Ep.50
ヴィクトール目線です。
時刻は昼前
まもなくデビュタントが終わる。学園主催、何より参加者は全員生徒なのでこの後抜けていかがわしい事は出来ないようにされてる。
ヴィクトールがアルテに話しかける事は無かったが、常に隣にいて彼女の行動を監視していた。
しばらくして、ヴィクトールは知らない生徒に呼ばれた。別のクラスの生徒だろうか…彼はアルテから離れた。
アルテはと言うと…1人楽しげに紅茶とお菓子を満喫しており、ヴィクトールの存在を忘れていた。
▼△▼△
バルコニーに呼ばれ行くとそこにいたのは銀髪に青い瞳をした男子生徒がいた。彼が呼んだ人物だろう
男同士でバルコニーにいると変な誤解を招き、良からぬ事を考える者もいるだろう。最近は同性婚も増えてきた…もっと言えば同性の恋愛に胸をときめかす者も増えた。
しかしヴィクトールと目の前の彼ではそんな事が起きることは無い。
「やぁ、急に呼んで悪いね」
「あんた誰だ?」
皇太子の側近の1人なので様々な貴族と会ってきたが彼のような生徒も貴族も見たこと無い。
白銀の髪など今時珍しくもない、しかし彼は同じような貴族とは比べ物にならない雰囲気を放ってる…ライフォードに近い雰囲気がある。
「オレは『ジェード』、よく『ジェイド』と間違えられるけど違うから」
「……」
いきなり名乗りヴィクトールに爽やかな笑みを向けた。ヴィクトールは何か嫌なモノを感じたようだ…まるで見透かされてるような…加えて爽やかな顔の裏にあるどす黒い何かを感じた。
「単刀直入に言うけど、ライフォード皇太子の側近辞めてオレの方に来ない?」
「…はぁ?」
初対面の人間に何を言ってるのだろう…
「(…ちょっと待て、俺は一言も皇太子の側近だとは言ってないぞ)」
そう、名乗ってもいないのにジェードはヴィクトールがライフォードの側近だと知っていた。
彼は何を考えてるのだろう…
「俺はまだ何も言ってないが、何故俺を知ってる?」
「まぁ…遠くから見てたと言えば良いかな?」
「気色悪りぃ…」
「アハハ」
ジェードは笑うだけ、その目は全てを見通してるようだ…。下手したら弱みを握られるだろう
「さて、冗談はさておき本題に入ろう。正直な話…勿体無いんだよ。君みたいな優秀で血も涙もない男がダメ男に仕えてるのが」
「……」
「だから力を思う存分活かせる場所に移してあげようと思ってな、ダメ男の尻拭いなんかする必要は無い」
「……」
彼は身分を名乗ってないがその発言だけでわかった…
目の前のジェードは他国の権力者の血筋だ。
王族かはわからないが、間違いなく高貴な血筋の人間なのは確定だ。普通の人間ならそんな事言わないのだから…上に立ってる人間しか言えない。
「辞めれば理不尽な命令に従う必要は無い、わかってるはずだ…従ったのに罪人とされ簡単に切り捨てられると」
「っ…」
彼はどこまで知ってるのだろう…。ライフォードに卒業時にアルテを処刑しろと命じられた事まで知ってるとは…側近の誰かがジェードに情報を漏らしたのか?
…それとも、ジェードの影がこの会話を聞いていたのだろうか…
太陽が真上にある昼頃なのに…辺りが暗く感じる。まるでこのやり取りが夜に行われてるように感じ、ジェードの後ろに月が見えた。
しかし月はどこにもない、太陽が真上にあり空には雲一つない青空が広がってる。
そんな錯覚を感じながらもヴィクトールはジェードの話を聞き続けた。
「嫌な命令に従って気付いたはずだ。…この国に噂の存在は存在しないと」
「…どこまで知ってるんだ…」
「こっちに来てまだ1年しか経ってないからあんまりだよ。でも、君が面倒な事を押し付けられてるのは知ってる。オレの後ろには優秀な部下や影がいるからね」
「……」
つまりライフォードと側近達のやり取りは筒抜けって事だ。他国の高貴な存在に見透かされてるって事は…弱みを握られるにも等しい。
現にヴィクトールは今ジェードにこの国の弱みを握ってるんだぞ?と半分脅されてるのだ。
しかし残念な事に…その弱みは他国に何の影響を及ぼさないどうでも良い事、利益にすらならない。
得にすらならない弱みなのに何故ジェードはヴィクトールに自分に就くよう持ちかけてるのだろうか…
「俺がお前に就いて何の得がある」
「そうだねぇ~ 有るとすれば面倒事から逃がしてあげられるって事かな」
「……」
確かに今のヴィクトールはライフォードから逃げられない。いや、ライフォードがヴィクトールを逃がさないの間違いか。彼は優秀な自分の影でもある側近を手放したくない。彼にしか出来ない仕事は沢山あるのだ…それこそ、暗殺とか…処刑とか…
「正直な話、このまま彼の指示に従い命令を実行しても…君は批判を浴びるだけだ。この国の事情に関しては何も知らないけど…少なくとも、真偽がハッキリしてない情報を鵜呑みしてそれを実行しても…後から真実がハッキリした時が大変だよ。
それこそ「死を持って償え」って言われたり、死ぬまで罪人扱いだ。
…人間は情報が手に入った一瞬で手の平を返して君を批判する…命を狙ってくるかもしれない」
「そんな事は…わかってる…」
ジェードの言葉のナイフはヴィクトールの心に深く突き刺った。
そう…彼はもうわかってるのだ…
自分に待ってるのは厄災をもたらすであろう黒蝶で悪女のアルテを…【無関係な人間】を殺した罪人となる未来しか…
彼の瞳が揺れたのを見逃さなかったジェードはトドメの一言を言った。
「ヴィクトール=クローウェルズ、オレの側近になれ」
その言葉はナイフよりも鋭く、更に深く突き刺さ…いや、ヴィクトールの身体を貫いたのだった。
最後までありがとうございました。
面白かった、面白くないからもっと努力してと思っていたら下の星、評価をお願いします。
星1つでも嬉しいです!
作者の励みにもなります!
次の更新も気長にお待ちください




