Ep.4
架空の神話、伝承が出てきます。長くなります。
その後、アルテは教徒に連れられ聖堂を離れ、Bクラスの教室に向かった。
教室では既にホームルームが終わり自由時間になっていた。
教室に入ると教師や生徒達全員がアルテを見た。自分の席に向かうアルテを見てヒソヒソ話し出した。
「みて、欠席したくせに堂々と入ってきたよ」
「頭おかしいんじゃないの?」
「先生は公欠って言ってたけど、絶対嘘だよ」
「どうせ教徒を誘惑してサボったんだろ」
「……」
アルテは周りの声と目を気にせず歩いて席に着いた。置かれた教材やプリントを確認しながら鞄に入れたり机に入れた。
必要なものは机に、まだ使わないのは自室に…今日は午前中で学園が終わる、修道院と言え制度はそれほど厳しくなく、学園が終わった後 帝都に行って買い物をしたりして良い事になってる。
…机の上を片付けたアルテはプリントを記入した。これは今後どの授業をするか選ぶ選択授業について書かれてる。選択授業は2学期から行われる
アルテは黙々と記入する。周りが覗いて来るが気にしない。彼女が学びたいモノは既に決まってる。魔法学は共通科目なので選択する必要はない。
彼女が丸を付けてるのは『剣術』『魔法薬制作』『古代文字·魔法陣解読』…どれを選んでも卒業後に役に立つ知識と術に関する授業だ。剣術を極めれば騎士になれるし、この国の為に戦う剣士にもなれる。魔法薬(主にポーション)の知識を身につけておけば宮廷治療士補助にもなれる。最後に古代文字や魔法陣解読、これも同じで知識を身につけておけば役に立つ時がくる。
周りには良い目をされなくても構わない、自分の未来は自分で決めるのだ、誰に何を言われても周りの指示に従う必要はない。
プリントを記入した後、担任に渡した。担任はアルテのプリントを見ると馬鹿にしたように鼻を鳴らし、何も言わずプリントを受け取った。
悪役令嬢が剣術や魔法薬制作等を選択してるのが面白いようだ。彼らからしたらどれも無意味な事に見えるだろう…
アルテは席に戻り、他のプリントを確認しなが大司教セルウィンとの会話を思い出してた。
★☆★
セルウィンと会話をしていた時
「100年前に下された『彩雪と黒蝶の神託』ですが、15年前に大きな動きがありましたら。
この神託ですが、彩雪は帝国に祝福をもたらし、黒蝶は厄災をもたらすとも言われてます」
「どちらもダリアの品種の名前ですよね。しかし何故神託はダリアの女王と呼ばれてる『白蝶』では無く彩雪なのですか?」
「それは我々にはわかりません。神の意など人間には理解出来ないのです。
確かに現実に咲くダリアにはそう呼ばれてる品種はありますね。
まぁ…神の意はわかりませんが、ダリアの女王
白蝶が信託に無かったのには理由はありますよ。それを説明する前にこっちの事を説明しなければなりません
アルテさん 『厄災の箱』と言うのをご存じですか?」
「はい。知ってます」
メルデナ帝国に古くから伝わる物の名前だ。有名な伝承となり現代にも残って人々に知られてる。
「直接的な関係はありませんが、神託の黒蝶は『厄災の箱』に近いのですよ。
有名な神話に出てくるパンドラの箱は希望や絶望、病や厄災…1人の女性が好奇心で箱を開けた事で世界に災いが広がった。しかしその災いは箱底に入っていた希望により消滅した。
『厄災の箱』は少し違います。
パンドラの箱の中に希望は底に入ってましたが、『厄災の箱』に希望は入っていないのです。
では厄災を絶ち斬る存在は何なのか、何処にあるか…わかりますか?」
「箱その物が希望なのですか?」
「惜しいですね、正解は箱の所有者が希望になります」
「!?」
「ようは薬と毒が紙一重なのと同じなのですよ。扱い次第で善にも悪にもなる。
『厄災の箱』はそれに当てはまるのです。こちらは所有者以外が箱に触る、開けると厄災が起きると言われてる呪物です。ですがその厄災を絶ち斬る事が出来るのは箱を所有する者だけ。その者がまさに希望なのですよ」
「つまり…所有者の行動次第で希望にも絶望にもなると…」
「その通りです。わざと開けさせて地獄に落とす事も出来るし、上手く利用して希望の象徴になることも出来る…」
なるほど…
厄災の箱の仕組みを理解した上で、再度 神託の黒蝶を説明されると…アルテはやっと理解出来た。
「つまり神託の黒蝶は『厄災の箱』の所有者に位置する存在で、力次第では希望をもたらす白蝶になるのです。
ようするに、この神託でダリアの女王 白蝶の名が無かったのはのは『黒蝶が白蝶でもある』と意味してるのですよ」
「!!」
とんでもない話を聞いてしまった。まさか厄災をもたらす存在が同時に希望でもあるとは…。確かに神託は祝福をもたらすと言っていて、希望とは言ってない。
厄災を絶ち斬る事が出来るのは希望のみ…祝福では限界がある。一部は倒せても根元を処理しないと災いは永遠に続く…まさにそれだ。
しかし、この説明をされたところでアルテが関わってるとは限らない。
「えっと…結局のところ、私は神託に関係してるのですか?」
「それにつきましては…そうですね、聖女になったシンシアは神託を受け、力を与えられた存在なのですが…アルテさんの場合は…」
「『彩雪と黒蝶の神託』に連なる神託が下された日にたまたま生まれた女児なのです。アルテさんからシンシアと同じ力を全く感じないので…
アルテ=レクイエデさんは神託には全く関係ない人物でございます。
神の声を聞いた1人の大司教であるにも関わらず、すぐにお伝えする事が出来ませんでした…お詫び申しあげます」
「はぁ~…良かったぁ~」
それが聞けて大満足だ。しかも大司教セルウィン直々に言ってもらえるなんて…。
やっぱり自分は神託が下された日に偶然生まれただけで、本当に神託を受けたのはシンシアだけ、片割れは離れた地に誕生してるのかもしれない。
大司教が言ったのだ、アルテにはシンシアと同じ神託を受けた者に宿る力を感じないと…これは誰も嘘だとは思わないだろう。
自分がただの人間、それっぽい見た目をしただけの人間だと知れて良かった…。
しかし…晴れて神託とは無関係な存在だとわかったが、それを教えられる前に国家秘密を知ってしまったアルテ。
「神託に関係ない私に神託の話をして良かったのですか?」
「ご迷惑をおかけしたお詫びとして、こちらの不注意で巻き込んでまったアルテさんには話すべきだと思いお話したのです。気にしないでください。悪いのはワタシ達セシリア教団なので。ワタシからレクイエデ伯爵家、」
神託を受けたシンシアが生まれた事で聖女探しが更に忙しくなり、アルテがたまたまその日に生まれたばかりに黒蝶だと思われ被害を受けてると聞かされたが手が回らなかったのだろう。
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