もなく。そんな容姿をしていた。言うなれば平凡だ。
それはとくにこだわりがなかったからだが、その姿になれた今ならもう少し美少女に作ればよかったと少し思った。
「とにかくここにいてもしょうがないか。
私以外にも同じような人いるかな?
一応フレンドリストは…出るけど反応ないなぁ」
数人の名前が表示されるが全員がオフラインだった。
自分がどうしてゲームの世界にいるのかわからないが、場違いな自分とは違ってきっとこのゲームが大好きな人が来ているのではないかと思う。
というかそうでないとなんかおかしいだろう。
目下の目標は近くの街に行くこと。
あとは現状把握だ。現実にゲーム世界で生きていくならいろいろ覚悟は必要だろう。
戦闘は…直接戦わない魔法でならいけるだろうか。
「いくらキャラのステータスが高くても実戦はまた別だと思うのですよ、うん。
ある程度はレベル高いからよかった。
これが1からだったら…苦行だよね」
いきなり目の前に怪物…モンスターがリアルにいたらパニクるだろう。いくら画面で見慣れていても。
リアルなのだ。
敵の毛並みも、鱗も、ネバネバも、ドロドロも、牙も、爪も、武器も、鳴き声も、うなり声も。
いくらなんでもそれが目の前にいて普通に戦える人は特殊…だと思う。はっきりいってその人の方が怖い。
何故この世界にいるのかはわからない。それでもこうして生きているからには生きるため生活しなければ。
死にたくはない。アイテムボックスには蘇生アイテムも入っていた。それでもさすがに生き返れるかは試したくはない。
誰が好き好んで死ぬか、そうランタンは思った。
「とにかく街だよ、街。
ええい女は度胸!行くぞー!」
…なんだか独り言がくせになりそうだ。
たまに出てくるモンスターに怯えながら(それでも魔法でなんとか倒しながら)ランタンは近くの街まで行った。
「わからん!」
街についてから集めた情報を考えながらそう叫ぶ。
ちなみに周りに人はいないので叫んでもおかしく見てくる人はいない。
「よくよく考えたら私はあんまりこのゲームのこと詳しくなかった!
ここしばらくやってなかったのもあるけど細かい設定とか世界観とか知らないし…」
やり混んでいなかったゲームなのだ。
オンラインになる前の、ただのパッケージの同じシリーズならばプレイしたことはある。
だがあくまで同じシリーズなだけでオンラインとは違ったはずだ。
基本のシステムは同じだろうが、ストーリーなどあまり記憶にない。
「うー本当になんで私なんだろう。
私より友達の方がこうなったら喜んでただろうに…」
あの廃人とまではいかないがヘビーユーザーの友人ならば嬉々として生活しそうだ。
そもそも自分はオンラインになったこのゲームに手を出すつもりはなかったのだ。それはコミュ力のこともあるし、ログイン率のこともあった。
リアルで社会人だった自分はなかなかログインできないのをわかっていたし、知らない人と(いくらネットとはいえ)交流をするのは怖かった。
それを友達の強引なまでの誘いですることにしたのだ。根負けしたとも言う。
実際ログインは少なめだったし、あまり他のプレイヤーとも交流しなかった。ただし仲良くなれば別だったがそこにいくまでが長かった。
「フレンドさんがせめていてくれたらいいのになぁ…」
だが自分のフレンドは片手で足りる人数だ。
この中の誰かが似たようなことになっていたらすごい確率だろう。
そもそもゲームの世界とはいえゲーム内とは限らないのだ。フレンドリストは当てにならないだろうか。
「当面はお金あるから生活できるとして…
そういえばホーム一応作った気がしたなぁ」
友達のすすめもとい命令で作ったのを思い出す。そこが残っていれば少なくとも生活はできるのではないか。
住むところがあればなんとかいける気がする。
だがホームはどこにあるのだろうか?
メニューを調べていく。
プロフィール…あった。
「ホームの場所はわかったけどどうやってそこまで行けばいいのかな…
移動魔法使えるのかな?選択肢でるかな?」
メニューから移動-ホームを選ぶ。
「すっごい!一瞬だ!」
見覚えのある部屋に移動していた。さすがだ。
ホームはごちゃごちゃしている。手に入れたインテリアなどをほぼ全て適当に置いているからだがランタンは気にしない。
「ものすごく郵便受けが主張してる…」
部屋に入ってからポップアップがずっと出ている。郵便受けは踊り狂っている。
メール機能はプレイヤーが直接受信するのと郵便受けでも受信できる。ランタンはコミュ力がアレなので郵便受けオンリーだ。
「メール…なんだろ」
踊りまくる郵便受けに近づくと受信ボックスが開かれた。
【受信:43件】
しばらくログインしなかったからだろうか多すぎる。
とりあえずは差出人をパラパラとみて重要なものを探す。
ほとんどは友達やフレンドさんだった。ログインが低いのは知っているので内容はもしログインしていたらという始まりでクエストの誘いだった。
他は運営からのイベント通知メールだった。
「…この世界に運営はいるのかな…?
現実にこの世界にいるけど、ゲームの世界なら運営はいるはずだよね?
メールして運営から返事とかくるのかな…?」
すぐにメール画面を開き、助けてと書く。送信ボタンを押して即座に送信出来ませんとでてきたが。
「…ダメか。そうなるとこの世界はゲーム内ではないということだよねぇ。
やっぱり異世界なのか…?」
どっちにしろ生活していかなければならないことには変わりない。
難しいことを考えるのは疲れるから、ランタンは現実逃避に寝ることにした。目が覚めたらもとの現実に帰ってないかなと期待しながら。
「ですよねー」
目が覚めても変わらないことにランタンはそうつぶやく。
そんな簡単に帰れたらどれだけ良かっただろう。
「目が覚めたら異世界でした、なら眠ったら帰れましたでもいいと思う」
一応異常がないかステータスを確認しておく。一晩寝たためHP/MPは満タンだ。
「ホームの外に出たくない…」
移動魔法で来たためホームの外に何があるのかもわからない。
ゲーム内ではないならホームのある街はどうなっているのだろうか。他のプレイヤーもいたりするのだろうか。そしていたらその人とコミュニケーションとれるだろうか。
そんなことを考えていたらどんどんネガティブになっていった。
とりあえず窓から外を確認することにした。…が窓はあくまでインテリアで外が見れなかった。
仕方なくドアを少しだけ開けて外を見ることにする。
そっと覗いた外は…静かだった。
あたりはプレイヤーのホームが並ぶ街だけあって華やかな雰囲気の建物が並んでいる。
それなのに人の気配がしないのだ。
ゲームの時ならお店をするプレイヤーがいて街をぶらぶらしているプレイヤーもたくさんいた。そんな人が誰もいなくて閑散としている。
ある意味怖い光景だが誰もいないなら外に出ても大丈夫だと思った。
「見事に誰もいないねぇ。
もし他の人がいてもホームの中にいたらわかんないよね」
ホームは隔離した空間のため外のことは一切伝わらない。
ドアをノックすれば中の人に伝わるが一軒一軒ノックして回りたくはない。そんなことしたら何日かかるのか。
見えるだけでも何軒あると思っている。プレイヤーのホームしかない街だ。すくなくともプレイしていただいたいの人数分あるはずだ。たしか数万人はプレイしていたはずだ。それら全てノックして回るなんて拷問に近い。
「プレイヤーがいるかなんてわからないしなー。
そんな機能あったかなー」
やり混んでいないばかりか機能すら覚束ない。やはり自分がここにいるのは場違いな気がした。
「ホームに帰ってきながら近くの街で適当にクエスト受けて生活する、かなぁ?」
生きていくため順応するしかない。そう結論づけた。
それにそういう冒険者ギルドなどにいけば他のプレイヤーの情報など手に入るかもしれない。きっと私以外はヘビーユーザーや廃人だと信じている。そんな人が目立たないわけがないだろうから。
「知らない人に話しかけるのは怖いけど一人でいるのは辛いもんね。いい人がいたらいいんだけど」
この際この世界の住人でいいから気軽に話せる人が欲しい。
こうしてランタンの異世界生活が幕を開けた。
* * * *
異世界生活にも慣れてはや数ヶ月。
近くの街のギルドに登録して少しずつこの世界のことを調べている。調べるといっても生活に必要な知識だけだが。
今さら難しいことなどわからないのだ。ランタンの中の人はそこまで頭がよろしくない。いくらステータスに知性があってもそれは関係ないことだ。これは本人のやる気の問題である。
「今日もクエスト完了ー!」
そんなわけ(?)でランタンはどんどん異世界に慣れていっている。人間住めば都。少なくともこの街の付近には高レベルのモンスターは出ないのでランタンに命の危険はない。
今日も今日とて簡単な討伐クエストをこなして生活していた。
「クエスト完了なのでお願いしますー」
ギルドカードを出しながら今ではすっかり慣れたカウンターの人に言った。
「はいお疲れ様です、ランタンちゃん。いつも通り怪我はないようだね?」
ランタンのアバターは少女である。子どもではないが大人とも言えない、そんな年齢の少女である。
そんな少女が討伐クエストを受けるのだ、最初はとても心配された。ランタンがなんでもないように毎回帰ってくるので今では何も言わないが。それでもいまだ怪我の心配をされる。
そんな優しい人だったので知らない人が苦手なランタンもカウンターの人には慣れた。
「ないですよー。あんなモンスターに負けないですよ!」
あんなモンスターとはいうがこの付近では強めのモンスターである。それを年端もいかぬ少女が軽々と倒す姿はなんとも異常であったがランタンは気づかない。
「それならよかった。はい、報酬はいつも通り振り込んだよ。今日はこれで帰るのかな?」
「少しお買い物していこうかと。たまにはのんびりしたいですし見て回ろうかな」
数ヶ月経つがじっくり街を見たのは数回だけだ。
そろそろ買い物したり買い食いしたりしてもいいかもしれないと思ったので今日はそうしようと決めた。
「時間があるなら掲示板にまた新しいのが貼られてるから見て行ったら?ランタンちゃんたまに見てるでしょ?」
依頼が貼られている依頼板の方ではなく伝言などお知らせが貼られている掲示板。
他のプレイヤーについての情報がないかとたまに確認しているがほとんど意味は無かった。見る度にガッカリしているのを見られていたらしい。
「…そうですね。そうします」
どうせないのだろうが、見るだけならすぐ出来る。そのあとのんびり街を見よう。そう思いながら見た掲示板。そこには信じられないことが貼ってあった。
《プレイヤー集う》
プレイヤーの文字。その下には場所と数字、名前が書かれていた。プレイヤーにしかわからないホーム街の名前が。数字はプレイヤーに当てられるユーザー番地だろう。
ここに来て数ヶ月、望んだ他のプレイヤーの存在。
すぐさまメモしてその場所に向かった。
早く会いたかった。どんな人か不安もあったが、それでも誰かに会いたかった。
メモしたユーザー番地を探す。早く、早く--!
画面で確認してようやく目的のホームにたどり着く。
そのドアをノックしようとして、そこで固まった。他の人に会いたかった。けれど会うのがここにきて怖い。
本当は同じように伝言でもなんでもすればよかったのだ。それをしなかったのは怖かったから。
メモした名前は知らない人だった。どんな人かわからない。でも会いたい。でも怖い。
どれだけそうして悩んでいただろうか。もし他の人がいたらドアの前でずっと固まっていた少女は怪しかっただろう。
「きみプレイヤー…?」
顔を向けるとそこには男の人がいた。
おそらく同じプレイヤーなのだろう。でなければプレイヤーかと聞かれはしない。というかここはプレイヤーしかこれない街だ。ここにいるのはプレイヤーしかいない。
そう理解した瞬間ランタンは泣いた。年甲斐もなく。いや見た目だけなら年相応だ。なんたってアバターは少女だから。
泣かれた相手はたまったものではないが。
「うあぁぁぁぁん!!!!」
「え!?ちょ…?泣かないでー!?」
静かな街にそんな叫び声が響いた。
「えっと、落ち着いたかなー?」
差し出されたお茶を飲みながら少しは落ち着いたランタンはうなづく。落ち着くとともに恥ずかしさもこみ上げてきたが今は他の人に会えた方が嬉しかった。
「プレイヤー、なんだよね?この街にいるし…」
男の人は掲示板に載せたプレイヤーだった。まさか頼んでこんなすぐに他のプレイヤーが来るとは思っていなかったらしい。
「他の人いて、嬉しかったの…」
だから泣いても仕方ないのだ。ランタンはそう結論づけた。
「うん。僕も他の人がいて嬉しいな。
どれだけの人がこっちにいるのかわからないし…全然会わないからダメ元で掲示板に貼ってもらったけど…
こんなにすぐに会えるならもっと早くすればよかったね」
「会えたから、いい。
…えっと、プレイヤー名ランタンです。あらためて、その、はじめまして」
自己紹介もしてないことを思い出して名乗る。リアルの名前ではなくていいだろう。どうせ今はこの名前でしか呼ばれない。
「ランタンか。掲示板にも貼ったけど僕はヒビキ。よろしくね」
「ランタンはいつからここにいるの?」
「四ヶ月くらい前かな。ヒビキさんは?」
「僕もそれくらいだね。ランタンはこのゲームよくやってたの?」
「…正直あんまり。だからなんでここにいるのか余計わからないの」
こういうのってすごいハマってる人がなるものだよね?と続けるとヒビキさんは笑っていた。
「確かにね!ランタンに比べたら僕はヘビーユーザーだね。やりこんでたよ」
こういう人がなるべき現象が自分にきても嬉しくない。私は嫌な顔を浮かべていたのだろう。ヒビキさんはさらに笑っていた。
「やりこんでいたからこうしてゲームの世界に来れたのは嬉しいけどね。でも何のためにこうしてきたのかわからないし、他のプレイヤーにも会わないから不思議でね」
デスゲームとかではないだろう。それなら運営か何かが接触してきそうだし。
「でも街でランタンに会ってもプレイヤーだとは気づかないだろうね。他の住人との違いがさっぱりわからないから」
確かにプレイヤーだからとわかるものはなかった。自己申告しなければ見分けなどつかないような気がする。
「プレイヤーだとわかる何かないのかな…?」
アイテムでもスキルでも何か。
ちなみにスキル・調べるは名前とHP/MPしかわからない。役立たずめ。
「うーん特に浮かばないなぁ。でも何かないか探してみるよ。
一応大半のアイテムは網羅してるから調べてみる」
あ、はいさすがヘビーユーザーですね。やっぱり私場違いじゃない?
「ヒビキさんはすごいやりこんでたのね。私あんまりアイテムないよ」
武器とか除くと回復と少しのイベントでもらえるアイテムくらいだろうか。ちなみにもったいなくて高価なアイテムなどは使わないでとっておく派だ。一番安いアイテムをひたすら使うタイプです。
「集めてたからね。ランタンはそこそこにあるならいいと思うよ。ほら、僕はヘビーユーザーだからね」
コンプとかしたいよね?と爽やかに言われた。
でも私もハマっていたゲームはフルコンプをしていたので何も言わないでおいた。…言えなかった。
ようやく会えた他のプレイヤー、ヒビキさんとしばらく行動を共にすることになった。といってもパーティ登録しただけだ。これなら連絡がすぐにとれる。お互いに誰かにあったり何かあったらすぐ連絡をとることを決めた。
本当はダンジョンなど一緒に行きたかったが、如何せんレベル差がありすぎた。
ヒビキさんはバージョンアップがあるたび上がるレベル上限を極めていた。私はたまにしかログインしていないのもありレベルは100にも届かない。
私が行くようなダンジョンではヒビキさんは暇すぎる。そんなこともあり別行動だ。
その後同じように他のプレイヤーがヒビキさんを訪ねてきたり、その時ヒビキさんがとても有名なプレイヤーだと知ったり、出会ったプレイヤー全員高レベル(というかカンスト…)で一人低かった私のレベル上げをしたりした。
本当になんで私ここにいるんだろう…
* * * *
「本当に残るのかい?」
「うん。私が行っても足手まといでしょ?
みんなが帰ってくるの待ってるよ」
ヒビキさんが心配して言ってくれているのはわかっているが、レベル差は未だヒドイのだ。…それでも100は越えたが。
そんな私はカンストしている他のみんなの足手まといにしかならない。だから待ってると決めた。
「ランタンちゃん健気!かわいい!」
「すぐに倒して帰ってくるからな!」
見た目もあり完全子ども扱いだがもう気にしない。別に抱きしめてくるリサ姉さんのナイスボディに嫉妬なんてしていない。してないったらしていないのだ。
他のみんながすごい美男美女でも私は気にしていない。…気にしてないからぁ!
こうして私以外のみんなは魔王討伐に向かった。ちなみに行く理由は暇だからというものである。カンストしているみんなは世界中を旅してあまりやることがない。
そんな時に魔王が出現したと聞き行くことになったのだ。暇つぶしに。
レベルカンスト・全職業マスター・アイテムフルコンプのメンバーで苦戦するのかわからないが戦闘になったら私は邪魔にしかならないだろう。
…改めて考えるとこんなメンバーで苦戦したりするのかな?魔王大丈夫かな?
みんなが魔王討伐に行き、一週間が経った。
パーティ登録しているのでみんなからメールが頻繁にきてあんまり寂しい感じはしないかな。
暇なので今は縛りプレイをしているらしい。ちなみに内容は魔法・スキル禁止。一応世界の危機なんだけど…
いやでもカンストプレイヤーが18人もいたら何でも倒せると思うよ。それでなくても私以外はレベルが高い人ばっかりなのだ。
やっぱり私場違いじゃないかな?友達と間違えられてない?
それからまた一週間経った。
なんだか途中空が暗くなったり雷がすごかったり、竜巻が起きたり、なんだかモンスターがすごい活発になったりした。わかりやすいね。
みんなは魔王のところに着くまでは縛りプレイをまだ続けているようだ。それでも普通に行けるあたりこれがカンストの威力なのだろう。悲しいけれど私には無理だ。
そうしてまた一週間が経とうとした時。明らかに今までとは違う暗い世界になった。夜とは違う。完全な闇だった。
私は怖いからホームにこもったのでそのあと何が起こったかは知らないが、なんかすごかったらしい。
ちなみにみんなはもちろん魔王と戦っていた。さすがに倒せなかったら危ないので縛りは無しの全力攻撃だ。
というかそんな大切なときに私にメールしてていいのかなぁ。
がんばってね!と返信すると普通に返事くるんだけど。
まぁみんなが戦ってるのにのんびりお茶を飲んでいる私が言えた義理ではないかもしれない。
あのメンバーで負けることはないと思うし、負けたらこの世界の人誰も勝てないと思うからね。つまり私の役割はないんだよ。
だからのんびりお茶飲んだり、お菓子食べてても罰は当たらないと思うよ、うん。あー、クッキーおいしい。
みんなから中継のようにメールがくる。今魔王は第二形態になったそうだ。ちなみにショット付きできてるので様子もバッチリだ。うわーそれっぽい!
しばらくしたら倒した魔王を踏みつけてとったどー!とメールが来た。みんなノリいいね…
それからみんなは世界を救った勇者としていろんな国に招かれて、なんか煌びやかなパーティーとかに出てた。私は行ってないというか勇者じゃないしね!パーティーのショットを送られてきたので知ってるだけだ。
それをキッカケに国の偉い人になるメンバーやもっと違うことをしようとなんか偉くなっていくメンバーが出てきた。
ホームに戻ってきたメンバーはとても少なかった。どこかに旅をし始めるメンバーもいたから余計に。みんないい暇つぶしになったと言ってた。
私は以前と変わらず討伐クエストをやりながらのその日暮らしだ。お金はあるから正直クエストをしなくても食べていける。けど引きこもってるのもあれだし、体を動かしたいから毎日のように街へ行きクエストをする。
私だけがホームにほとんどいる状態だ。時折帰ってくるメンバーはお土産をくれる。何故か最近はみんなが抱きしめたり頭を撫でたりしてくる。…疲れてるんだと思う。
ちなみに見た目は変わってない。少しは成長してほしい。どことは言わないけど。胸とか、胸とか、背とか背が。
「ランタン元気かい?」
そう入ってくるなり言ったのはヒビキさんだ。今は隣の国にいる。
「ヒビキさんだー!元気だよ!」
久しぶりに会うのでちょっぴり懐かしい。ヒビキさんはなんだか楽しそうに私の頭を撫でている。やっぱり疲れてるのかな?
「お土産のお菓子だよ。…ランタンやっぱり一緒にこようよ。一人じゃ寂しいでしょ?」
ずっとここにいる私を心配してかみんな自分のところにおいでと言ってくれる。
「みんなメールくれるし、よく来てくれるから別に大丈夫だよ?」
数日に一度はみんなメールをくれる。会ってはいないが一人な気分はあまりしないのが現状だ。みんなのメールである意味賑やかな毎日です。
「ランタンはしっかりものだよねぇ」
ヒビキさんはため息をつきながらそうつぶやく。いや、あの、見た目子どもでも中身は社会人ですからね?
あ、でもリアルについては言ったこと無かったかも。私子どもだと思われてる?
「あのね、ヒビキさん」
「なに?」
「私これでもリアルは社会人だったんだけど…」
そういうとヒビキさんはビクっとした。しばらくして恐る恐るといった感じで口を開いた。
「…マジ?」
「成人してるからね!子どもじゃないよ!」
なんだか考えているヒビキさんに主張しておこう。断じて私は子どもじゃないと!
確かに初めて会った時の大泣きしちゃったけど。その後も子どもみたいだったかもしれないけど。
「てっきり中学生かと…」
ガーン!
「いやほら、見た目がね!子どもだったから…」
もしかしてみんなそう思ってるのかな!?だからみんな子ども扱いなのかなー!?
その後泣き崩れる私をヒビキさんは申し訳なさそうにしておいて帰った。しばらく一人でいたいです。
ヒビキさんから私が成人していると聞いたのかその後みんな会いにきた。心配の声にまぎれて「大丈夫だ!イケる!」「ロリで通用する!」というのが聞こえたんですけど。コワイ。
リサ姉さんは抱きしめながらそのままの私が好きと言ってくれた。うわーん!私大人だもん!
いたたまれなくて逃げようとしたらあっという間に捕まえられた。
くそぅカンストプレイヤーめ!ステータスほとんどカンストしやがって!
逃げようとした私は女性キャラによる抱きしめの刑に処された。美女アバターが憎らしい…!というかそろそろ息し辛いから放してください…
ランタンがついに酸欠で気を失った後のことである。
「きゃーランタンちゃーん!!!」
「やりすぎちゃった!?」
「いやーん倒れてる姿もかわいいー♡」
「羨ましい…!俺も…」
「ランタンちゃんマジ天使」
「中身が成人しててもこんなに子どもっぽいなんて…アリだ!」
「( *`ω´)」
「癒しだよな」
「調子にのってアバターカッコ良くしたのはいいけど右も左もそんなキャラばっかじゃなぁ。ランタンちゃんが癒しだなホント」
「ギザカワユスwww」
「いやお前ら介抱してやれよ…」
「通報シマスタ」
「変態だと思う。憐れ」
「合掌」
「こんなやつらに好かれたランタンちゃんが可哀想だ。だがわからんでもない」
とか会話があったとかなかったとか。
ランタンが目を覚ましたのはそれからしばらく経ってからであった。
起きたランタンはとりあえずどうしようかと悩んだがカンストプレイヤーからは逃げられないので、現状維持にすることにした。決して現実逃避したのではない。考えるのを放棄した訳ではないのだ。
そうしてランタンの異世界生活は続く。
お読みいただきありがとうございます。
よくある設定で書いてみました…があえての脇役主人公。
誤字・脱字・矛盾はそっと作者に教えてくださると嬉しいです。
いろいろな某ゲームの設定ごちゃ混ぜです。
そしてひとついうと作者はオンラインゲームしたことないです…