Ep.5
しかし自分が神託とは全く関係ない人間だとわかったのは良かったが…周りはそれを知らない。
更に、この選択授業が更にアルテを悩まされる原因になるとは思っていなかった。
一学期は授業の説明と基礎を学ぶので忙しくあっという間に終わった。一学期は6月の半ばから7月で終わり夏休み、二学期は8月から始まる。
また、アルテとシンシアがクラスが別々だった事もあり、まだ絡んでくることはなかった。
夏休みでアルテは伯爵家には帰らなかった。だから父が大司教からの手紙を受け取ったかわからない。
大司教と教団が動いてくれてるみたいだが、アルテの評価は変わらない…
しかし…平和な時間は終わった。
8月になり二学期になった。二学期は入学時に選択した授業が始まる。
アルテが選んだのは『剣術』『魔法薬制作』『古代文字·魔法陣解読』の授業、2学年からはこれらを更に細かく授業を分けて選択する
8月
新学期が始まり、今日からまた授業が始まる。
アルテは筆記用具と教材を持って教室を移動していた。歩くだけで周りは彼女を冷たい目で見る。
しかしアルテは堂々としていた。だって神託の黒蝶ではないのだから、風評被害で傷付くなんて時間の無駄。
それは教師や上級生も同じ、アルテに聞こえるように悪口を発したり、ありもしない噂をしたりしてる。
でも無駄だ、アルテには何の効果は無い。
今日は選択授業の基礎内容を学ぶので実践は無い。
アルテは空いてる席に座って授業を受けた。しかしこの日から良からぬ噂が広がった…
翌日、アルテはとんでもない話を耳にした。
「聞いた?あの悪女、皇太子殿下を尾行してるそうよ」
「聞いた!聞いた!殿下すごい困ってるって言ってたね」
「マジかよ…悪女のくせに皇太子殿下の婚約者の座を狙ってんのかよ…」
「やば…絶対選ばれないのに…」
「無駄なのに…」
「……ん?」
アルテの頭に?が浮かんだ。自分が皇太子を尾行してる?彼の婚約者になろうとしてる?
あり得ない、何があってそんな有りもしない噂が伝わるんだ。アルテの評価·評判はその噂により更に悪化した。
この日も選択授業がある日
アルテは噂が生まれた原因を探った。
・1限目 古代文字·魔法陣解読
「…ん?」
・4限目 魔法薬制作
「…あれ?」
・5限目 剣術
「あっ…(なるほど、そう言うこと…)」
アルテは皇太子を追いかけてるなどの馬鹿げた噂の原因がわかった。
アルテとライフォード皇太子は選択授業が全て被っていたのだ。同じだったからこそ、あんな噂が生まれてしまったのだ…
アルテは衝撃を受けながらも6限目を真面目に受けた。
「(どうしてこうなった!)」
選択授業が被ったのは本当に偶然なのだ。アルテはライフォードの事等 全く頭になかった。本当に自分の為に選んでいた…しかしその結果がコレだ。
昨日 全く気付いていなかった、なんなら彼が居た事すら知らなかった。なのに今日アルテはライフォードを追いかける為に同じ授業を選んだなんて噂が広がった…最悪だ。
更に今日はずっと周りの目が厳しかった。ライフォードもアルテを睨んでいた。彼女が座った席からライフォードは見えないから気付かなかったのだ。
平和な時間は二学期が始まった途端終わった。
それからアルテに待ってたのは婚約者候補の令嬢達と彼の側近達からの攻撃だった。
昼間、庭園の隅で昼食を食べていると金髪の女子生徒に声をかけられ、詰め寄られた。
「貴女なんなの!調子乗ってるの!」
「黒蝶のくせに!」
「黙りなさい、わたくしがやるわ。
アルテ=レクイエデさん。貴女、伯爵令嬢のくせに殿下の婚約者になろうとしてるそうね。このわたくしを差し置いて図々しい!!身の程を知りなさい!」
「えぇー…」
彼女の名前はキャロライン、帝国の名高い公爵家の娘で最もライフォードの婚約者に相応しいと言われてる。金髪に青い瞳をした絵に描いたようなお嬢様だ。ついでに後ろには取り巻きの令嬢を連れてる…
キャロラインはアルテを睨み付けて声を荒げる。
「わたくしは幼い頃からライフォード様の婚約者になるよう育てられたの!貴女のみたいな悪女に殿下は渡さないわ!」
「別に狙ってないし」
「お黙り!貴女のせいでライフォード様はとても疲れてるのよ!どう責任を取ってくれるのよ!全部…全部!貴女のせいよ!」
「っ!!」
バチンっ!と鋭い音が庭園に響いた。アルテの右頬は赤くなっていた。キャロラインは叩いた手を擦る。
「キャロライン様!あぁキャロライン様の手に傷が」
「ワタシ達がやりましたのに…」
「お黙り。これは有力候補であるわたくしが自らやるべき事ですの」
「……(なにこの茶番劇)」
取り巻きはキャロラインの手を心配する。
アルテは遠い目をしながら右頬に治療魔法をかけた。
彼女に言いたいことを全て言えて満足したのか、キャロラインと取り巻きは喋りながら去って行った。
「はぁ…何でこうなったのかな…」
これも全て神託のせいだ。
アルテは食べ掛けのサンドイッチを食べて昼休みを終えた。
しかし彼女に降りかかる災難はこれで終わらなかった。
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