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シロアリ

「絶対におかしいです!」


俺は課長に食って掛かっていた。


「実験用ワンドの芯金をティーナ製の大量生産品に置き換え!?安全基準クソ食らえの国で作られたそれを、大出力のワンドに使ったらどうなるかなんて分かるでしょう!?なぜそんな愚かしいことを!!」


「――分かっている。分かって、いる」


課長は声を絞り出す。


「それでも、やらないといけないんだ、青山君。上からの指示だ」


「上って……」


「……社長だ。分かってくれ」


課長は声を潜める。


「俺は、あの忌々しい左巻きを、社長とは認めていません」


「青山くん、声を落として。もし聞こえでもしたら――」


「俺は!前社長に恩義を感じてこそ!ここに居るんです!奴がトップの今のこの会社は、どうでもいい!」


俺はそう吐き捨て、踵を返した。棚から有休申請書をひったくると乱雑に「私用」と書きなぐって押印し、同僚に「課長に渡しといてくれ」と告げてさっさと出て行った。



◯ ◯ ◯



大帝ワンド。俺が勤める会社。

魔法杖製作企業だ。規模はさほど大きくはない。せいぜい従業員数500人。しかし、その納品先は多岐にわたり、主要取引先は研究開発に重きを置く大企業、果てはヒノモト軍や、ヒノモト同盟国の軍まで。


少数精鋭の職人と設計技師による徹底した高品質の魔法杖。それが自慢だった。


俺は10年前に先代社長に拾われ、杖設計を叩きこまれた技師だ。


「おかしくなったのは、奴らが来てからだな……」


他に人がいない、がらんとしたロッカールームで着替えながらひとりごちる。


「我が社でも労働組合を作ろう」、そう誰かが言い出した。

正直、現状の労働環境には皆満足していた。だから、ごっこ遊びのようなものだった。

それが「社外顧問」なる人物が招聘されて一変した。


度重なるストライキの強要。無理な賃上げの要求。

業務よりも組合活動に血道を上げる連中がどこからとも無く現れて会社に根を張り、昇給に目が眩んだ従業員を取り込んで拡大。


顧客第一を信条に掲げた先代社長は無茶な要求に耐え切れず、組合の突き上げにより解任にまで追い込まれ、そして組合派が実権を握った。

仕事よりも出世と金と飲み会が好きで、実務に何の役にも立たない連中が。


そしてそれから五年で、会社は滅茶苦茶になった。

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