Ep.48
学園主催のデビュタントなので演奏家達はいない、そのため踊ることはない。学生なので料理や交流を楽しむ。
ヴィクトールは離れるかと思っていたが、こんな時もアルテにベッタリと付き監視をしていた。
アルテは右目周りの傷の事を考えてた。
実は伯爵邸に帰る前にセシリア教団の教徒に高度な治療魔法と浄化魔法をかけてもらったが傷は消えなかった。担当した者が言うには治療魔法·浄化魔法そのものは傷自体には効いてる、しかし微弱な呪いのようなモノがかけられてるのか傷痕が簡単には消せないよう細工をされてるとの事だった。
時間が経てば呪いも解け傷も消えるとの事…
今アルテの右目周りにある傷はどちらかと言ったら傷痕、既に傷口は塞がってるが見せしめのように傷口が消えないようになってる。
文字通りアルテが傷物だと見せしめる為の何者かの犯行、首を絞めてきた暗殺者を雇ったのと同一人物なのは確定…
毎日アルテの悪評や悪い話を社交界や国中に広めてる…信託関係なくアルテが悪女だと広めてる元凶だ。
しかし此処まではわかっても何者なのかわからないので動く事が出来ず、考えても無駄な事になってしまう。
最悪な場合、元凶がわかっても問い詰める前にアルテが処刑されるので結局元凶の勝ち逃げ、何をしてもアルテには無駄な事になってしまう…
そんな事を考えながら料理や菓子を堪能するアルテ、ヴィクトールが低い声で彼女に話しかけた。
「それで見えてるのか」
「ハッキリと見えてるよ。作った本人によれば片眼鏡をベースにしてるらしいから」
「……」
あり得ないと思うのにも無理はない、しかし超人メリナとローレルの民はやってみせた…これは現実だ。
それを知ってるのはアルテだけだが…
そんなことを考えてるとホールの中央から歓声が上がった。
「まぁ…素敵…」
「あのドレスはどこのデザイナーの!?」
アルテとヴィクトールも中央に向かった。そこには皇太子ライフォードの手を取り歩くシンシアの姿があった。
白と青の正装を着てるライフォード、そして彼とペアルックなのか同じようなデザインのドレスを着たシンシア…どうやらドレスは間に合ったようだ。
歩く2人を見て誰かが言った。
「これはもうシンシア様が確定だな」
「どう見てもそうでしょ、殿下からドレスを贈られるだなんて…もう婚約者確定でしょ」
皆が2人を称える中、中にはキャロラインが婚約者候補を降りた事に納得する生徒もいた。
「ソルファージュ様が自ら婚約者候補を降りたのにも納得しちゃう…」
「聖女様って候補だった?」
「いや…多分違うよ、皇太子妃の教育も受けてないと思うよ…」
「なんか勿体無いよ…キャロライン様なら未来を託せる気がしたのに…」
「俗に言う【真実の愛を見つけた】ってやつ?」
「ソルファージュ様が公の場で婚約破棄され無いだけ良いよ」
「いや、婚約者候補だから破棄されないよ」
「そっか…」
確かに幼い時から皇太子妃になるよう教育されていたキャロラインとシンシアでは天と地の差がある。
そして…なんと皇帝がホールに登場し、全員が驚いた。これまでの学園主催のデビュタントに皇族が、皇帝が出ることは一度も無かった。
しかし今年は皇太子のデビュタント、そして来年はオーティス皇子のデビュタント…
学園長が顔を青くしながら生徒達に祝いの言葉を送った。彼は皇帝をチラチラ見ながら言葉を紡ぐ、皇帝は気にせず祝言を続けよと命じた。
彼の言葉が終わると第20代皇帝『カサエル=メルデナス』が口を開いた。
「皆成人おめでとう、今日は楽しんでくれ。そして…皆の祝いの場を使うのを許してほしい…
皇太子ライフォード、そして彩雪の聖女シンシア…前に」
「「はい」」
これは皆がわかってた事、自らその座を降り新たな可能性を見つけた者…そして勝ち誇った顔をして歩く者…今から行われる事を全員がわかっていた。
「今年は諸君と我が息子、ライフォードのデビュタント…この場を仮り、皇太子ライフォード=メルデナと聖女シンシア=ラ=ウィステリアの婚約を宣言する」
「「わぁー!」」
「「おめでとうございます!!」」
ホールにいた全員が2人の婚約を祝った。しかし…心から祝ってない生徒もいた。彼らは作り笑いで拍手するフリをした。それは従者達もそうだった…。上級生で護衛騎士ガルクは特別にデビュタントの参加を認められていた…マルクス、ガルク、カルヴァンは…複雑な表情をして拍手をしていた。
拍手が止むと皇帝は今度はキャロラインを前に呼んだ。
「キャロライン=ソルファージュ公爵令嬢、前に」
「はい」
既に皇太子の婚約者候補ですらなくなった彼女、彼女は堂々とした表情で前に出た。なにも知らない生徒は何故彼女が?と思っていた。しかし次の瞬間…その謎は解けた。
「キャロライン=ソルファージュ公爵令嬢を第二皇子『オーティス=メルデナ』の婚約者とする」
「「!?!?」」
この場にいた全員が驚いた表情をした。キャロラインもそうだった…あくまでも婚約候補のままだと思っていたが、まさかこの場で宣言されるとは思ってなかったようだ。
そして彼がそう言うとこの場にいない筈の第二皇子『オーティス=メルデナ』が現れた。
ライフォードと違い、黒みがかった紺色の髪に皇族の象徴である紫色の瞳をした15歳の少年…まだ幼さが残る顔立ちだが、またそれが良いのだろう。
不思議にもキャロラインとお似合いだった…それもライフォードの時よりも…
周りは驚きながらも拍手をし2人の婚約を祝ったのだった。
…その中で、ライフォードとシンシアは信じられないと言ってるような顔をしていた。
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