Ep.46
【プリンシパル】
重要な、中心的な バレエでは【主役】を意味する
作中では【主役】を意味します。
デビュタント当日 午前7時
アルテはドレスを着て学園に向かった。
会場とホールの入口に行くと正装姿のヴィクトールがいた。そして、その場にいた彼を含めた全員がアルテを見て驚いた。
アルテは黒と赤のドレスに金の装飾が入ったメリナのドレスを着て、右目に赤薔薇の眼帯を着けていたから…。
その眼帯には耳に引っ掻ける紐はない、どちらかと言ったら片眼鏡に近い形をしている。また視界の妨げになっている訳でもなく、問題は無いようだった。
アルテは周りの目を気にせず胸を張って歩く。
「なんなのアレ…」
「似合ってると思ってやってるの?」
「気味が悪い…」
ヴィクトールはアルテを見てドレスと眼帯を交互に見た。
「それはなんだ…」
彼が驚くのも当然、彼はドレスを送ってないのにアルテはドレスを着てやって来た。
アルテは冷静に笑って言った。
「親しい友人が私の為だけに作ってくれたのよ」
「友人?はっ、どうせ愛人だろ?」
「愛人がこんなにセンスあるドレスを作れる?」
「……」
この年で愛人などいる訳無い、何故そんなのもわからないで決めつけるのだろう…
彼の返答に腹を立てていた時、助け船を出したのはあの者だった。
「まぁ素敵、『プリンシパル』のドレスだわ」
「そうですね。あの布生地や装飾はあのお店、いや『メリナ=フォン=ローレル』の特徴ですからね」
「彼女がよく着てるドレスと似てますね」
「「えっ!?」」
キャロライン、リリアナ、ヘレナがアルテの着てるドレスを絶賛した。
あの茶会でアルテと親しくなったメリナをちゃんと見ていた証拠だ。ちゃんと見てなかったらわからないから
彼女達の発言にその場にいた全員が驚いた。
「プ、プリンシパルのドレスですって!?」
「オーナーや関係者に気に入られないと店に入れないと言われてる…あの!?」
「何で黒蝶でもある悪女が!」
淡いのに鮮やかな色合いに、ローレルでしか手に入らない滑らかな生地、誰もが目を奪われる計算されたデザイン…ドレスだけでなくアクセサリーや小物にも力を入れてる。
そして何より、その店に入るには広告塔でオーナーであるメリナか店の関係者、もしくはローレル侯爵に気に入られないと無理だ。
アルテは茶会でメリナと同じ現実主義者と言うことで気に入られたので店にに入れたのだ。
それも…この世に1着しかないアルテの為だけに作られたメリナからの贈り物…
「プリンシパルってゆるふわや可愛い系だけじゃなくてゴシック系も出来るのね」
「いや…アレは多分オーダーメイドよっ。黒いドレスは見たことないわ…」
「じゃ、じゃあ…悪女はオーダーメイドを頼む資格が有るってこと!?ズルい!!」
ヴィクトールも何も言えなかった。まさか本当に親しい友人が贈ったと思わなかったようだ。
アルテはキャロラインを見て頭を下げた。彼女達はアルテの右目にある薔薇の眼帯を見て驚いた。
「一体…何がありましたの?」
「色々とありまして」
△▼△▼
遡ること前日
デビュタントまで残り1日 この日は休日だった
アルテは伯爵邸の自分の部屋に居た。
幸いにも眼球や角膜は無事なので失明の問題は無い、瞼と目の周り(上下を)負傷した…。半年前に作った治療薬を使って痛みは消せたが傷痕は消えなかった。
どうやら襲撃者が使った刃物に治療薬や治療魔法を使っても痛みは消せても傷は消せないよう細工がされていたようだ。
デビュタント直前なのに…意図的に行われた攻撃…
治療薬のおかげで何度も瞬きしても瞼が痛む事はなかった。
ただ傷がはっきりしていて見映えはよろしくない。
「(明らかに狙った犯行…)」
前に首を絞めてきた暗殺者を雇ったのと同じ人物によるものだろう。
あの後 すぐに治療薬を使った後、月の薔薇を教師の元に届けた。幸いにも薔薇に血は付着していなかった。
頼んだ教師はアルテの顔を見ることなく、持ってきたアルテに机に薔薇を置いておくようだけ言った。
時間帯もあったので誰にも目の傷を見られる事はなかった。
…デビュタント前日だと言うのにアルテは焦っていなかった。
家族はアルテの右目を見て驚いていたが、彼女が誰にも言わないようにと言った。
攻撃されたのに冷静なアルテは引き出しから何かを取り出した。
それが薔薇の眼帯だ。形は片眼鏡に近く耳に引っ掻ける紐は無い。…眼帯だが片眼鏡の役割も持ってる。
また付けても薔薇の装飾は一切視界の妨げにならずクリアに見てる。
アルテの場合は眼球は無事なので視力にそもそも問題はない。しかし外見の問題がある、瞼と目の上下周りに傷が残ってる。これは流石にデビュタントで晒す訳にはいかない…
ならお洒落な眼帯で隠した方が良い、これなら傷も隠せるし片眼鏡の役割もあるから一石二鳥だ。見た目もお洒落だから変に思われない
更に言うと…これはメリナと共にプリンシパルに入り話をした時に貰ったのだ。
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