Ep.41
ようやく長い1年編が終わりました。これから先の内容の軸、鍵になる内容が多いので細かく書きました。テンポが遅くて申し訳ございません。
冬休みが終わり、三学期が始まった。
アルテは少ない荷物をまとめ、制服を着て家族に挨拶をして屋敷を出た。次帰ってくるのは数ヶ月後の夏休みだろう。
メルデナ修道院に戻り、寮に行き荷物を置いた後、聖堂に行き始業式に参加した。
学園長の話を聞いてるとイチャつくライフォードとシンシアの後ろ姿が視界に入ってしまった。
明らかにこの冬休みで仲が進展したのがわかる…これはキャロラインが自らが婚約者候補を降りる選択をする理由にもなる。
「(あぁ…嫌なものを見てしまった…)」
心の中でそう呟きながら話を聞いたアルテだった。
△▼△▼
式が終わりそれぞれの教室に戻り今後の話を聞いた。
前にも話した通り、アルテ達1年生は2年に上がった頃、5月に入った頃にデビュタントが行われる。
それまでにマナーを身に付ける事、ドレス等の用意…そして準備をしながらも授業に取り組むようにと教師は言った。
周りはブーイングする、人生で一度しかないデビュタントに力を入れる貴族は多い。でも学生なので勉強を疎かにしてはいけない。
短い三学期だが、この短い期間に通常授業、選択授業、そしてマナー講座を学ばなければならない。そして3月にはこの学年最後の試験が行われる…デビュタントの準備にのみ力を入れる事が出来ないようにされていた…可哀想に。
☆★☆
今日は午前で終わり、始業式と今後の説明、そして新たな教材の配布等で学園が終わった。
アルテは鞄に必要な物を入れて寮に帰ろうとした時だった。
「(忘れてた~…同じクラスだった…)」
散々追い返していたヴィクトールがアルテの席に来て彼女を睨み付けた。
アルテは心の中でパニックになってた、顔に出さぬよう必死で冷静を装った。
「随分と偉そうだな」
「(はぁ~面倒くせぇ~)」
彼の言って事は間違ってはいない。伯爵令嬢がわざわざ来てくれた公爵令息に顔を見せる事なく何度も追い返してたのだ…これは文句言えない。
「何の用?」
「庭園に来い」
「(やっぱり魔の庭園だわ!何で面倒事ばっかり!)」
アルテにとって庭園は最悪な場所のままのようだ…せめて2年に上がった時には元の状態に戻って欲しいものだ。
庭園に行き、ヴィクトールと話をした。相変わらず殺意剥き出し…
「どういうつもりだ」
「貴方が何の用で訪れたかすら不明だよ。私は言ったよ、無理に婚約者の役目を果たす必要は無いと」
「だからと言って顔を見せずに追い返すのか?」
「だって話す事も用事も無いし」
「……」
ごもっともな正論にヴィクトールは黙ってしまった、しかし殺意は剥き出しのまま。
「用が無くても会わなきゃダメなの?」
「そういう風に見せる必要がある」
「必要ないよ、まぁ監視目的なら話は別だけどね」
「っ……」
別に監視させるのは良いさ、でもアルテが気にくわないのは用が無いのに来てた事だ。
愛し合う婚約者同士なら用が無くても「会いたくなったから来た」と言える。
でもアルテとヴィクトールはそんな仲じゃない、死刑執行人と処刑を待つ死刑囚だ。確かにカモフラージュは必要かもしれないが彼がそこまでする必要は無い。
「話すことが無いなら帰るね」
「チッ…」
「(アンタが帰るのかよ…)」
アルテにボロ負けしたのが悔しいのかヴィクトールは舌打ちをし背を向け庭園を去って行った。アルテが帰ろうとしたのに…
一体何がしたかったのやら…
▼△▼△
それからは忙しい時期だった。二学期のおさらい試験が行われ、新しい選択授業に関する説明と準備、そしてマナー講座…とにかく1日が忙しかった。
1月…2月…と流れるように月日が経ち、気付いた時には3月の終わりになっており1年最後の試験が終わり、今日返却が行われた。
…試験を受けたのに忙しさのせいで記憶が無くなってる…
「(忙しくて三学期が一瞬で終わった…)」
そう感じたのはアルテだけじゃない、クラスメイト達のほとんどがアルテのように疲れ果てた顔をして机に伏せていた。
皆成績を気にするよりも疲れてそれどころじゃなかった…。キャロラインの取り巻きのヘレナも、ヴィクトールも疲れた顔をしていた。
教師が言うには4月は殆どマナー講座と準備らしい…。2年生は違った意味で濃い1年になるだろう…
アルテの成績はと言うと赤点無し、一応目標は達成出来た。順位も変わらず25位と中間。
相変わらず1位はライフォード、その下はマルクスとカルヴァン、そしてキャロラインを始めとした最初の試験から変わらない天才達。ヴィクトールは10位、シンシアは40位と…なっていた。
こうして波乱の1年が終わった…濃い1年だった。
▼△▼△
場面は変わって帝国の隅にある自然豊かで発展した土地ローレルでは…
ほぼ毎日 家族や領民と共にローレルの為に働いているメリナ
ピンク色の髪を束ね、動きやすい服装で民に声をかけていた。
「春が始まったわ。この時期になると流行り病が始まるわ。なるべく風邪を引かないように体調管理をして。
それからこの時期は農作物に限らず家畜や果実を傷付ける害虫『バーベブ』が動き出すわ。徹底的に除菌剤や肥料、あと普通の殺虫剤はバーベブに効かないから専用の薬を用意しましょう」
「「はい!!」」
「それと染織だけど、春は淡いピンクや黄色が流行るわ。濃い青は控えて、作るとしたら水色や薄紫系ね」
「「畏まりました」」
それぞれに適切な指示を出すメリナ、広告塔だけでなく司令塔の役割もやってるようだ。
領民は彼女と領主であるローレル侯爵を信頼してる。
メリナが引き続きそれぞれに指示を出していた時だった。
「へぇー…随分と発展したものね」
「「!!」」
メリナの後ろから女性の低い声がした。振り向くとそこには…
黒髪に紫色の瞳をした、背の高い妖艶な女性が立っていた。領民は怯えた様子を見せたが、メリナは微笑んで話しかけた。
「あら、予定より早いわね。帰ってくるのは来年じゃなかったかしら?」
「はぁ…予定が変わったのよ…あのデブ親父が急死してアタシが居る意味が無くなったのよ」
「それは大変だったわね」
どうやら黒髪の彼女は他国に行ってたみたいだが予定が変わり急遽帝国に帰ってきたみたいだ。
彼女は言うだけ言ってメリナから離れようとしたが、メリナは続けた。
「セシリア教団から手紙が来てるわよ」
「…変わり者の女神を信仰してる組織がアタシに何の用よ」
「さぁ?それはわからないわ…。でも、行ってみた方が良いんじゃない?
奇跡をもたらす『ヴァネッサ=ロベリアス』を探してたみたいだから」
最後までありがとうございました。
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