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デートへの誘い

 職場の近く道路で、羽を広げた鳥が空高く飛んで行った。


 そして視線を降ろしふたたび、非番の明日、彼女を明日のデートに誘う事について考えだす。


 結月(ゆづき)さんのそばに居て、人間の姿で過ごす時間を増やそうと考えてはいたのだが、いろいろ考えすぎて前日の今日になってしまった。


 犬の黒の時の様に、ただ彼女のまわりにいるだけでは、怖がらせてしまうだろうからと思い考えた末、デートを誘おうという考えに至った。



 玄関の前で息を少しととのえて「ただいま帰りました」そう、玄関を開けて入ったのに、いつもの様に結月さんが玄関に出てこない……。


 慌てて片足ずつ足をあげて、靴を脱ぎ棄てて、廊下を進んでいく。珍しく彼女はリビングルームのソファで、寝てるようで台所まで行くと、絹さんが一人で台所を切り盛りしていた。


 出来たばかりのふかし芋を摘もうとすると、手をいきなり叩かれる。


「つまみ食いは卒業したと思ったらあらまぁ」


「所帯を持ちましたね。一応そういうのは卒業しましたが、たまには青年らしさを見せたまでですよ」


「それならやる事はやるもんですよ。結月ちゃんもいつまで待ってくれませんよ」


 そう言って菜箸を片手に、ほかほかと湯気の昇る釜の蓋をあけた。その横で俺は手を洗い、彼女からおひつを借り受け、しもじでご飯をすくいとっていく。


「そうですね。彼女は根が優しくて、俺の事も受け入れてくれるかもしれません。ですが、今の俺には彼女に、俺がいいって言って貰える理由が思い浮かばなくって困っています。失敗はしたくないですから。」


「まぁまぁ、あの小さかった坊ちゃんが微笑ましいですねー。そうやって結月さんの事を考えられる内は大丈夫。失敗してもいいじゃないですか」


「そうでしょうか……。あっそれで今度、結月さんと繁華街の方へ行こうと思うのですが、絹さんも行きませんか? 結月さんもきっと喜んでくれますよ」


 先輩でもある絹さんにそう言われると嬉しく、心が温かくなっていた。しかし返事はうって変わって――。


「やなこったですよ。今の様に彼女にご飯を入れて差し上げればいいじゃないですか? 彼女のまわりをデレデレ顔でうろつくよりいいと思いますよ」


「でれでれ顔……、そんなですか?」


「結月さんはよっぽど黒ちゃんが好きらしくて、黒ちゃんの話はいろいろと聞いてますよ。ええ、いろいろとね。ってほらほら、おひつ落とさない様にしてくださいましね!」


「はい……」


「はい、ありがとうございました」


 母親の様な絹さんにデレデレと思われていた事に、少しショックを受けて、ご飯をつぐ手を止めてしまっていた。すると彼女は僕からおひつを受け取ると、ささっとご飯をつぐ。そして背筋をしゃんとしてダイニングの方へ、それを持って行った。


 頼りないだろう俺は、やっぱり絹さんには敵わない。それについてはしかたない。結月さんがいつ起きてもいいように、風呂へまず行く事にした。


「湯あみに行ってきます」


 そう小さな声で絹さんに、声をかけてると「ごゆっくりどうぞ」と、彼女も小さな声で返事をした。


 ☆


 風呂上がり、料理を作り終えて帰宅した絹さんを見送ると、長椅子で眠る少しあどけなさの残る彼女の顔を、チラチラと見ながら本を読んでいた。


 いつもならガッリ犬の姿になり、ガッリ彼女の寝顔を眺めるけどのだけど……。釘をさされた後なので気が引ける。起こすべきか、ベッドへ運ぶべきか、それが問題だ。


「ベットへ運ぶか」


 彼女を持ち上げると、思った以上に軽い事に驚く。いつもの彼女の石鹸の匂い。でも、軽すぎないか? むしろ犬の時の私が、彼女の膝に乗って、彼女は普段平気なのか? 逆に彼女が力持ちなのか? 犬の時の私の質量は、どこへ行ってしまっているのか? 


 そう思考を重ね、雑念を捨てる。寝室のベットに彼女を寝かせて、彼女の手を取る。


「細い……」


 彼女が力持ちという説はなくなった。なら私の質量はどこへ……。そして彼女は眠っている……。本当に眠っているのだろうか? 今、眠っていない場合、彼女に晩御飯だって知らせなければならない。


 ベットで体を支えて、口づけしても彼女は起きなかった。自然に口角が上がる。ここでそういう気持ちに浸るのはあまりよくないだろう。彼女にはすまないが、先に夕食をいただく事にしよう。正直言って、空腹でしょうがなかった。


 そして彼女を残し寝室を出た。


 身近な人々に見守られてる。それを結月さんと暮らすことで気付く事ができた。全部彼女のおかげだろう、彼女が目覚めたらデートへ誘おう。そして真実を伝えて駄目なら……駄目なら結月さんのことを諦められるのだろうか? 今の生活を手放したくない……俺はそのために何かしただろうか? どうだろう? ただの犬として暮らしただけだったかもしれない……。



 あれから三十分ほどしてもう一度、寝室に行きノックをすると……。


「あっ、はいー」


 彼女が慌てて出て来た。正直少し乱れた姿を期待したのだが、そんな事はなく。それでも髪を撫でつけてきた姿は可愛くもあった。


「ごめん、寝てるところを起こして、変な時間にあまり寝てしまうと、よく寝れなくなるからね」


「すみません、食事の用意もしませんで」


「あぁ、それは絹さんが用意してくれた。僕は先に頂いたが、食事がない日は外食もたまにはいいと思うよ。前もって言ってくれたら、買って帰るし、それより君のご飯だ」


「はい、あの黒ちゃんは?」


「僕が食事を用意したら、不服そうにしていてそのまま寝たよ」


 結月さんはふふふと笑い、僕は彼女をご飯へと追い立てた。いつもと逆でなんだか楽しい。そしていつもと変わらない雰囲気で安心もした。


 そしてダイニングテーブルに向かう、彼女について行き料理を運ぶのを手伝いをする。


 そして食事中に綺麗に食べる、彼女に関心して見ていた。彼女はふと恥ずかしそうな表情をしたと思ったら、もじもじとしながら俺に問いかける。


「あの……何か?」



「結月さんが優しいので、見ていても怒られなさそうなので見ていたのかな? 理由については自分でもちょっとわからない。見ていたかったんだ、君の事。でも、結月さんが嫌なら大丈夫言ってくれればわかるよ」


「黒ちゃん」そう言われて、一気に冷や汗が出る。「も、そうなんですよね――、あの子は食べ物に興味があるだけでしょうが、やはり似てるんですねー」


 そこで、俺は不用意に慌てつつ、話をそらす為に予定していた話をする。


「ところで、明日繁華街へ行きません? 少し遠くて電車で行くのですが、必要な物まだあるでしょうし」


「それとは別にしばらく黒はちょっと預けると言うか、帰って来ない日もあって、出来たらそんな日は、俺を見て欲しい、その間だけでも伝えたい気持ちがあるんだ。でも、そんな俺の犬飼の家から受け継いだ血は、正直言って出来損ないで……、だが同情や哀れみは受けたくない。そんな人生なら俺は一人で生きる。それは君にも知っててほしい。お願いだ」


 そうお願いだ。俺は同情や哀れみで君を縛り付けたくない。そんなものに為に悩む君を見たくない。きっと俺にとって嬉しく、悲しい日々になる。


 そんな日々に、結月さんを付き合わせたくなかった。


「そんな……。」


 彼女はそれだけ言うと言いよどむ。俺はが何を望むか、まるわかりの俺の言葉に、異能の壁は厚い。長い歴史の中で様々な事件があり、異能の力と常に触れている俺だってすぐに俺の言った事に、返す事は出来ないだろう。



 彼女の発現はしてないが、その血をついでいる彼女の家系にも、タブーや禁忌は何かしらあるはずだ。だから、彼女も軽はずみな返事は出来ないわかっている。


 だが、彼女はいきなりこっちを真剣に見つめるので、こちらが怯む。


「悠翔さん、私が貴方とのこのについて決断したら、私がどうしょうと受け入れてくださいますよね。私のためとかは無しですからね」


「えっ? あ、あ……」


「約束ですよ」


 それだけ言うと、彼女はご飯をもりもり食べだした。正直、期待した。幸せになれるかも? そう思った。 だが、それより……。


「ククク、そんなに一度に沢山食べると喉につまりますよ。はい、お茶」


「あっ、ありがとうございます。ふふふ」


 俺が笑うと、彼女も恥ずかしそうではあるが、一緒に笑う。わりとシリアスに話を進めたつもりが、彼女がいるとやはり科学変化の様に、俺の人生の色が変わる。


 その後、ご飯を食べている彼女の顔をただ見つめ、食べ終われはどこへ行こうかとはなした。犬の時とは違うが、やはり嬉しい時間が続いていた。



 続き



 

みていただきありがとうございます。


またどこかで。

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